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旭日の右腕  作者: 文覇
3/6

軽空母 隼鷹

「沢村さん!どうしてこんな計らいを?」

聖沢と名乗る彼は聞いた

「君と少し対話したくてな、野球倶楽部に召集される者がどんな人間かを知りたいのだ」

「なるほど!」

俺はしばらく自室で聖沢について質問した

彼は仙台の出身で東北大学野球部に行っていたらしい 勉強で入学した身であるからかなりの秀才である ちなみに私は京都商業なので彼には頭が上がらない

帝国大学にこんな野球できる人がいるのかといささか感心し私は質問を続けた

彼の年齢は19 文系学生召集で召集されたようだ 勿論未婚で戦地に赴いているが恋人は居たようだ

彼は日本では大阪タイガースに入団していたらしいが俺が対戦した記憶はない

彼はポジションは外野手と言ったが納得した 外野手から投手に転向するものは多い、外野手の強肩が投手になった時に活きるからだ

俺も尋常小学校の時は外野手をしていたが打率が上がらず不振であったため監督から投手に転向する事を勧められ、仕方なく転向したが 投手に転向して良かったと思っている

俺の持ち玉 フォークがバッターにとっては打ちずらいらしく バッタバッタと三振を量産するのが心地よかった 何たって俺はあのベーブルースから三振を奪ったんだぞ!

「沢村さんは東京ジャイアンツで先発をされていましたよね!あのベーブルースから三振を奪ったとか…」

ほら来た、俺はすかさず同意に入る

「そうだぞ!俺はベーブルースから三振を奪った!次の戦いでも必ず鬼畜米英から三振を量産してやる!」

「さすがです!」

その日は高雄港で買った紹興酒を聖沢君と朝まで飲み明かし互いの船室に戻りそのまま寝た


翌日は朝10時に起きた

「あー 頭痛ぇなぁ… 酒のみすぎたかな…」

俺は顔を洗って歯を磨き政府から支給されたトレーニングウェアに着替えた

島風ではひらけた広い甲板がなかったが隼鷹には飛行甲板があり いまは飛行機が搭載されていないので広々と練習を行うことが出来る

海軍の上層部による“粋な計らい”である

俺は飛行甲板に設けられた特設の壁に向かってピッチングを始めた

既に聖沢君がピッチング練習をしている隣で中尾君と川上君がトスバッティングをしていた

私はスタッフに頼んで捕手を呼んでもらった

来たのは大橋君だった 彼は下関商業出身で東京巨人軍のチームメイトだ よくバッテリーを組んでいた

彼に言う

「やぁ!久し振りだな!大橋君も大変だったろう」

「いやぁ本当に大変だった、これからは野球に勤しめるし本当に良かった」

「だよなぁ!」

俺たちはしばらく調子を回復するべく投げ込み、感覚を取り戻してきた

船は今 沖縄東沖を航行しているらしい だんだんと本土が近づいて来ているのを感じた

俺は船の中で独自のタイムスケジュールを組んだ

朝起きて飛行甲板で練習 昼飯後に甲板で筋トレをして走り込み 夕食後は他の者と話し寝る この生活はかなり幸せであった

そして佐世保が近づき、九州が見えて来始めた日の昼食時 上官から声をかけられた

「戦傷や病気にはかかってないか?」

「かかってないです。」

「ふむ、なら大丈夫だな、何か質問はあるか?」

俺は前から思っていた事を聞いた

「島風は何故 敵がうようよいるフィリピン海域周辺を航行していても攻撃されなかったのですか?」

上官は驚いた顔をして

「何?そんなことも知らんのか?各国の選手団の乗る船は申告をしていれば攻撃されないんだぞ?」

「そうなんですか!」

「そうだ、しかもこれは良い制度でな フィリピンから兵を脱出させる時に選手団だと申告すれば安全に運び出せるんだ、その制度をソ連はもっと利用しているぞ?世界野球連盟ではソ連から出ている船やソ連に来る船はみんな選手団が乗っているとのことだ」

「そんな!まずいですよ!」

「まぁ制度も使いようだ」

俺は衝撃の事実を知ったが、それまでに心配していた事が無意味だったと気がつきどっと疲れが出た

「今日はもう休もう」

昼過ぎにも関わらず俺はベットに横になった


軽空母隼鷹は商船改造型空母として実在している軍艦です かなり大きく終戦まで残っていた数少ない軍艦でもあります

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