魔法
その【白い何か】は少しヨロヨロと歩いたあと
ネムの前で倒れた。
弱っていたのかなんなのか
どうやら命拾いしたようだ。
ネムが駆け寄って【白い何か】を観察している
わき腹の痛みが収まるのをまって
ネムの横に移動する。
「このこまだ小さいのに‥かわいそう‥
助けたい‥!」
なんかぶっ飛んだ事を言い出したよこの子‥
まだ小さいとは言えモンスターだろこれ‥
ネムが心配そうに見守るモンスターに目を向けて見る
凄い傷だらけだ。
それに呼吸が浅い。
このまま放っておけばもうそんなに長くはないだろう
「んっ‥?」
よくよく見るとこいつ知ってるぞ
俺が知ってるのよりかなり小さいけど‥
チャチルキングダム内ではたしかユニコーンとかいう名前の移動専用モンスターだった‥
この世界ではただのモンスターなのだろうか?
移動手段にできるなら救う価値もあるが、この大きさでは俺たちを運ぶのは無理だろう‥
どちらにせよ俺達は回復手段を持たない
町にすぐ戻れる訳でもない
今このモンスターを救う手段はないな
「なぁネム
かわいそうなのはわかる。
けどこいつは助けられないよ
まずモンスターだし
助けたら逆に俺達が襲われるかもしれない。
それに俺たちには回復手段がないんだ
だから‥諦めて先へ進もう」
「ノクティのイジワル‥‥」
俯いているのでネムの表情は見えない
「そう言われてもさ
実際どうすることもできないじゃないか
だからさもう行こう」
そういってネムの手を引いた
「いや‥!」
ネムが抵抗して俺の手を振り払いモンスターに覆い被さる形になる。
その直後驚く事が起こった
モンスターとネムが青色の光に包まれる
するとモンスターの傷がみるみる塞がっていく。
マジかよ‥
これ見たことあるぞ
回復魔法だ。
チャチルキングダムのエフェクトそのままだ。
「ネム!
お前魔法使えたのか!?」
「ふぇ?」
ネムがすっとんきょうな声をあげながら顔をあげる。
「私‥魔法なんて‥使えない‥よ‥」
実際今使っていた。
どういう事なんだ?
完全に回復したモンスターが立ち上がりネムにすり寄っている。
どうやら攻撃性はないようだ。
一安心
ネムもモンスターに応えて「ヨシヨシ」と頭を撫でている。
「ノクティ‥この子の名前‥なにがいいかな?」
モンスターの頭を撫でながらそんな事を聞いてきた
「なあネム‥まさか連れていくつもりじゃあないよな?」
「ダメ‥?」
美少女の振り返りざまの上目遣いは凄い破壊力だ。
唇に人差し指を当てているのもポイント高い
でもダメなものはダメだ。
「残念だけど‥な‥」
あきらかにネムがしゅんとしたのがわかった。
ふと昔公園で捨て猫を拾って帰って
母親に元の場所に戻してきなさい!と怒鳴られたのを思い出す。
公園に戻しにいった時の子猫の姿がフラッシュバックする。
俺が何度も何度も振り返る度にみゃーと鳴いていた
いや泣いていた。
俺も泣いていた。
「少しだけなら‥いいんじゃないか‥」
その瞬間ネムの顔がパァっと明るくなる
「本当‥!
ノクティ‥ありがとう‥!」
この子こんなに大きな声出せるんだ
と驚くくらい大きな声だった。
「名前‥どうしようかな‥」
ニコニコしながらそんな事をぶつぶつ言っている。
「おーい!そこに誰かいるのかー?
助けてくれぇー」
森の奥の方から男の叫び声が聞こえてきた。





