番外編【ヘイル】
あいつらが旅立って2日が過ぎた。
そろそろチャチル城に着いた頃だろうか?
あいつほどの実力があれば心配ないと思うが‥
ひとつ引っ掛かっている事があるのだ。
それは良くない噂の事だ
良くない噂ってのは
街道を走る馬車が襲われているのではないかという噂だ。
誰かが襲われている所を目撃したという話は今のところない
しかし馬車だけが不自然に乗り捨てられている事が多々見受けられるというのだ。
あまり心配を与えるのは良くないと思って
あいつらには詳しい話は教えなかったが少し後悔している。
自分を落ち着かせるために何度でも言う
あいつの実力なら大丈夫だろう。
そういやあいつらの連れていた一角獣は少し変わっていたな。
普通の一角獣より一回りくらい大きかったし
普通なら一角獣には、はえない立派な鬣があった。
人の言葉を高度に理解しているような仕草も見受けられたしな。
あいつはかなりの高値で売れる。
次会うことがあったならまた売ってくれないか交渉してみる価値はありそうだな。
うんそうしよう!
さてそろそろパトロールの時間だ。
あいつから実家が犯罪に利用されているかもしれないと聞いてから始めた日課だ。
少しでも抑止力になればいいと思って行っている。
ドラゴンが大口を開けた玄関から表へ出ると朝の日差しがとても眩しい。
しかしこれが心地いいんだよな!
10メートルくらい前方に見慣れた人影が見えた。
どうやら向かえに住んでるヨキ婆さんも朝日を浴びにちょうど表に出てきていたようだ。
「ヨキ婆さんおはよう!
今日もいい天気だな!」
「おはようさん
あんたは毎日早いわね
町の老人達より早いんじゃないのかい?」
そう冗談めかした返答をしてくるヨキ婆さんだが
あんたも立派な老人だぜ!
っていうのは野暮ってもんだな。
「いやいや
ヨキ婆さんには負けるよ」
「かっかっかっかっ」
朝日に向かって高らかな笑い声をあげるヨキ婆さん。元気な印だな!
「あっそうだ
そういえばね
一昨日ネイソンみたいな男を見たんだよ」
「えっ?ネイソン
ネイソンってあのネイソンか?」
「そうだよ
そのネイソンさ」
ネイソンって言うのは古くからの悪友だ。
宿屋の一人息子で五年くらい前に突然町を飛び出して行った。
それ以来会っていなかった。
しかしあいつにかんしてもあんまりいい噂は聞いていないな‥‥‥
「どこで見たんだ?」
「毎朝町の外れを散歩しているんだけどね
森の方からチャチル城の方に向かって一角獣にのって走り去っていったのさ
風貌はかなりかわっていたけどね
間違いなくネイソンだったよ」
「風貌がかなり変わっていたのになんでネイソンだってわかったんだ?」
「それはね私を見て怯えた目をしていたからさ!
あんたたち二人の事はよく叱ったもんだ
あの目は間違いなくネイソンさ」
「ははは
あの頃は町の人達にはかなり迷惑かけたよな
反省してるよ
じゃあそろそろパトロールに行くとするよ」
昔の話を持ち出されて居心地の悪さから
話をそうそうに切り上げてヨキ婆さんから逃げるように歩きだす。
「昔は昔
今が良ければそれでいいのさ
じゃあね
今のあんたは立派だよ」
後ろ姿にそう言葉を投げ掛けられたがそれには振り返らず
返事をせず歩みを進める。
少しは恩返しできてるのかな‥‥‥?
ふっ
らしくないな
にしてもネイソンの野郎がこのあたりをウロウロしているのか
なんか嫌な予感がする
おかしな事にならなければいいんだが‥‥‥





