異世界の洗礼
「素材の買い取りをお願いしたいんだ」
ちょっとびびって声が上ずってしまった
「いいだろう
それでブツは?」
手を大袈裟に広げて早くここに出せと催促しているようだ。
「今ここにはないんだ
ここから半日ほど歩いたとこに小屋があるんだがそこの近くの岩場の横に転がってるんだ」
髭を左手で撫でながら男は言った
「ほほうここに持ってこれないほど巨大なブツなのか?
で‥なにを仕留めた?」
ちょっと小馬鹿にした感じの含みを持たせた言い方だ
なんかムカつく
俺が仕留めた訳でもないんだけど
「ドラゴン‥‥だ」
「んっ?何て言った」
凄いニヤニヤしている
あまりに腹立たしくて怒鳴り付けるように言ってやった。
「だからドラゴンだよ!ド・ラ・ゴ・ン!」
「ぷっ」
男は顔を紅潮させながら腹を抱え笑い始めた。
「あーっはっはっ
お前みたいなヒョロヒョロしてるもやしみたいなやつがドラゴンを仕留めただって?
笑わせないでくれよ
ギロトカゲかなんかの見間違いなんじゃないかぁ?
あっはっはっはっ」
こいつマジで腹立つな‥他の買い取り屋に行くか‥?
お金に余裕はないが
こんな所で頭を下げてまで買い取って貰いたくなんかない
「そんな態度取られるんならお前の店には売らねぇ
せいぜいあとから後悔するがいいよ!」
そう捨て台詞を吐いて店を飛び出した
「あぁ!二度と顔見せるな嘘つき野郎!」
店の入り口-ドラゴンの口-から顔を出してこちらに向かって叫んでいる
あっかんべーをしてやった
こちらこそ2度と行くもんか!
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「ちくしょー本当にムカつくな!」
あれから30分ほどたって少し落ち着こうと
町の外れを散歩していたがイライラが収まらずひとり言を気づかずに発していた。
ちょうど通りかかったおばあちゃんが
ビクッとして触れては行けないものを見るような目をして脇道にそれていった
「ふん」
なんかこの町あまり好きじゃないかも
ああ早く日本に帰りてぇな‥
「ノクティ‥」
天を仰ぎ立ち尽くしていたところ
後ろから声をかけられた
振り替えるとネムが立っていた
なにか先程までとは違う雰囲気でネムはこう言った
「ちょっと‥お願いがあるの‥
私と一緒に来て‥?」
「お願い?別にいいけどなんだ?
金ならないぞ!」
「お金じゃないよ‥!
ノクティって‥ドラゴン倒せるほど強いんだよね‥?」
なんか嫌な予感がするが‥今さら否定することなんてできない!
だから俺は背筋に薄ら寒いものを感じながら
「あぁ俺はドラゴンより強いよ」
と答える他なかった