救いを
緊張のせいか眠いけど眠れない
どれだけ時間がたったのだろうか?
光の届かない洞窟の最奥
今は昼なのか夜なのかそれすらもわからない
あれ以来ネイソンは目を瞑ったまま身動ぎすらしない。
本当にこいつに任せて大丈夫なのだろうかと不安を感じ出していた。
奥の手を使ってしまおうかなんて考えていたら見張りをしているのとは違う信者の足音が俺達の牢の前で止まった。
二人組の信者それぞれ胸の前で両の手を握り合わせて
「おめでとう
お前達はこれからアイテル様の糧となる」
「邪教徒に救いを」
なんてぶつぶつと言っている。
片方の信者がじゃらじゃらとリングについた鍵の束から牢の鍵を探し出し牢の鍵を開く-
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牢の格子に縛り付けられている人影が三つ
簡単に言ってしまえば俺は裏切られた
「俺達はこれで本当に救われるのか?」なんて迫真の演技をしながら信者に話しかけ気ををひいた。
その間にネイソンは木の格子に近づき蔓を生やす。
俺の名演技に信者も釘付け
ネイソンには目もくれず
「勿論救われますとも!」なんて言っていた。
油断しきった信者二人を生やした蔓で格子に複雑に縛りつけ鍵を奪い取る。
ここまでは良かった
自分では手枷足枷を外せないからまずはネイソンの方から外してくれと頼まれ俺は了承した。
ネイソンの枷をはずし終わり鍵を渡す
ここでネイソンの様子が少しおかしい事に気づいた。
「クックックッ
お前は本当にお人好しだなあ?」
自由になった手で顔を覆い肩を震わせている。
「どうしたんだよ?
早く枷を外してくれよ」
「残念だったな
お前はここでおしまいだ」
何を思ったのか男は鍵を牢の外に投げ捨て詠唱をする。
「プロントキャプチャー!」
すると信者二人の横のスペースに生えている蔓が伸び身体中に巻き付き
そのまま牢の格子に縛り付けられて身動きが取れなくなった
それで今に至る。
捨て台詞に
「お前のような足手まとい連れていくわけないだろう」なんて言っていた。
別に悔しくはない
裏切られるのも予想できた事だ。
それにあんなやつと行動を共にするなんてこちらから願い下げだ!
それに奥の手-最終手段がまだ俺には残されている。
俺の考察が間違っていなければ‥‥‥
胸を強く圧迫されてそんなに大声は出せないが問題ないだろう
「出てこいk」
横に縛り付けられている信者二人がうめき声をあげている以外は全く物音を感じられない
耳をすませてもどこかで水の滴る音がするだけだ。
命令口調なのが気に入らないのかと少し丁寧に
「おーいkさん出てきてくーださい」
あまり使ったことのない敬語
「kさまおりましたら出てきていただけたら幸いです」
その後何度も繰り返し呼び掛けてみたが反応は無し。
おかしいな俺の考えが間違っていたのだろうか‥‥‥
胸の圧迫のせいで呼吸も浅く苦しいのに声を出し続けていたもんだから
だんだん頭がボーッとしてきた
このままじゃやば‥‥‥‥‥‥ぃ
ゆっくりと着実に視界が白に染まっていく





