初めての依頼
「ノクティ着いた‥
ここだよ‥」
ネムにもこんな一面があったのかと思うほど
グイグイ引っ張られて連れてこられたのは一見普通の民家‥だよな?
なんのためにここまで連れて来たのだろう?
皆目見当つかない
「で俺は何をすればいいんだ?」
「ちょっと待って‥」
というとネムは躊躇なく扉をノックした。
すると中から「どうぞお入り下さい」と返答があり
迷うことなくネムは扉を開けた
「ノクティ
こっち!」
言われるがままにネムに従う
扉の先には一人の白髪頭で
顎に蓄えた立派な髭も真っ白な老人がいた。
揺りかごのような椅子に座りこちらに会釈している
足が悪いのか傍らには杖が携えてある
「ノクティ‥
お願い‥おじいさんを助けてあげて‥!」
「助ける?
助けるって俺は何をしたらいいんだ?
話が全く見えてこないんだが」
「悪いモンスターをやっつけて‥!」
「悪いモンスター‥?」
要領を得ない返答に困惑していると
おじいさんが口を開いた
「君がネムちゃんが話してくれたドラゴンを討伐したという方かね?」
「そうだが‥
俺になんか用か?」
嘘に嘘を重ねるとは正にこの事
なんか胸がいたい
「腕がたつ方と見込んでお願いしたい
どうか孫を救っていただけないだろうか?」
立ち上がって深々とお辞儀をされた
やはり足が悪いのかネムが
横に走っていって支えてあげている
俺が答える前にネムが答える
「大丈夫‥ノクティは助けに行くよ‥!」
おいおい勘弁してくれ
俺が死ぬ‥
まだ死にたくない‥全て正直に洗いざらい告白しよう‥
「あの実は俺ドラゴンなんて‥」
言い終わる前におじいさんが無理やり割り込んできた。
「おおっ!助けてくれるか!」
「いやだからさぁ‥」
「大丈夫‥!ノクティにまかせて‥!」
「ありがたやぁ」
なんか勝手に話が進行している
「ちょっと待ってくれ!
俺はやるとは一言も言ってないぞ!」
「えっ‥?なんで‥?」
ネムが凄く悲しそうな目で訴えかけてくる
おいおいそういうのやめろ!
俺が悪者みたいじゃないか
「そうですかい‥勝手に盛り上がって申し訳なかったねぇ‥」
静寂が部屋を支配する‥
あーあどうすんだよこの空気
嘘をついてる俺も悪いと思うが勝手に盛り上がってたこいつらも悪い‥
ネムの方に目をやると今にも泣き出しそうだ
ったく
「‥わかったよ‥やればいいんだろ
やれば」
「本当‥?」
瞬時にネムの顔に笑顔が咲いた
現金なやつだな‥全く
「本当にありがとうございます」
おじいさんも再度深々とお辞儀をしている
もうこれで引き返せなくなっちまったな‥
「それでは事情を説明させて頂きます」