気遣い
「ノエルって結構しっかりしてるんだな」
怪訝な顔をしながらノエルが振り替える
「急に何よ
褒めてもなにも出ないわよ!」
「いや褒めてる訳じゃなくて‥尊敬だな
素直に凄いなと思ってさ」
「ふんっ!」
照れ隠しなのかそっぽを向いてしまった。
少し肩を並べて歩いた後
ふぅと息を吐き出してから聞き取れるか聞き取れないかの声量でそっぽを向いたまま
「‥人よりすこしだけ経験があるだけよ」
とぽつりと呟いた
「経験‥?」
「なんでもない!気にしないで」
「ふーん
そういや大層な経験のあるノエルさんはいったい何歳なんだ?」
半目になりながらこちらに向き直り
「女の子に歳を聞くなんて本当にノゾキさんはデリカシーがないわね‥‥‥
まあいいわあんたに期待するだけ無駄だものね
私もネムも16よ
そう言うノゾキさんはおいくつなのかしら?」
二人とも俺より年下だったのか‥‥‥
「てことは高校生か?
俺は18だ
あとできればノゾキさんはやめてくれ‥」
「そうよネムも私も一応高校生
ノゾキさんは?」
変な呼び名はやめてくれる気はないらしい
「俺は‥‥‥いろいろあって高校は辞めたんだ」
あまり思い出したくないし話したくない過去だ‥‥‥
「ふーんそうなんだ
まあ人生いろいろ‥よね
んー」
ノエルは興味が無さそうに伸びをしてみせた
ノエルなりの気遣いだろう
その気遣いがとてもありがたかった
「聞こうか迷っていた事があるんだけど‥
この際だから教えてくれ」
「何かしら?」
「ノエルと俺どこかで会ったこと無かったか?それがどこなのかってのは思い出せないんだが」
ここ二日間引っ掛かっていた事だ。
ノエルにはなにか既視感があった。
Kがドラゴンを討伐して出会ったあの時に。
「んー残念ながらそれはないと思うわ
私はあなたを知らない
知らなかったと言った方が正しいかしらね」
腰に手を当てて虚空を見つめながらそう答えた。
「そうか
それならいいんだ俺の勘違いなのかもな」
よくよく考えたらノエルのような可愛い女の子と知り合う機会なんてなかったしな
きっと気のせいなんだろう‥
「‥あ‥‥が‥‥‥‥しっ‥る‥‥‥‥」
ノエルがなにかぶつぶつ言っている。
「うん?なんだって?」
「な、なんでもないわ!ひ、独り言よ
気にしないで!
さあ宿まで競争よ!」
今明らかにビクッとしたのだが‥
話を反らすようにノエルは走り出した
「ちょっと待てよノエル」
彼女の背を追いかけながら考える
彼女にも触れられたくないことはあるだろう。
彼女は俺のその部分に触れてこなかった。
だから俺も触れないでおこう。





