地下
*2
俺達は洞窟の外……ではなく奥へ奥へとすすんでいたんだ。
かなり薄暗いが簡易の松明を作ってなんとか視界の確保はできている
洞窟入口付近に転がっていた木にあの男のいらない服を巻き付けそこにギロトカゲの油を染み込ませて
「ちょっとあんた!
町を目指しているのにこんな薄暗い洞窟を奥に進んでどうするつもりよ!
なにか企んでいるんじゃないでしょうね?!」
不安げに女が口を開く
松明を持つ手が震えてるぜ
「ふっそれは着いたらのお楽しみだ
どうした姉ちゃんびっびっちゃってんのか?」
「はあ!?
私がびびるわけないでしょ!
さあ行くわよ!」
ふっ操作するのが簡単で助かるぜ
しかし不安な人物はもう一人いるようだな
こっちの人物は適当に扱う事は許されない
「あの…どこに向かっているの…?
そろそろ…教えて…くれないかな…?
ノエルちゃんも…不安そうだから…ね?」
小首を傾げながら可愛らしくそう問うてきた。
そんなに可愛く姐さんに聞かれちゃあ答えないわけにはいかないな
「姐さんにはかないやせんね
良いでしょう!この先に何があるのかお答えしやす!」
姐さんは両手を胸の前で握りこみながらうんうんと二度頷く。
「この先は……
この先には……
フロストバーンがあるんです!」
はあと低い声で女が唸ると俺と姐さんの間に体を滑り込ませてきて凄んできたんだ。
全然怖くねえけどな!
「あんたそれ本気で言ってるの?
馬鹿じゃないの!?こんなところに町があるわけないでしょ!
少しずつ下っているのよ!?
地下よ地下!
地底人でもないのにこんな所に町があるはずないでしょ!?」
「あぁ!?誰が馬鹿だって!?
もういっぺん言ってみろこのアマァ!」
一歩女の方に歩み寄る
気の強い女は一歩も引かない
「あんたの事よ!
馬鹿に馬鹿っていって何が悪いの?
頭を振ったらカラカラと鳴りそうなくらい空っぽそうじゃない!」
このくそアマ!
反射的に思わず右手を振り上げる
気の強いこの女はそれでも一歩も引かないどころか目を瞑る事もしない。
「やめて…お願い…
ノエルちゃんも…」
身をていして姐さんが俺の右手をを押さえる用にしてきたんだ。
一瞬でクールダウンしたね。
「しかし姐さん……
この女……」
「ごめんなさい…
今のは…ノエルちゃんが悪いよ…謝って…」
「嫌だ絶対に謝らない!」
「ノエルちゃん…!」
「はあわかったわよ……
私が悪うござんした」
頭を下げる事もしない謝罪
腹立たしいが姐さんの顔を立ててここはぐっと堪えてやるとしよう。
「ふんっ!」
「よーし…これで仲直り…へへへ…」
姐さんが気まづそうに俺と女の顔を交互に見ている
「それで…この先に町があるって言ってたのは…本当なの…?」
まだ腹の虫は収まらないが姐さんにはそんな態度を取るわけにはいかないな
「……本当なんすよ!
この地方はこの時期になると何メートルも雪が降り積もるんです
そんなところで地上に建物を建てるとどうなると思います?」
姐さんは右手の人差し指をくるくると空中で回しながら
「うーん…家に入れなくなっちゃう…とか…?」
「まあそれも正解なんでやすが……
雪って結構重いんです
それで建物が潰れてしまうこともあるみたいで
だから潰されないように地下に町を築いたんです」
実際俺も行った事があるわけではないがな……
「へぇーそうだったとしてあんたはその情報どこで得たのよ?」
この女はなぜこんなに喧嘩腰なのだろう?
その言葉を受けて姐さんも俺の方に疑問の眼差しを向けてきた
はあ……話すしかないか……
「実はですね
フロストバーンには……」