表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世紀末救世主になれないおっさんは目が死んでる  作者: 海光蛸八
二章 凍てつく視線
21/73


 半壊した部屋の入り口までライトを消して近づき、入ると同時に点灯させ、隅々まで確認する。それを繰り返しひとつひとつの部屋を注意深く見て回る。点灯と消灯を繰り返すライトのせいで、余計に緊張が高まる。


 階段の脇の部屋にスプレーで書かれた落書きがあった。女の裸体に牛の頭を取り付けたような絵。悪趣味だ。ゴキブリに襲われた衝撃で、落書きのチェックを忘れていた。譲治は歯ぎしりして自分を戒めた。


 落書きがあるということは、徒党を組んでいる野盗がいるということだ。もしかしたらマコトは奴らに――。湧き上がる悪い予感を振り払うように、譲治は顔を振った。気を取り直して残りの部屋を先ほどと同じように見て回るが、誰もいなかった。だとしたらマコトは二階にいるのだろうか。


 物音を立てないように細心の注意を払い、二階へ上る。叩き付けるような雨音、バクバクと暴れる心音、勝手に荒ぐ呼吸音。雷の光が一瞬建物を照らし、少し間を空けて雷鳴がとどろく。階段を登りきると、右側から火の光に照らされ、おぼろに揺れる瓦礫の影が見えた。


 ライトを消し、火の光へと進む。

 雨音はますます強くなる。


 部屋に入ると同時に鼻をつく血の匂い。足元に死体。赤髪の女。マコトではない。女の叫び声。右側から聞こえた。右を向く。鉈を持った女。銃を撃つ。弾は女の肩に当たったが、その勢いは止まらない。振りかぶられた鉈をとっさに左腕で防ぐ。一瞬の鋭い痛み。鉈は骨で止まった。


 しかし、女の勢いは止まらず、鉈を譲治の腕に突き立てたまま押し倒そうと譲治に迫る。足元の空き缶や木くずを蹴散らしながら、譲治を壁に押し付けやっと止まった。興奮から痛みは感じなかったが、背中をぶつけたせいで息が詰まる。


「うああああ!」


 突然響き渡った幼い叫び声。その直後に女がうめき声をあげた。鉈から手を離しうずくまる女。ハッとして上げたその顔。譲治はその眉間の真ん中に銃口を向ける。響く発砲音。飛び散る血。倒れる女。広がる血だまり。


 銃を腰に差し、腕の鉈を引き抜く。


 再び声。今度は半裸の男。今度は譲治の方から駆け寄り、脳天めがけて手にした鉈を振り下ろす。興奮と焦りから狙いがずれて鉈は肩にめり込んだ。男は絶叫を上げて膝をつく。男の肩から鉈を引き抜き、すぐさま男の喉を切り裂く。ひゅうという大きな音が切り裂かれた喉からもれ出し、血しぶきは天井まで吹き上がった。男は膝をついたままの姿勢で動かなくなった。譲治は顔についた返り血をぬぐい取る。


 駆け寄ってくる影。

 銃を抜き、そちらに向ける。


「譲治さん!」


 マコトだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ