町医者
普通に走れば2日かかるところ
ユニもネムの気持ちを汲み取ったのだろう
1日と少しの時間でおばちゃんの営む宿のある外れの町まで戻ってくる事ができた。
もちろん要所要所で小休止はとった
しかし仮眠程度しかユニは眠らず頑張ってくれたのだ。
あとで最上級の干し草を贈呈するとしよう。
-そんなものが存在するのかわからないが-
それを牽引していたネムも大変だっただろうが
泣き言1つ言わず
ユニが小休止している間も少しでも疲れを取ってほしいと
ユニに効果があるのかは不明だがマッサージを行ったりしていた。
かいがいしいとはまさにこの事だ。
宿の横
雑草地帯にユニを繋ぎとめ勇み足でおばちゃんの元へ向かうネム
ネイソンは「姐さん貴重品もあるので自分は馬車に残りますと」
告げて馬車から降りず
結局三人でおばちゃんを見舞う事になった。
古ぼけた木製の扉をノックもせずに勢い良く開き放つ。
入り口正面のカウンターはもぬけの殻
いつもなら笑顔で迎え入れてくれるおばちゃんはそこにはいない
ネムはカウンター裏の右側
入ったことのない部屋の前に移動する。
コンコンと乾いた木の音が宿中に響き渡る。
「おばちゃん‥ネムです‥」
すうと扉が開くと知らない顔がにゅと出てきた。
「どちら様だい?
今は面会はお断りしているんだがね?」
出てきたのは小柄な白髪頭の老婆。
老婆の頭越しにベッドに誰かが横たわっているのが見える。
「あの‥私ネムっていいます‥おばちゃんにはお世話になったんです‥それで‥」
ネムが言い終わる前に老婆はいい放つ
「いかなる理由でも家族以外は今は会わせられない
悪いが出直して貰えないかねえ?」
シュンとしながらも
「そうですか‥
ネムが来たって‥おばちゃんに‥伝えてください‥
また来ます‥」
「悪いね
伝えておくから安心しておくれ」
「はい‥」と返事をして大人しく引き下がるネム
「ちょっと待って
そう言うおばあちゃんは何者なの?」
ノエルの言う通りまだこの場を取り仕切っている老婆の正体を俺達は知らない
「私かい?
私はねこの町の医者みたいなもんだ
少しばかし医療の知識があるもんでね
御見舞いなら良くなったらまた来てやってくれ」
俺達をどうしても帰らせたいみたいだ。
病人の前
まして医者相手じゃ何も言い返す言葉はない。
俺も老婆に会釈をして引き返そうとした。
しかし一人はまだ面会を諦めていない様子で
「少しいいかしら?
もしかしたらなんだけど
そこにいるネムの魔法みたいな力でおばちゃんを治せるかもしれないんだけど」
なんて言い出した。
‥‥‥ネムの魔法?
たちまちにどんな傷も治してしまう
俺も一度目の当たりにした事のあるあの力
たしかに!なんでその考えに至らなかったのか
「そうだよネム
お前の力で治してやれるんじゃないか!?」





