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世紀末救世主になれないおっさんは目が死んでる  作者: 海光蛸八
五章 ジャンクタウン
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地図

「この辺の地理情報はすぐ見れる」


 そう言ってタクヤは机の裏側に回りこむと、コードに繋がったプラグのようなものを取り出した。それをマザーの背中に差し込む。すると、マザーは首をかくんとうなだれさせ、動かなくなった。マコトが心配して近寄ろうとすると、大型モニターいっぱいにマザーの気だるげな顔が映し出された。


 なんともシュールで間の抜けた絵づらだった。


「地理情報にアクセスしてくれ」

「了解」

「音声で検索できんのもマザーのいいところだな」


 タクヤが得意げに笑うと、モニターに地図が表示された。だが、すぐに消えてしまった。


「なんだどうした」

「……お腹すいた」

「おい、今かよ」

「ごはんちょうだい」


 タクヤは大げさな動作で立ち上がると、近くのキャビネットを開いた。そこからピンク色のクリームが入った瓶を取り出した。譲治たちが一緒に行動している時に採取していたものだ。タクヤはマザーが映っているモニターの下に行くと、機械のふたを開けてその瓶を差し込んだ。


「改めて聞くが何なんだそれは」

「マザーのご飯さ。これなしでもマザーは死にやしないが……機嫌が悪くなる。ま、例によってよくは知らん!」


 何故か得意げにタクヤが言うと同時に、モニターにもう一度地図が表示された。広範囲に表示されたものから、徐々に拡大していく。モニターの端に映っているマザーがスピーカーを通して喋る。


「ここから徒歩でいけるのは……72、99」


 それだけ言うと、モニターは元の待機画面に戻り、再びアンドロイドのマザーが動き出した。大きく伸びをしてからマザーは立ち上がり、マコトに歩み寄る「手、出して」と言われて、マコトはあわあわとしながら左手を差し出した。

 マザーはその手を軽く握り、すぐに手を離した。譲治とマコトが手袋のモニター画面を覗いてみると、周辺地域の詳細な地図が映し出された。譲治は思わず感嘆の声を上げた。


「そんなことも……」

「すごいね! マザーちゃん!」


 幾分か得意げな顔で胸を張るマザーは、ただの機械には見えなかった。


「この二つなら、簡単なハッキングで扉を開けられるはずだ」

「ハッキングプログラム、マコトのグローブにインストール済み」


 マコトが画面をタッチして動かすと、メニュー画面にハッキングと名前がついたアイコンが表示されていた。マコトが地図に画面を戻し、現在地表示から広域表示に切り替える。ピンのようなマークが表示され、それぞれに数字がふられた。


「どっちも何日か歩けば行ける距離だな」

「でも、99。お勧めしない」

「え、どうして?」

「ここは『夜獣』の根城になってるって話をよく聞くからな」

「よじゅう?」


 マコトが持ち前の質問癖で口を開くと、タクヤは真剣な表情になった。


「この辺りに生息している怪物だよ」

「肌が赤黒い。それに、俊敏性も段違い。とっても危険」

「凶暴で肉食だしな。太陽に弱いんだか、昼間は現れないって話だ」

「譲治さん、もしかして……」


 マコトが視線を向けると、譲治は野盗と一緒に見たあの怪物のことを思い出した。あの廃墟で遭遇した化け物が『夜獣』なのだろうか。


「警備ロボットを護衛につけられればいいんだけどな……」

「私の指令電波の有効範囲。この壁の中で精いっぱい……」


 申し訳なさそうにする二人に、譲治とマコトは首を振った。


「情報だけで十分だ」

「そうだよ。マザーちゃんありがとう」

「ついて行きたいんだが。でも色々とやることあってな」

「代わりに、お金」


 マザーがくいと指を動かすと、天井からアームが伸びてきて、譲治に袋を手渡した。予想外に重量があったので、譲治は取り落してしまった。中には入っていたのは百枚近い五〇〇円硬貨で、いくつか床に散らばってしまった。


「うわ、すごい!」

「いいのか、こんなに」


 譲治は硬貨を拾いながら二人に向かって言った。


「もちろん。二人は友達」

「あれ……それって俺のへそくり……」

「タクヤ、武器持ってきて」


 顔を引きつらせながら言うタクヤに、マザーは命令口調で言った。


「な、なんだよ。人格を適当に入れたって言ったこと怒ってんてんのか!」

「タクヤ」

「なんだよ」

「武器、早く」

「はい」


 マザーが冷ややかな口調で言うと、タクヤは早口で言って奥に引っ込んでいった。しばらくすると、いくつかの鉄の塊を抱えて戻ってきた。


「レーザーライフルだ。この間新しいの買ったから古いのを……」

「新しいほう、持って行って」

「はい、新しいほう持っていってください」


 譲治は苦笑しながらマザーに差し出されたレーザーライフル受け取った。

少しいじくり、構えてみるが、譲治は渋い表情になった。


「レーザー銃か……」

「使ったことないのか?」

「いや、何度かは。だが、どうにも慣れなくてな」


 譲治はふっとマコトに視線をやった。相も変わらず興味津々と行った様子でレーザーライフルを眺めている。譲治の視線に気が付き、マコトは首をかしげた。


「マコト、使えるか?」

「わ、私ですか?」

「大丈夫、説明書ある」


 マコトはあまり乗り気ではない様子だったが、マザーとタクヤが好意で差し出してくれたものを無下断ることもできず、レーザーライフルを受け取った。


「構えてみろ」


 譲治に言われたとおりにマコトはライフルを構える。少し危なっかしいが、なんとか扱えそうではある。やはりナイフだけより安心感はある。今度は壊さなければいいが。


「よし、じゃあ引き金を……あ、その前に安全装置を――」


 譲治が言い終わる前にマコトは引き金を引いてしまった。ズビュンと言う音と共に赤いレーザーが射出された。レーザーは壁に埋め込まれたコンピュータのひとつに直撃し、表面を焦がした。


「うわあ!」

「おい、大丈夫なのか!」

「レーザープロテクトはしてるはずだけど……どうだ、マザー」

「……繧ィ繝、♯ゥ後ヰ」

「なんて言ってるかわからんぞ……」

「うわあああ! ごめんマザーちゃん!」

「繧ォЯ縺……縺溘、峙$励ェ諢」

「あー、こんくらいなら問題ない……けど、これ以上壊す前に場所だけ変えようか……」

「すまない……」


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