じむ‥
チャチル城から
城下で借りている宿にすごすごと戻り
明日からどうすればいいのか思考を巡らせていたところ来客を告げるノックがあって現実に戻された。
「‥はい」
「私よ!約束通り来たわよ」
宿に戻っている途中ノエルに
さっきのは、どういうことなのか?
どういうつもりなのかと問い詰めると
「今はネムがいるから都合が悪い
後にして」と鋭い目付きでキッと睨まれた
約束って言うのはどうやらそのことなのだろう。
「ちょっと待ってくれ」
真新しいドアの施錠を外しノエルを迎え入れる。
「さっきは悪かったわね
ネムに聞かれたくないから鍵閉めるわよ」
俺の返事を待つことなくガチャリと鍵を閉めてこちらに向き直る
しばらく手持ちぶさたにして落ち着かない様子なのでベットに腰かけるように促してから
自分は床に普段羽織っている黒いコートを敷き
その上に腰かける。
「それでさっきのはどういう事なんだ?
前回ははぐらかされたけど今度ばかりは全部話してもらうからな」
わざとらしくはぁーと深いため息を吐いた後
「わかってるわよ
なにから話すかね‥‥‥
そうね
まずはネムと私の関係から話す必要がありそうね」
こいつらの関係か
前々から気になってはいた
ネムから聞き出そうとしていたがこんな形でノエルから聞かされる事になるとは思わなかった。
「私、事務所に所属しているの
芸能事務所なんだけどね」
事務所‥‥‥!
その瞬間もやっとしていた事柄が、
点と点が線に繋がった。
今までノエルに対して感じていた既視感の理由
どこかで会ったことがあるような感覚
「ああー!
お前あの藤崎乃英瑠か!
なんか雰囲気が違うからわからなかったぞ!
でもどうりで見たことあるわけだ!」
テレビや雑誌で見た事のあるノエルはたしか
髪を縛っていないし
服装もなんと言うか大人しめな感じの服装だったはずだ。
慌てて人差し指を口の前に立てて
「ちょちょっと
急にそんな大きな声を出さないで
ネムに気づかれるわ
あれは仕事をしている時の私
これが本当の私」
本当の姿の方がノエルらしくて魅力的だと思うが今は関係ない事を言うのはよしておこう。
声のトーンを落としてごめんと一言謝ってから
「でそれがネムとどう繋がっていくんだ?」
はぁーと
またわかりやすいため息を吐き出してから
「ここまで話してもまだわからない?」
わからないので首を縦に振って肯定する。
うんざりした様子で
「ネムはね
私と歳は同じなんだけど事務所の後輩なの」
「えっ!?
それって芸能人って事」
素直に驚いた
あのネムが!?





