夢の時間
着替えて外に出ると案の定、既にネムが待っていた。
道端の低い塀に座って小石を蹴飛ばしている。
「悪い
待たせたか?」
ネムがこちらに気がついて顔をあげる
「‥大丈夫‥今来たとこだよ‥!」
男女の御約束のようなやり取りを終えて
「じゃあ戻るか」とネムを促す
俺の横をテトテトと着いてくる。
なんかこういうのいいな‥‥
今までの人生では無縁だった。
ほんの数日前までは女の子と話すなんて考えられなかった‥
ましてやこんな肩を並べて歩ける日がくるなんて‥
しかも一緒に歩いている相手は、控えめに言っても美少女、まるで夢のようだ‥
最初は異世界ふざけんなっ!とも思ったけど案外捨てたもんじゃないかもなこの世界も‥
「どうしたの‥ニヤニヤして‥?」
怪訝そうな顔だ。
注意深くこちらの様子を伺っている。
「‥いやなんでもないんだ
なんでも‥」
無意識にニヤニヤしてしまっていたらしい‥
表情を引き締めるために筋肉隆々(きんにくりゅうりゅう)の髭ずらのおっさんを思い浮かべよう。
筋肉筋肉、髭ずら髭ずら
うっ気持ち悪‥‥
気を取り直してネムに話しかける。
「それにしてもその服似合ってるな」
見慣れない服を着ていた。
グレーを貴重としたロングスカートのドレスで
スラッとしたネムには凄く似合っている。
「‥似合ってるかな‥?ありがとう‥」
俯きがちにこちらをチラチラと見ている。
「凄い似合っているよ
その服どうしたんだ?」
「さっきおばさんがね‥持ってきてくれたの‥着てた服は洗濯しとくからって‥」
「そうなのか
良かったな」
あのおばさん本当にいい人だな‥
しかしこんなに細い服どこから持ってきたんだろうか?
とてもあのおばさんが着ていた物とは思えないが‥
「おばさんが若い頃‥着てた服なんだって‥
いつか誰かが着るかもしれないからって‥
大事に保管してたんだって‥!」
「‥そうなのか」
予想に反しておばさんのお古だった‥
そこでネムと俺の足が止まる
宿屋に着いたのだ。
同時に俺の夢の時間も終わりを告げた。
「ご飯‥なんだろうね‥?」
「さあな、まあなんにしろ旨いと思うぜ」
そう言いながら、木製の両開きの扉に手をかけてゆっくりと開く
「いらっしゃい!」と元気な声で迎えいれられる。
「あんたたちかい!待ってたよ!
裏にご飯用意できてるから早く食べて食べて!」
「「はい」」
早くと促されるままカウンターの裏に回り込んでドアを開く。
テーブルには三人ぶんの料理が用意されていた。
「ノエルちゃんの分かな‥?」
ネムも疑問に思ったようだ。
「それは私の分
たまには若い子達と一緒に食べたいと思ってね!
ノエルちゃんなら出掛ける前に食べたわよ!」
「そうなのか
ノエルのやつどこに行くとかいってなかったか?」
「あっ!そういえば伝言を頼まれてたのよ!
もし私がいない間に2人が戻って来たら宿屋から出ないようにって」
「そうか、わかった
伝言ありがとう」
すれ違わないようにするためだろう
おとなしく従う事にしよう。
「さあさ無駄話してないで!冷めないうちに御上がり!」
「それもそうだな」
それぞれが席につく
ネムは俺の隣正面におばさんと言う配置
「いただきます」
「‥いただきます‥」
「たーんと御上がり!」





