新しい命
「がんばれ‥がんばれ‥!」
「あと少し‥
あと少しよ!」
俺の呼び掛けが聞こえてないのか無視
そしてさらに盛り上がっている。
普段は開いたままにしてある
今は固く締め切ってある荷台の幌の前に立ち
覚悟を決めてカーテンに手を伸ばした。
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「なんだよ‥そんなことかよ‥
こっちはもっと大変な事かと思ったんだぜ?」
今目の前では産まれたばかりのハトサイズのヒナがエサを求めてピヨピヨとノエルにすり寄っている。
刷り込みというやつなのだろう。
昨日の残りのギロトカゲの肉を食べさせるノエル
ネムも遠巻きに観察しているが近寄りはしない
怖いのか?
「なによ大変な事って?」
「いやまあそれはいいんだよ‥」
ノエルかネムが出産してると思ったなんて言ったら
なんて言われるかわかったもんじゃない
黙っておこう
俺は賢いのだ‥‥‥
‥‥‥さて
話をまとめるとこうだ
以前ノエルのト○レを間違って覗いてしまった時まで話は遡る。
ノエルは俺達を探して部屋の隅々まで探していた。
荒らされていた部屋の隅のテーブルの上に小さい座布団が敷かれた台座が置かれ
大事そうに卵が鎮座していたらしい。
民家に入る前に近所のおばあちゃんに誰も住んでいない事は聞いていたし
貰ってしまっても問題ないだろうと近くに置いてあった袋に詰めて持ち出したとの事だ
「誰も住んでいないってわかっていたなら古い物でもう死んでいるんじゃないか?
とは思わなかったのか?」という俺の質問には
『なんとなく直感でまだ生きていると思った』と答えた。
女性の第六感は凄いと聞くがこれもそれにあたるのだろうか?
あれは嘘を見破る力だったか‥‥‥?
ここで話の冒頭に戻るのだが
それでどうしたいのか聞いたら『絶対に飼う!』と鼻息荒く言った。
反対するつもりは毛頭ないがユニとは違って食費がかかる
それはどうするのか?と聞いたらニヤニヤしながら『ノゾキさん?』とネムには聞こえないくらいの声量で囁いたのだ。
この女‥‥‥
「ぐっ
俺に餌を用意させて下さい!」
と声高らかに宣言をさせていただいた。
このタイプの女に弱味を握られるとろくな事がない‥‥‥
『わかればよろしいわ』
こうして我がパーティーにまた新たな戦力が加わった。
まだ産まれたばかりのヒナ
名はまだない。
戦闘力なし





