プレゼント
「さあここだ」
ドラゴンが大口を開く建物の前に俺、ネム、ユニの二人と一頭で立っていた。
ノエルは留守番をしている。
ネムと約束をしたあとすぐにノエルの部屋に向かい留守番のお願いをした。
抗弁してくると思ったが意に反して
『いっ、いいわよ!留守番なら任せておきなさい!』
と言って快く引き受けてくれた。
部屋の中を見えないようにディフェンスしていたのは気になるが、素直に引き受けてくれて助かった。
さすがに大金を置いて留守にするのは怖いからな‥
他意はないがネムは建物をみて
「うわー‥‥凄い‥ 大きい‥」
と感嘆の声をあげている。
‥‥‥何度も繰り返すが他意はない。
「おう!待ってたぞ!ノクティ!」
ドラゴンが大口を開けている所から身を屈めて屈強な男が出てきた。
「よっ!
ちゃんとユニも連れて来たぜ」
「ユニ?
ああ一角獣か
もう目に入ってるとは思うが
そこに荷馬車があるだろう?」
そう言ってドラゴンが大口を開けるそのすぐ横を指差す。
そこには幌付の立派な荷馬車が停まっている。
ヘイルは親指をグッと立てると
「それをお前達にやる」
そう言った。
「えぇっ!?マジで!?
いいのか!?」
「そこまで驚いて貰えると
プレゼントしがいがあるってもんだ!
さっそくその一角獣に引かせてみたらどうだ?」
「ああそうする!
ネムいいか?」
「うん‥!
ユニ‥ちょっとこれ‥引いてみてくれない‥?」
ネムが指示すると「ヒンッ」と鳴いてすぐに荷馬車の前に歩いていく。
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「フッなかなか立派なもんじゃないか」
ヘイルが言う通り荷馬車を引くユニの姿は様になっている。
心なしかユニも嬉しそうだ。
「どうだネム乗り心地は?」
手綱を握るのはネムだ。
俺も挑戦してみたがユニはあくびを連発するだけで全く歩いてくれなかった。
「うーん‥振動が凄いから‥クッションが欲しい‥かも‥」
「そうか!
それは後で買いにいこう
ヘイルありがとう
‥後で返せなんて言われても返さないからな?」
軽いジョークを交えつつ感謝の気持ちを伝える。
「ああ構わねえよ
倉庫で眠ってるよりはいいだろう
使われてなかったからそれも使われて喜んでるんじゃないか?」
「本当にありがとうな
大事に使わせて貰うよ!」
「ああ
‥‥供養にもなるだろうしな‥‥」
「ん?なんか言ったか?」
「なんでもない
気にするな
じゃあそろそろ俺は店に戻るぜ」
「わかった
ネムそろそろ俺達も帰るぞー!」
ネムは遠くで頭の上で手で丸を作って答えている。
「お前達いつまでこの町にいるんだ?」
去り際に後ろ姿でヘイルが問いかけてきた。
「そうだな‥
馬車が手に入った以上準備が終わり次第すぐにでも出たいな
今日買い物を済ませて明日の昼には出立かな」
「わかった
明日の昼だな‥じゃあまたな」
そう言い残してヘイルは店に戻って行った。
「さてとネム俺達も‥あれ?」
宿に戻る道の遥か彼方にネムとユニの姿はどんどん遠くなっていた。





