やさしさ
森を抜け出して町に帰る道すがら
ネムは饒舌だった。
できれば今はあまり話したくない気分なのだが‥
「ノクティノクティ‥町に帰ったらお風呂入りたいね‥!」
「ああそうだな」
「ノクティ‥お腹すいたね‥」
「ああ」
こんな感じで二歩三歩、歩く度に話しかけてくる。
「あのね‥ノクティ‥ユニが‥‥‥‥
‥‥ねえ‥ノクティ‥大丈夫‥‥?」
「うん?なにが‥だ?」
「‥大丈夫なら‥いいんだけど‥‥」
やたら話しかけて来ていたのは俺を気づかっての行動だったようだ。
あまり心配をかける訳にもいかないよな‥‥
ふぅ‥
「なあネム、町に帰る道はこっちで本当にあっているのか?」
「大丈夫だよ‥!
ユニが案内してくれるって‥言ってたから‥!」
そう無い胸を張って答えてくれた。
ユニもこちらを振り返り「ヒン」と鳴いた。
「任せろって言ってるよ‥!」
ネムには馬語が理解できる?のだろうか‥?
ネムの言葉の通り
俺たちは今ユニに先導されて進んでいる。
ネムには凄く懐いているようだし信用していいだろう。
「そうか」
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アドレナリンが切れてきたのか
脳が正常に機能しだしたのか
先程から脇腹がズキズキと痛む。
「なぁネムちょっと休憩しないか?
脇腹が痛むんだ」
ユニとネムから少し遅れて歩いていた俺のほうにトタトタと走りよってくる。
「うん‥休もう‥
大丈夫なの‥?」
「大丈夫だ少し休めば
あそこに切り株があるから
あそこに腰かけて休もう」
「うん‥
ユニ‥!ストップ‥!」
切り株はネムに譲った。
というより横になりたかったから芝生の上で寝転ぶ事にした。
ユニはここが指定席とネムの横。
寝転びながら空を見上げると巨大な真ん丸い天体がこちらを優しく照らしてくれていた。
どうやら今日は満月のようだ。
「それにしても今日の月は綺麗だな」
「うん‥
ってふぇ!?
そんな‥急に‥困る‥」
なにかにネムが驚いたようにあたふたしている。
「どうした?
なんかあったのか?」
虫でもいたのだろうか?
「えっ?違うの‥?
ん!なんでもない!」
ちょっとムッとしたような感じでユニを撫でだした。
「どうしたんだよ?」
「だから‥なんでもない‥‥!」
プイっとそっぽを向かれた。
まったく女心はわからない。
一拍の沈黙の後ネムが口を開く。
「ノエルちゃん心配してるかな‥‥?」
ノエルには何も伝えないで来てしまっているしネムの事は心配しているのは間違いないが、
俺には激怒しているかもしれない。
「まさかこんなに遅くなると思わなかったからな‥‥
心配してるんじゃないか?
帰ったら謝らなきゃな」
「うん‥そうだね‥」
「じゃああんまりノエルを待たせる訳にもいかないし
もう少しだけ休んだら行くか」
「うん‥そうだね‥」
「ヒン!」





