一人ファッションショー
「‥‥‥悪いな取り乱しちまって」
しばらくしてヘイルが口を開いた。
見た感じ体の震えも収まって落ち着いたようだ。
「いや大丈夫だ
気にすんなよ」
「お前‥いやノクティにはこれで借りが二つできちまったな」
「別にヘイルのためにやったわけじゃない‥
気にすんなよ」
マーダーコングの群れを倒したの俺じゃあないし‥
「なんか力になれる事があったらなんでも相談してくれ
そういやお前達はどうしてこんな辺鄙な町にやって来たんだ
こんな国の外れに」
どこから話せばいいものか‥‥
転移されたと話しても信じないだろうし‥
「‥‥‥俺達はチャチル城を目指してるんだけど
歩いたら時間がかかるから
この町で荷馬車に乗せて貰った方が良いって聞いてこの町に来たんだ」
「そうか‥」
ヘイルは顎髭を指で捩りながらニッと笑うと
「‥これで1つ借りを返せそうだな
今日の夕方くらいに俺の店の前に来られるか?」
「ああ大丈夫だけど
どうしてだ?」
「来ればわかる
じゃあ準備があるからここらで帰らせてもらうぜ
あっそうそう来るときは一角獣も連れて来るんだぞ!」
『じゃあまた後でな』と告げると
ゆったりとした動きで扉を開き音もなく帰っていた。
ユニも連れていくとなるとネムの許可も必要だな
ネムは宿にいるのだろうか?
ここ2日間ヘイルから入金があるまで自由時間と言うことになっている。
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古ぼけた木の扉を軽く三度叩くとすぐに反応があった
「はっ‥はい‥!」
良かった居てくれた
「ネム俺だ
お願いがあって来たんだか開けてくれるか?」
「ちょ‥ちょっとだけ待って‥」
ガサゴソガサゴソ扉越しに聞こえてくる。
なにかしてたのか‥?
「いいよ‥」
扉を開ける
ベッドの上に山積みになっている物にまず目がいった。
「凄い服の量だな‥
どうしたんだそれ?」
「これはね‥
おばさんから‥貰ったの‥!
お手伝いの‥お礼だって‥」
「ふーん良かったな
今着てる服も似合ってるな」
状況から見るに一人ファッションショーをしていた感じだろうか。
「そう‥?ありがとう‥へへ‥
こっちもかわいいんだよ‥見て見て‥!」
「おっおう‥」
何か忘れてるような‥‥‥
‥本題を忘れる所だった。
「そうだ!かわいい服もいいんだけどさ
ちょっとお願いがあって来たんだ」
「なーに‥?」
「夕方くらいにユニを貸して欲しいんだ
なんなら一緒に来てくれないか?
あいつ俺の言うこと聞いてくれないし‥」
「うん‥いいよ‥!」
「オッケー
時間になったら迎えに来るな
そういやノエルは部屋にいるのかな?」
「うん‥
たしか今日は‥部屋に居るって‥言ってたよ‥」
「わかった
じゃあまた後でな」





