階級
ふらついていた足も多少落ち着いて先程よりまっすぐ歩けている気がする
温泉に入って良くなったのだろうか?
プラシーボ効果のような気もしなくもないが
ネム達と待ち合わせをしている噴水前に向けて足取りも軽く歩けているのだから多少効果はあったのだろう。
なんて考えて歩いているうちに噴水前に到着。
二人は噴水のへりに腰かけて大量の荷物に囲まれている。
「悪い待たせたな」
声をかけるや否やすぐに小さい方(ある意味デカイ方)がこちらに顔を向ける。
「本当よ
30分くらい待ったわ!
どんだけ長風呂なの!?」
かなりご立腹のようだ
ネムの方はどうかと目をやると座っている
噴水のヘリ
後ろ際に両手をついてボーッと空を眺めている。
「ごめんごめん
偶然ヘイルと会ってさちょっと話をしていたんだ
それで遅くなっちまったんだよ」
「そんな事はどうでもいいの
人を30分も待たせたのよ?
誠意の見せ方ってもんがあるんじゃないの?」
「誠意?
たとえば?」
立ちあがると左手は腰に
右手は胸の前で人差し指をたてニヤリ
「たとえばこの荷物を全部1人で運ぶとか」
ノエルの指す荷物
1人では軽く見積もっても三往復はしないと運び
きれない量だ。
噴水から馬車まで片道10分と考えて最低1時間はかかりそうだ。
「いやいや無茶言うなよ
こちとらまだ足が完全に言うことを聞く訳じゃないんだぜ?」
ギロと言う副詞がこんなにも似合う奴はいないだろう
鋭い目付きでこちらを威嚇するように
「返事はなんてするってならったかしら?」
人間には生まれつきランクがあるとしよう
ここで言うならノエルは生まれつきの女王様
誰も逆らえない支配者側
そして俺は‥‥‥
「はいわかりました」
生まれつきの支配される側
奴隷階級なのだ。
「わかればいいのよ
じゃああとよろしく」
そう言うとノエルは馬車の停めてある方角に歩きだす。
しかし救いもある。
「ノクティ大丈夫だよ‥!
私も一緒に運ぶから‥!」
ネムは生まれつきの天使
「ネム‥‥‥本当にお前はいいやつだな
ありがとう」
「大丈夫‥気にしないで‥」
「さてじゃあまずデカイのから運ぶか」
デカイ紙袋二つを抱えて
ネムには小さい物を運ぶようにお願いする。
うんと返事をして
そこまで大きくない紙袋を2つ抱えてヨタヨタしている。
「おい大丈夫か?
2つ無理なら1つでいいから無理すんなよ」
大丈夫‥!と答えてヨタヨタしながらノエルの後を追うように歩きだした。
よいしょよいしょと重そうに荷物を運んでいるがそんなに重いのか?
手伝って貰っておいてこんなこと考えているのもなんだが
「ねえノクティ‥洞窟でも‥そうだったけど‥なんで‥ノエルちゃんの事‥
ばっかり気にしてるの‥?」
唐突にネムがこんな事を聞いてきた
「俺が?
いや気にしてないが?」
おかしな事を聞くやつだ
気にしてるではなく気を使っているって言うならわかるんだが
「絶対に‥気にしてる‥!
なんで‥?」
「いやだから気にしてないって
仮に俺が気にしていたとしてネムになんの関係がある?」
「えっと‥それは‥
知らない‥!」
そう言うとズカズカと1人先に歩いて行ってしまった。
まったくなんなんだ?
訳がわからないやつだ。
結局それ以降ネムは手伝ってくれず
1人で三往復して運ぶことになった。





