不在
「いてててて‥」
全ての体重を受け止めた首を労り
さすりながら起き上がり荷台を見上げると
先程まであまり機嫌の良さそうじゃなかったノエルと目があった。
「ぷっ」
吹き出しそうになっていた。
我慢しているが目は笑っている。
いっそここまではっきりしてると清々しいな‥‥‥
俺の体を張ったギャグで笑ってくれて良かったよ‥‥‥
くそっ‥‥‥
「ノクティ‥大丈夫‥?」
荷台から身を乗り出してネムは物思わしげな姿勢でこちらを見ている。
同じ物を見てるのにこの反応の違いはなんなんだろうね?
全く‥
「大丈夫だよ
ちょっと痛いだけだから」
嘘だ本当はめちゃくちゃ痛い
誰もいなかったら泣き出したいくらい痛い
「そっか‥もう‥気をつけてよ‥」
ネムに向けて顔の前で親指を立て突きだしながら
小屋に逃げ込む
ノエルがそれを見て「ぶっぶっ」となっていたが俺は気にしない‥‥‥
くそ!めちゃくちゃ恥ずかしい
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小屋の扉は以前来た時と同じで
開いていたので呼び掛けてからお邪魔したのだがセイラの返事はなかった。
あれからたった5日しか経っていないはずなのに生活感が全く感じられない。
以前啓示を受けた時に使用した部屋
-正面にある階段の左の部屋-から調べてみる事にした。
コンコンと扉をノックするが返事はない
「おーいセイラいないのか?」
呼び掛けてもうんともすんとも言わないので
「声はかけたからなー
着替え中だったとしても事故だからなー」
と予防線を張りながら扉を開くも姿はない。
ちょっと期待した俺が馬鹿みたいだ。
同じ要領で反対の部屋も
初めて踏み入る階段上の寝室
その隣の客室どこを探してもいない。
どこかに出掛けてるのだろうか‥?
表にでて馬車に向かって呼び掛ける。
「ちょっといいか?」
荷台の後ろで足をブラブラさせて寝転んでいたノエルが先に反応した。
「なに?もう話は終わったのかしら?」
「それがさセイラの姿が見えなくて
どこかに出掛けてるみたいなんだ」
「ふうん
それで?」
俺がその問いに何て答えるのかわかっていながら聞いているなこいつ
「帰ってくるまで待ってもいいか?」
やはりかという感じでちょっとノエルの表情が曇る
しかし返ってきた答えは以外で
「‥仕方がないわね
苦手だけど一応恩人だし」
「悪いな
ネムもそれでいいか?」
「うん‥私はノクティと‥ノエルちゃんに‥任せるよ‥」
「ありがとな」
ネムは素直で助かる。
このあと夜まで待った。
しかしセイラが帰ってくることはなかった。





