医者とドラゴン8
促されるまま小屋に戻ってくると最初に啓示を受けた部屋に通された。
「今からお食事の用意をしますので
少々そちらでお待ちください
‥‥喧嘩はしちゃダメですよ!」
上目使いぎみにそんなこと言われても……
平静をよそおうが顔が自然とほころんでしまう。
「ちょっとネムこの男キモいわ!」
「ダメだよノエルちゃん…!
そんなこと言っちゃ…」
なんて会話が真横で繰り広げられている
初対面の人相手にちょっと失礼すぎやしないか?
しかしセイラからの忠告もあったことだしここは一つ俺が大人になって折れてやる事にしよう。
そういやKはどこに行ってしまったのだろうか?
岩場からここまで一本道だったしな……
「ちょっとあんた!いい!?」
思考を遮るやかましい声
どうらや俺に投げ掛けられたもののようだ
「なんだ?
喧嘩はするなと忠告されたはずだろ?」
「なにあんた喧嘩売ってんの?」
鋭い視線に反射的に目をそらしてしまった……
悔しい
「まぁそれはいいわ……
あんたさっきあのドラゴン?を知ってるかのようにひとり言を
言っていたけど
どこで知ったの?」
ああその事か
どこから説明すればいいんだろう?
そもそも信じて貰えるのか……?
……まあ良いかなにかの手がかりになるかもしれないし……
包み隠さず話してやるとしよう。
どちらにせよここで別れてしまえばもう今後一切関係ない赤の他人なのだからな……
「単刀直入に言うとな
俺この世界の人間じゃないんだよ
ゲームってわかるか?
ゲームってのは‥」
そこまで話すやいなやノエルが話に割り込んでくる
「ノクティってあんたまさか!?
自称最強騎士のノクティじゃないでしょうね!?」
凄く驚いた。
俺を知る人物がいた!?
もしかしたら帰れるかもしれない!
自称?ってのは気になるが……
一瞬で思考が巡る。
「お前俺を知ってる‥のか?
そうだ!俺はチャチルキングダム最強騎士……
ノクティだ!
なぜ俺を知ってる?
もとの世界に帰りたいんだ
帰る方法を知らないか!?」
ノエルは落胆の表情を隠さない
「はぁー‥
帰る方法を知らないか?って事はあんたも帰る方法は知らないみたいね
あんたの事を知ってる理由はね
あんたドラゴン討伐の依頼受けたでしょ?
そんときのカップルが私達よ
こんなことになるなら依頼しなきゃ良かったわ」
「えっマジかよ」
たしかあのカップルの名前は……ノエル……とネム……確かに名前は一致する
「ちょっと待て
お前ネナベかよ‥」
ちょっと引いた。
顔に出てたかも
ノエルは凄く慌てた様子で
「それは!女二人でオンラインゲームやってると男が絡んできてウザいからカップルのふりをしてただけよ!
ってそんなこと今はどうでもいいでしょう!」
「まあそれもそうだな‥
ちょっと待てよ!どうやったら帰れるか啓示で聞けばわかるんじゃないか!?」
「残念
それは私が最初に聞いたわ
チャチル城ってとこで王様に聞けばわかるって言われたの」
ハキハキとノエルが答える
「そうかノエル達も目指すはチャチル城と言われたのか」
「まさかあなたもチャチル城を目指すの?
それだったら私のパーティーに入りなさいよ!
にわかには信じられないんだけどあのドラゴンを倒したんでしょ?
ゲームでは確かに倒してたし」
なんて横暴なんだ
しかしKのいない今一人で行動するよりはまだましかもしれない
「みなさーんご飯の用意ができましたよー!
こちらの部屋にいらっしゃってくださーい!」
階段を挟んだ隣の部屋からセイラが呼んでいる
「わかったー今行く!」
そうセイラに答えた
「ノエルとりあえず今の話のつづきはまた後でしよう」
「仕方ないわね」