仲間割れ
「ちょ、ちょっと苦しいって
おっ、落ち着けよ!」
半分宙に浮いている状態で手をばたつかせて抵抗を試みるが踏ん張れなくて力が入ない。
にしてこいつ急に激昂してどうしたんだ?
「ちょっとあんた達!
まったく‥急にどうしたのよ?
ほらネイソン!
やめなさい!」
今まで無関係を装っていたノエルもさすがにまずいと思ったのか俺から見たら右横に立つと
背伸びをしてネイソンが俺を掴んでいる手をほどこうと手を伸ばした。
「うるせえ!
お前もあのクズ野郎のパシリなのかあ!?」
ノエルの手をパチンと払いのけるとその反動で俺を掴んでいた手がほどけ、どすんと地面に尻餅を着きながらも解放された。
「痛っ!
何すんのよ!女を叩くなんて最低!
それに慕ってるって言ってる女の子をそんなにして!
‥‥‥本当に最低!」
そう言うとノエルは半泣きになりながら馬車に駆け込んで行った。
ぐちゃぐちゃ‥‥‥?
先ほどまでの角度からでは見えなかったが
ネイソンの後ろ
上衣がギリギリのところまで捲り上がりうつ伏せの姿勢でネムが顔だけをこちらに向けて「喧嘩‥しないで‥」と足にすがりながら言っているのが目に入った。
「おい!ネム大丈夫か!?」
俺の視線と呼び掛けでネイソンも何か察したようで怒り顔だったのも一瞬で静まると
振り返り今度は青く染まっていく。
「ねっ姐さん!
もっ申し訳ありません!」
跪きネムに手を貸して立ち上がらせる
「落ち着いた‥?
もう‥‥‥ダメだよ‥?」
引きずられたせいなのか泥で所々汚れていたがそんな事は気にする事もなく健気にも俺達の心配をしてくれている
「はっはい!本当にすいやせん」
そう言ってネイソンは頭を下げた。
「ノクティも‥だよ‥?」
俺?
こいつが一方的に突っかかってきただけだ
「いや俺は別に何もしてないぞ!
そいつが‥」
「ノクティ!」
普段とは違う声色
「はい‥ごめんなさい」
納得はいかないが流れで一応形式だけ謝る。
学校でもいつもこうだったなー
「うん‥うん‥」
微笑んでネムが二度頷く
何に納得したのかわからないが
「姐さん本当にすいやせん‥‥‥
ちょっと頭冷やしてきます‥‥‥」
そう言うと掴んでいたネムの手を離しネイソンが立ち上がり町の外の方に向かって歩きだした。
「どこいくの‥?」
心配そうにネム
「大丈夫です遠くには行きません
夜には戻ります」
「わかった‥
絶対に戻って来てね‥!」
ネイソンは返事はせずただ一度頷くとそのまま町の外に消えていった。
俺はどうしたものか
ちょっと気まずいぞ
「ノクティは‥どこも行かないよね‥?」
心配そうにネムがこちらを見ている。
「どこにも行かねえよ
心配すんな」
「よかった‥」
「どうしたんだいこれは?
大声がすると思って来てみたら
そんなに汚しちゃって
それにあの子はどこに行ったんだい?」
ヨキ婆さんが宿の二階からこちらを見ていた。





