すきる
「はっ?」
こいつなにいってんの?という眼差しを少しも躊躇することなくノエルはセイラに向けている
多分そんな目を俺もしているはずだ
ただ一人
ネムだけは処理落ちでも起こしたかのように先程の表情のまま固定されている
まあセイラが特別な人間だろうとは思っていたが
せいぜい城の内通者とか
異世界的に不思議な力があって先を見通せるとかそんなもんなんだと思っていたが
この子は何て言った?
女神………?
「ちょっと!そんな顔をしないでください!
嘘じゃあないんです!
本当なんですよ!
どうすれば信じてもらえるんだろう………」
その口調はボリュームの調整を少しづつ絞るようにしりすぼみに小さくなっていく
「あっ!」
良いことをおもいついたと言わんばかりに右手を小槌のように開いた左手に打ち付けて自称女神
「そうです!
私はあなた方にスキルを与えたんです!
とっておきなんですよ?
お気づきになりましたか?」
スキル……?
ネムが使っていた回復魔法みたいなあれの事か?
セイラの話を信じるのであれば俺に関しても思い当たるふしはある。
だがしかしノエルは……?
「この子は魔法みたいな物が使えるみたいだけど
私とこのニートはてんで何にもつかえないけど?」
先にネムをアゴで指してから続いて俺を……
ってニート呼ばわりか
実際ニートなんだけどなんか悲しくなるな
しかし先程も言ったように思い当たる節が俺にはあるのだ
そこまで言われて黙っていられる俺ではない
「ノエルさん
失礼ながら言わせて貰うが俺にはなんとなくだがそのスキルってやつが使えるみたいなんだ」
「は?
あんたついに頭までおかしくなっちゃったの?」
可哀想なものでも見るかのようにじと目で
少し俺から距離をとるように椅子をずらして座り直しやがった。
「おかしくなんてなってないんだなこれが」
ノエルから視線をセイラに移し
「なあセイラ
俺のスキルは
なんか良くわからないけど自称医者のめちゃくちゃ強いやつを呼び出すスキルだよな?」
それを聞いたノエルの目がさらに細く鋭利なものとなっていく
「はあ?
あんた何言ってるの?
やっぱりどこかおかしくなったんじゃない?
ネムにみて貰うと良いと思うわよ」
何も知らないで聞いていたら確かにおかしいやつだと思われるかもしれない
実際俺もそんな告白を急にされたら反応はしないまでもどこかおかしい人なのかなと思ってしまうだろう。
しか今、目の前にスキルを与えたと言う張本人がいるのだ
その張本人の方に目を向ける……あれ?
「うーん
一部は合っていますが大部分で間違っています
ノクティさんはご自身のスキルを勘違いされているようですね」
「勘違い?」
どういう事だ?
それに一部は合ってるって?
「まず第一に特定のなにかを呼び出すスキルではないのです
そうそう
以前夢の中でお話したことを覚えていますか?」
「夢?
約束の場所でうんたらみたいなやつか?」
セイラは首を左右にゆっくりと振ってそれを否定する。
「いえ
それより以前です
もう忘れてしまいましたか?
ノクティさんが夢を疑って頬をつねっていたのが印象に残っていますね」
夢?
頬をつねっていた…………
あっ!
「匿名希望の!」
「そうです
それです
あれも私でした」
ペロッと舌を少しだけだしておどけて見せているのか
とてもかわいい。
あの時なんか言ってたよな
なんて言ってたんだっけ
確か……そうだ
「『妄想』だっけか?」
「良くできました
そう!そうです妄想です!」
ニコッと微笑んで頭の上に大きな丸を作っている。
あざとい
しかし俺のスキルと妄想なにが関係があると言うのだろうか?
「その妄想なにが俺となんの因果関係があるんだよ?」
「ですからノクティさんのスキルは『妄想』なんですよ!
初めてお会いしたときにもお話ししたはずですよ?」
「はっ?」
初対面でそんなこと言っていたか?
初めてセイラに会ったとき
たしかニートだのなんだのと酷い言われようだったが……
あっ!
確かに去り際に妄想がうんたらって言われた気がする
「くっくっくっくっ」
と横でノエルが笑いを堪えたような
いや堪えきれずに声が溢れでていた
「……」
セイラがこほんと可愛らしい咳払いを一つ
「使い方によっては最強にもなり得るスキルなんですよ?
最弱にもなり得ますが」
「こいつが最強?
ふーん」
ノエルが小馬鹿にするように半笑いで下から上まで視線を這わせてきた。
「最強ですよ?」
人差し指を顔の横に立て
「ではそろそろスキルの説明をさせて頂くとしましょう!」
とあざとかわいく宣言した。





