寄り道
草原の中に一本のびる街道を順調に走行中。
カラカラと抵抗なく回るタイヤの音が心地よい
きっと使われていなかった間もヘイルがメンテナンスを怠らなかったからだろう。
感謝しかない。
感謝と言えば
チャチル城に行く前に一ヶ所寄らなければならない所がある。
「なあ二人ともちょっと話があるんだがいいか?」
「なに?ノゾキさん」
一人外で手綱を握っているネムには聞こえていないようで
窓から外を眺め少しけだるそうにしているノエルだけが返事をした。
にしてもこいつ根に持ってるな‥
「‥‥あのさちょっと寄りたい所があるんだけど‥」
最後まで言い切る前にノエルが俺の言葉を遮る。
「それってあの女のところ?
私はあんまり気が進まないわね‥
でもいいわよ
行くなら私は馬車で待ってるから
ネムとノゾキさんは好きにしなさい」
とりあえずは了解を得られて良かった。
下手したは反対されると思っていた。
「そうかわかった
ありがとうな
それと俺はノクティな」
ネムの了解も得るために荷台の頭まで移動して話しかける。
「なあネム
ちょっといいか?」
急に声をかけられて驚いたのか肩をビクンと震わせてからこちらに振り向いた。
「うっ‥もう‥‥びっくりした‥!」
構わずに話を続ける
「あのな
ちょっと寄りたい所があるんだ
ちなみになんだけど、ノエルからはもう了解は貰ってる」
ノエルから了解を得ていると言うところを強調してネムに伝える。
‥‥ネムはノエルに弱いからな。
これぞ策士。
「うん‥私はいいよ‥
‥どこに寄りたいの‥?」
その人物の住まう建物はもう少ししたら左手に見えてくるはずだ。
そうそれは‥
「セイラのところだ
お金も入ったことだし
借りてたお金を返したいんだ」
実際借りたわけではないのだが、男として仮は作ったままにはしておきたくない。
それにまた話そうと約束もしたしな。
‥‥決してセイラの白い綺麗な足が見たくなったから寄るわけではない‥
決してないのだ!
「うん‥わかった‥
じゃあ小屋の前で‥停めるね‥」
「おう
よろしく!」
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馬車がゆっくりと減速していきタイヤの回るカラカラからという音も次第に小さくなり
馬車が停まる。
「ノクティ‥ノエルちゃん‥着いたよ‥」
「ありがとう
ユニもありがとう!」
「‥‥」
相変わらず俺の事は無視するユニ
「私はお留守番してるから
ネムは行くなら行ってきなさい」
「えっ‥‥どうしようかな‥」
ノエルが行かないと知らされていなかったネムは困惑ぎみだ。
「ネムが行くにしろ行かないにしろ先に俺は行ってるぞ
よっと!」
そういって馬車の荷台から飛び降りた。
一度やってみたかったんだこれ‥‥
「うっ」
どてっと鈍い音を残して着地に失敗
顔から着地する事には成功した。





