決着
俺はすぐに目をつむり脳内に虚像を描く。
俺の思い描く本当の最強……この世界に来るまでは繰り返し毎日見ていた俺の日常。
全ての状態異常を無効化するブレスレット、どんな衝撃をも最小ダメージに防ぐ鎧、そしてどんな硬度を誇る物質であろうと両断する剣……
その虚像を、妄想を今ここに具現化する!
「来い!最強騎士ノクティ!」
激しい光が俺を包みこむ。
「猪野口ぃ!お前何をしたぁ!?」
光が晴れたその先小山の目の前にはおそらく最強騎士が立っていたんだと思う。
なぜ俺がその姿を目撃していないのか?
それは俺の妄想を俺自身の体に乗せたから。
そう俺自信が最強騎士ノクティになったからだ。
「小山、悪いがこの戦い10秒以内に終わりにさせてもらうぜ」
ひきつった表情の小山が一歩二歩と後退りをした。
残り5秒
俺はフカフカの絨毯の床を蹴ると一直線に小山に向かって飛び出し刃を突き立てた。
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その戦いはあっさりと幕を閉じた。
俺の背後には小山であったものが両断されて転がっている。
特になにかが変わってしまったような雰囲気も気配もしない。
普通ラスボスを倒したら何かしらのイベントが起こるものだと思っていたが、そんなこともないようだ。
俺は妄想を解かずに最強騎士の姿のまま元来た扉を開き階段を降りた。
そこにはマーシャとイーシャが倒れていた。
誰かにやられたという感じではない。
突然気絶して倒れてしまったという感じだ。
その先を進んで行くも白装束の奴らもみな同じように倒れていた。
町に出てみてもみな同様に倒れていた。
その光景を横目に俺はそのままの足で町を出た。
俺には目的がある。
その目的の為に俺は小山を殺した。
いずれ小山の側近達がその事実を知り仕返しに俺を殺しにやって来るだろう。
だからそれより早く俺は目的を達成する必要があるのだ。
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全ての始まりと言っても相違ない一軒の小屋。
ノエルにユニ、ヒナそしてセイラ(女神)が待つであろう小屋に俺は帰って来た。
外にユニとヒナの姿はあったが、俺の探す女神とノエルの姿はここにはない。
ノックもせずに玄関扉を開き人の気配のする右手の部屋の扉にも手を掛けて勢い良く開いた。
「お待ちしておりましたよ
ノクティいえ猪野口翔哉様」
落ち着いた口調柔らかな物腰そこに居たのは俺が探し求めている人物セイラその人。
横にノエルの姿も確認できたがそれには目もくれずセイラの正面まで歩いていくと俺は告げた。
「早速で悪いんだが俺の願いを聞いてもらうぜ
ネムを、ネムを生き返らせてくれ!」





