偶然__必然
「俺がついに魔王をやったんだ!」
目の前に横たわる魔王だった物を前に俺は勝ち誇っていた。
とっておきの必殺技『ジャスティススラッシュ』が開幕一閃!して
出会い頭一撃で仕留めてやった。
しかし魔王とかいっておきながら大したことなかったな
まあ最強騎士の俺様がこの城に乗り込んだ時点で勝敗は決していたのさ!
「ん?
なんだ?」
ガタガタと音をたてて激しく城が揺れ始めたのだ。
「地震か……?」
注視して良く見ていると壁や天井が少しずつ崩れ始めているようだ。
おいおいゲームなんかで良くありがちな魔王倒した瞬間に城が崩れ去るあの演出って事か?
もうここに長居する用もないしとんずらするとするかね
「おっと!?」
なんとかすんでのところでかわす事は出来たが崩落した天井によって出入り口が……
「くっ……
この城と共に俺も沈むのか……
まあそれもいいだろう……」
「……ノ…ティ…ノク…」
どこからともなく呼び声のような者が聞こえる
「なんだ……?」
次の瞬間物凄い衝撃が体を襲った
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「ちょっとあんた寝てる場合じゃないわよ!」
「うーん……」
窓から柔らかい日差しが差し込み俺の体をほんのりと照らしている。
どうやらもう朝を向かえたようだ。
それにしても体中が痛い
それになんで俺は床に転がっているのだろう?
「いつまで寝ぼけているつもり?
シャキッとしないさい!シャキッと!」
声のする方に目を向けると目を逆三角形にしたノエルが今にも火でも吹くんじゃないかという形相でこちらを睨み付けていた。
痛む体をさすりながらなんとか立ち上がりノエルの方に向き直る
「おはよう
いててて
なんで俺は床に寝ていたんだ?」
「まったく呑気なもんね!
おはようじゃないわよ!」
悪気はないが後が怖いからなんとなく体の正面に右手をたててゴメンと謝る体裁をとっておくとしよう。
「あまりに起きないから…ノエルちゃんがベッドを…」
ベットの反対側
申し訳なさそうに美少女がそう告げた。
ベット?
目をやって一瞬で察した
ノエルの立ち位置、不自然に動かされた形跡のベット
こいつベットを斜めにして床に俺を叩きつけやがったな!
さっき脊椎反射で謝ったのやっぱり取り消す!
「そんな事どうでもいいの!」
「ふざけんなどうでも良くないわ!
こちとら痛い思いしてるんだぞ!
少しは俺…」
最後まで言い終わるのを待つのも馬鹿馬鹿しいと言わんばかりにノエルが
「だからそんなことどうでもいいって言ってるでしょ!
それよりも大変な事が起こったの!
そうでもなければ起こしに来たりなんてしないわよ!」
ひどい言われようだ
……しかし大変な事?気になるな
ヨキ婆さんからあんな話を聞いた昨日の今日だからな
どんな事が起きたとしてもある程度は覚悟は出来ているが
思わず身構えてしまう。
「何があった……?」
「夢よ!
夢をみたの!」
食い気味にノエルはそう言った。
ベットの反対側でネムもコクコクと頷いている。
「夢?」
昨日の俺の夢はそんなもん扱いしておいてどういう風の吹きまわしなんだろうか
身構えて損した。
「あんたと同じ夢を見たのよ!」
「なんだお前
俺と一緒に登校したかったのか?」
昨日俺の夢に願望だなんだとノエルは言っていた。
そんな事言っておきながら喜び勇んで俺に報告に来るとはこいつにもかわいいところもあるじゃないか。うんうん
「登校?あんたなに言ってんの?」
何を言っているのかわからないといった感じで顎に手を当てて少し考え混むような仕草を見せるがすぐに思い至ったのか
「……あー昨日あんた私達と登校する夢を見たとか言ってたわね
違うわよ!あんたの夢なんて見てないわよ!
興味ないし
それに夢であって夢じゃないような……気がするの
うまく口で説明は出来ないけど」
ひどい言われようである。
少し涙目になってしまった。
「だったらなんの夢を見たって言うんだよ?
夢であって夢じゃない?」
柄にもなく神妙な面持ちでノエル
「『今夜例の場所で待ってる』
そう言われたの
だからうまく説明できないのよ!
なんとなく違う気がするのよ!」
それに続けてネム
「私も…見た…」
「本当か!?
誰に言われた!?」
俺が見た夢
その日あった事象を情報処理をする為の過程で脳が見せた幻想だとそう思っていたがまさか!?
「残念ながらそれはわからなかったのよね
声はするんだけどそっに体を向けられなかったのよ
聞いたことある声だったと思うんだけど……」
俺の見た夢とほぼほぼ相違ないじゃないか
それにノエルはさっき今夜と言ったよな……確か俺は昨日の夜に
『明日の夜』と言われた
そこも一致する。
気になる
「あの…ノクティ…私も…『今夜待ってる』って言われたの…」
ネムも一致
「そうか
さすがにここまで一致すると
ただの夢だとは思えないな
調べる必要があるかもしれない」
「あの…」
「珍しく意見が合うじゃない!
私もそう思っていたところよ
善は急げ
早速出発するわよ!」
「ちょっと…」
「ネイソンはまだ寝ているのか?
あいつ馬車で寝るって言ってたよな」
「ねぇ…!聞いてよ…!」
ネムが珍しく大声をあげた
顔を真っ赤にして
「どうした?急に?」
「急にじゃないよ…!ずっと話しかけてた…」
「でなんだよ?」
「私…声の人に…心当たりが…ある…」
「本当か!?
どこの誰だ?」
「それはね…_____________」





