確認
「なあ
ネムってなんというかさ
いつもあんな無茶というか
うーん‥‥‥猪突猛進なのか?」
宿の横の空き地
うっすらと草の繁った地面の上に寝転り
雲のいく末を目で追いながらノエルにそんな事をなんとなく聞いていた
「うーんそうね
以外に頑固なのよあのこ
走り出したら止まらないブレーキの壊れた自転車と言ったとこよかしら」
「自転車?どういう意味なんだ」
「転ばないように補助輪やる側も大変なのよ?」
「はあ
なるほど」
今までもこんな感じでネムを支えてきてあげたって事を言いたいのだろうか?
違うかも知れないが
「はーいヒナちゃーん
ご飯ですよー!」
俺の相手をするよりもヒナの相手をする方が大事なようである。
それにしても‥‥‥
「そいつデカクなりすぎじゃないか?
まだ孵化して一週間くらいだよな?」
もうノエルの膝の上に乗るような大きさではなく
馬車の外から荷台に座るノエルの胸のほどの高さで餌を与えられている。
ノエルが小柄とはいえ軽く見積もっても70センチほどはあるだろう。
「良いことじゃない!
成長するってのは良いことよ!
私の愛に答えてくれているの!」
そう言うノエルには目もくれずただギロトカゲの干し肉をむさぼり食うヒナ
愛‥‥‥ね
餌さえあげてれば今のところ危害を加えてくることはなさそうだが‥‥‥
「そいつ人食ったりしないよな‥‥‥?」
「するわけないじゃない!
なんて事言うのあんたは!?
こんなにかわいいのよ!?」
馬車の荷台から勢い良く立ち上がり感情論で反論するノエル
「大丈夫
人は襲ったりしないさ
ここらじゃ珍しいモンスターだけどね」
声のする方角―後方―
ノエルと二人ほぼ同時
顔を向けるとそこには先ほどの老婆が立っていた。
「そのモンスターはね
ハツカコンドルって言ってね
高地に巣を作って子育てをするんだ
最大の特徴は名前の通り20日で大人になる事
大人しい性格の個体が多くてね
狩り尽くされてここ最近では高値で取引されたりもしているんだよ」
なかなかの博識
「婆さん詳しいんだな」
かっかっかっかっと高笑いをあげてから老婆は続けて
「無駄に長生きしてるわけじゃあないからね」
少し自慢気である。
しかし老婆がここに居るっていう事は‥‥‥
「面会はもう終わったのか?」
「いーやまだだ
ちょっと席を外したんだよ
久々の親子水入らずに水を指すのも野暮だと思ってね
とは言ってもあのネムって子は婚約者なんかじゃないんだろ?」
老婆の様子、言動から察するに気がついているのは明白
嘘をついても仕方がない事だろう
「ああ婆さんも察している通り婚約者なんかじゃない
ただの旅仲間‥だよ」
自分で言っておきながら旅仲間と言うのもちょっと引っ掛かるがそれ以外の表現は思い浮かばなかった。
「やっぱりそうかい」
少し残念そうに「はあ」と分かりやすくため息を吐き出す老婆
婚約者では無かった事を確認して残念がる‥‥‥ネイソンとはどういった関係性なんだろう
「水入らずとは言ってもセイラ‥いや
‥患者の意識がしっかりしてる訳じゃあないんだけどね」
やはり先ほどの人名聞き間違えじゃ無かったようだ。
「‥‥‥聞きたいんだがさっきネイソンと話している時も言っていた
婆さんの言うセイラっておばちゃんの事か?
それとも‥‥‥」
「‥‥‥」
それには答えないと言うよりどう答えたものかという感じで答えあぐねているようだ。
少し間があってから老婆は話し出す
「‥‥‥その前にこちらから聞きたい事があるんだ
いいかい?」
「なんだ?」





