到着
「こっちです!」
「ちょっと待ってくれ」
二人は大きな自然公園を進んでいた。公園と言っても当然整備はされておらず、中心にある池は干上がりクレーターのようになってしまっている。雑草も伸び放題で、時折毒々しい色をした虫が雑草の穂先から穂先へと飛んでいく。
そんな荒れ果てた公園の跡地を二人は進んでいた。シェルターが近いこともあってかマコトは上機嫌だった。譲治はというと、こちらもまんざらでもない様子だ。ようやくシェルターの安全な生活が手に入るのだから無理もない。
「もうすぐ着きますよ!」
雑草を踏み越え羽虫を手で払い進んで行くと、地面がコンクリート製になった区画があった。そこには、大文字のSとTのアルファベットが重なり合ったようなロゴが刻まれたマンホールがあった。
大手シェルター会社、ST社のロゴマークだ。日本のシェルターのほとんどをこの会社が建造しており、業績はかなりの水準であった。譲治もそこにエンジニアとして勤めていたが、今となっては業績だ何だということは何の意味も持たない。ただ、浮浪者にとっての憧れの場所というだけだ。
マコトがしゃがみこみロゴの入ったマンホールを外すと、冷えて湿った空気が漏れ出す。
いよいよか、と譲治は思った。これで安全なシェルターでの生活が手に入る。しかし、まだ決まったわけではない。中にいる管理官とやらの許可がなければ住むことはできないし、そもそも譲治が手に負えないような壊れ方だとしたらどうしようもない。譲治はうまくいくように祈るばかりだった。
「行きましょう」
マコトは鉄製のはしごに足をかけ下に降りていった。譲治もその後に続く。はしごの表面が錆びついていたが、壊れることはなさそうだった。梯子を下りていく金属音が二人分重なり、やがてひとつになり、そして止まった。
二人が下まで降りると、コンクリート製の回廊のようなものが奥へと続いていた。壁の取り付けられたオレンジ色の照明に照らされ、いくつもの骸骨が床に転がっているのが見えた。奥に進むにつれ、骸骨の数は増えていく。
「酷いな……」
「私も初めて見たときはびっくりしました」
そこかしこに、何かが書かれたカードが落ちている。その内容は、入居を懇願する言葉や、安全な場所に住むシェルター住民へ向けた罵詈雑言。シェルターに入れろと抗議していて、そのまま何らかの原因で死んだ者たちの骨だった。
骸骨をまたぎ、飛び越え、突き当りまで行くと、十メートルはあろう巨大で重厚な鋼鉄の扉があった。その扉には大きく『37』と打ち出されていて、鋼鉄製のかんぬきのようなものが左右上下から扉をふさいでいる。扉の上部には、大砲と見紛うばかりの大型のレーザー銃が不気味にこちらを見下ろしている。床にある灰の山はこの銃の犠牲者たちだろう。風に飛ばされず、まだ山になっているところをみると、最近できたもののようだ。
管理官の指示で行われたのだろうか。管理官という人物はずいぶん冷淡な者のように思える。外の連中を受け入れないならまだしも、レーザーで焼き殺してしまうとは。マコトが帰ってくることを考えれば、危険な連中を排除しておくというのは、理にかなったことではあるが。
マコトは巨大な扉の横に進み、台座に固定されたノートパソコンのような物に手をかざした。
「マコトです。修理できる人を連れてきました!」




