入金
ベッドで横になり
夢と現実を行ったり来たりしていると
唐突に部屋をノックする音があり野太い男の声で現実に呼び戻された。
「おい!俺だ!約束の物を持ってきたぜ!」
ボーッとする頭で少し考える‥‥
そういや約束は今日までだったか‥
「鍵開いてるから入ってくれ」
入ってきた男は坊主頭で筋肉隆々の髭面の大男だ。
その身なりで約束の物なんて言われると
何も知らないやつが聞いたら即通報ものだが
こいつは素材買い取り屋のヘイル
れっきとした表世界の住人だ‥‥‥よな?
強面だがそんなに悪いやつではない‥‥‥はず
「なんだよこんな真っ昼間から寝てたのか?
ほらよ!」
テーブルの上にパンパンに詰まった皮の袋を5つドンドンと置いていく。
「1つあたり50万で‥全部で250万だ
さあ確認してくれ!」
確認はいいよと言いかけて
ノエルの顔が浮かんだ。
そんな事をしたのがばれたら五月蝿そうだな‥
しっかり確認するか。
「数えるからちょっと時間をくれ」
「おう!気のすむまで数えな!」
ヘイルは白い歯を見せてニッと笑ってみせた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「確かに250万領収したぜ」
「これで契約満了だな!これからもご贔屓に頼むぜ!
そういや‥」
ヘイルが窓の外をキョロキョロと何かを探すような仕草をしている。
「表にやたら立派な一角獣がいたんだがお前達のか?」
「あーあいつは俺のパーティーにネムって女の子がいるんだが、そいつの一角獣って事になるのかな?
森でやたら懐かれてさ」
「森‥?
何しに行ったんだ?あんな危険な所に?」
ヘイルの両親はマーダーコングの被害者だったな‥
すべて話す必要があるだろう
「ちょっと長くなるぜ
あのな――」
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「――という事なんだ」
話し終わるとヘイルは震えていた。
その震えは怒りから来るものなのか、悲しみから来るものなのか、はたまた喜びから来るものなのか俺にはその判断がつかなかった。
それ故どう声をかけたらいいかわからずヘイルが口を開くのを待っていた。
ヘイルはその大きい体を折り畳み深く頭を下げると声を絞り出すようにして話し出した。
「そうか‥そうか‥‥ありがとう‥‥
ただただありがとう‥あいつらを‥討伐することが‥‥俺の悲願だったんだ‥‥
これでようやく‥‥ようやく‥‥」
床で雫が一滴、二滴と続けて弾けた。
ろくに人付き合いして来なかったからどんな言葉をかけたらいいかわからない‥
これで合ってるのかわからない‥
「おめでとう‥良かったな‥」
そう声をかけてヘイルが落ち着くのを待つ事にした。





