タクヤとマザー
男と少女を二人乗せたオフロード車がゆっくりと道を進んでいる。車輪が何かに乗り上げ、がくんと車体が揺れると同時に、けたたましい叫び声が響いた。草むらから男が三人飛び出し、あっという間に囲まれてしまった。
タクヤは少しもあせる様子もなく、へらへらと笑いながら運転席から外に出た。マザーは後部座席から運転席によじ登り、わざわざ運転席のドアから外に出てた。
「あの~通してほしいんですけど」
タクヤの言葉に男たちは訳の分からない叫びを返すだけだった。よくよくみれば道のわきには数人の真新しい死体が見えた。この男たちが殺したのだろう。
「あ~マザー?」
「なに?」
「やっちゃってください」
タクヤの言葉と同時に、彼の目の前にいた男の首が飛んだ。マザーの右手からは彼女の身長ほどはあろうかという刃がのびていた。呆気に取られている男のうち一人の顔面にマザーが視線を向けると、その瞳から赤く太いレーザーが放たれ、二人の男は悲鳴を上げる間もなく炭化した。
「あ~あ、これじゃ採取できないじゃん」
「ごめん」
タクヤは吹き飛ばされた首と、道のわきに転がっていた死体に針を刺した。そうしてクリーム色の液体を採取すると、ひとつだけ残してハードケースにしまった。
「補充しとく?」
「そうする」
マザーがそう言って上着をたくし上げると、ガチャガチャと機械音を立てて彼女の腹部が開いた。内蔵の代わりに複雑な機械類が入っているのが見える。卓也は驚きもせずに腹部の中心にあった蓋のようなものを開け、ピンク色のクリームが入った瓶をはめ込んだ。見る見るうちに液体はマザーの体に飲み込まれていった。
「よし、腹いっぱいか?」
「うん、まんぷく」
「それじゃあ行きますか」
二人は――男とロボットは車に乗り込むと、ゆっくり西へと進んで行った。




