出立
「これで忘れ物もないな」
現在宿の前につけた馬車に荷物を積み込み最終的な確認も済ませ
いざ城下へと旅立つ5秒前と言ったところだ。
昨日のうちに旅に必要な保存食やクッションなども買い揃え万全の構えだ!
さてと
「おばさん世話になったな
またこの町に来る機会があったらまた
利用させて貰うよ」
「こちらこそありがとうね
はいこれ口に合うかわからないけど
お弁当だよ」
風呂敷のような布にくるまれた立方体をおばさんが手渡して来た。
「おっ悪いね弁当まで貰っちゃって」
「いいんだよ気にしないでおくれ!
‥ネムちゃんが居なくなると思うと寂しいわ‥」
たったの五日間とはいえ自分の娘のようにネムを可愛がっていたからな‥
そのせいか朝からネムもどこか寂しげではあった。
「‥私も‥
ちょっと‥‥だけど‥‥
‥また絶対に‥会いに来るね‥!」
俯き気味ではあるがついこの前までのネムとは違ってどこか前向きに見えた。
そんなにネムの事を知っている訳じゃないが‥
「うん
待ってるよ!
行ってらっしゃい!」
「行ってきます‥!」
なんかこういうの家族みたいでいいな‥‥ちょっと羨ましい‥
「ノクティ」
野太い男の声で呼び止められた。
振り返らなくても誰だかわかる。
「ヘイルか
見送りありがとうな」
「なーに
ちょっと通りかかっただけだ」
「おいおいこんな町外れに通りかかる用なんてあるのか?
なんてな‥」
最初会った時のように
今度は俺が大袈裟に両手を広げて小バカにした感じで言ってみた。
「ふっ
達者でな
この先チャチル城までは一本道だが
近頃あまり良くない噂を聞く
くれぐれも気をつけてくれ
‥‥まあドラゴンキラーのお前なら心配ないだろうがな」
良くない噂か‥‥気を付けるとしよう
俺は本当に弱いから念には念をいれて橋を叩いて壊す勢いで行かなければならない。
「忠告ありがとよ
じゃあネムそろそろ」
ネムは既に荷台の先端で手綱を引いて構えている。
「うん‥ユニ‥!」
ピッと手綱を引く
「ヒヒーーィィイン」
ネムの合図を受けて今まで聞いたことがなかったくらいの嘶きをあげてユニがゆっくりと歩み始め
次第にタタタンタタタンと小気味いいリズムを刻み出す。
すぐに後ろに移動しておばさんとヘイルに精一杯手を振った。
少しずつ見えなくなっていく二人を横目にコソコソとしている人影が気になった。
「おいノエル別れの挨拶もしないでさっきからなにやってんだ?」
「んっ!?なっなんでもないわよ!
さっ手を振るわよ!
バイバーイ」
とうに2人の姿は見えないが‥
明らかに挙動不審だ。
でもまあいいだろう
ようやくスタートラインにたてた清々しさがそう思わせた。





