クズ
怪訝そうな顔でネイソンがこちらを見ている。
そりゃそうだ
俺だってそんな面識のないやつに『この世界の人間じゃない』なんて言われたら面をくらう。
「この世界じゃないだって‥‥‥?」
しばし顎に手を当てて考えるような素振り
「隣国の事か?」
「いや違う
文字通り別の世界から来たんだ」
正しくは強制的に連れてこられたんだが‥‥‥
ネムの方に向きなおり頭の横に人差し指を立ててクルクル回すポーズをしながら
「姐さん
この男は何を言っているんですか?」
俺の気がふれたとでも言いたいのだろうか
とても腹が立つ
が気持ちはわからなくはないから今は黙っておいてやる
「ノクティの言ってることは‥
本当だよ‥
私も‥ノエルちゃんも‥
違う世界から来たの‥
信じられないかもしれないけど‥」
真剣な表情でネムはそう答える。
ネイソンはポリポリと頭を掻く仕草を見せながら「うーむ」と唸る。
しばし風の吹く音だけが耳をついた。
「‥‥‥姐さんが嘘をつくとは思えません
信じましょう
この男の事はまったく信じちゃあいませんがね」
最後の一言がとても余計だ。
まあもういいんですけどね!
全然気にしてないから!
「それで姐さん方はこの国‥
いや世界‥
いや‥どう言えばいいんだ?」
「そんなもんなんでもいいよ
国でも世界でも」
俺の言い方も悪かったかもしれないが
「あぁん?!」とネイソンが俺を睨み付ける。
圧が強い!
すぐに目をそらす
ネムが「落ち着いて‥」と仲裁に入ってくれて
「姐さんすいやせん」と頭を下げるネイソン。俺の方に舌打ちをするのは忘れない。
「姐さん達は何をしにこの世界に来たんです?」
「それは‥‥‥」
「それは?」
どこから説明したものかとネムが言いよどんでいるようだ
だから代わりに俺が答えてやった。
「この世界を救うべく魔王を倒しに来た!」
これは決まった!
目の前に勇者候補がいるのだ
ネイソンも驚いたのだろう何も声を発しない。
崇め奉れ
薄目を開けてネイソンの様子を伺う。
「魔王?
なんだそれ?
世界を救うってクズ王を殺りにきたのか?」
今までの空気はなんだったのか凄く間の抜けた声だ。
「いやいや違う違う魔王を殺りに来たんだ
お前の言ってる王様と同一人物なのかわからないが
その王様に頼まれたんだぜ魔王討伐」
「だから魔王ってのはなんなんだよ?
それにクズ王に頼まれただぁ?!」
そう言いながら詰めよってくるネイソン
ネムが止めに入ってくれたのだがそれでも止まらない
なんか話が噛み合わないこの世界は魔王に支配されているんじゃないのか?
ネムをズリズリと引きずりながら目の前までやって来ると俺の胸元を乱暴に掴み持ち上げる。
「おいっ!何すんだよ!」
俺の抗議にもお構い無しさらに強く締め上げる
「お前達はあのゴミクズ野郎のつかいパシリなのか!?
あぁ!?」





