幼女
『100』という数字と店の景観を見た蜜柑は一気に意気消沈。
そんな蜜柑を他所にリリスは「キビキビ」入店する。
やる気を根こそぎ持っていかれた蜜柑は「ダラダラ」リリスの後を付いて店に入る。
店に入るなりリリスが。
「ねぇーヘパイスいる?!おーい、ヘパイス!おーい!!」
店内を回り誰かを探している様であった。
店に入り並べられている水色弁当箱の様な商品を手に取り「はぁ~」と深いため息を吐く蜜柑。
--どう見ても弁当箱にしか見えないな・・・・
弁当箱様な箱の蓋を開ける中を見る蜜柑。
「・・・・」
中を確認して直に蓋を閉める蜜柑。
蜜柑の顔は蒼白し額からの汗が止まらない。
--か、勘違いだよね・・・
もう一度蓋を開け覗き込む蜜柑。
しかし・・・
最初と変わらず・・・
その弁当箱の箱には・・・
ドクドクと動く臓器が納められていた。
再び勢いよく蓋を閉める蜜柑。
背筋が凍り付き、汗を噴き出し、歯を「ガタガタ」させる。
--あ、あり得ないんだけど・・・ビクックリ箱?!・ドッキリテレビ?!
恐怖で足も同じくガタガタと小刻みに震える。
そんな蜜柑に・・・
「ワァッ!!!」
「ぎゃぁぁぁーーーーー!!!」
背後から蜜柑を驚かす声、もちろんヘタレな蜜柑は両手を大きく挙げて、気持ちいいぐらい跳ね上がる。
手に持つ弁当箱は宙に舞い幾度なく回転を経て床に落下。
蜜柑の悲鳴を聞いて、蜜柑の元に駆け寄るリリス。
「み、蜜柑大丈夫?!」
「リ、リリスちゃ〜〜ん!僕を一人にしないでよ〜〜」
性別逆転、男を見せるリリスは腕を広げ蜜柑の前に立つ。
蜜柑は女座りでリリスの背後で震える。
周囲を切れる目で確認するリリス。
10程陳列されているお面の中に、リリスの記憶に残る顔がある。
リリスは腕を組み、お面に「カツカツ」近づき、足を上げ、ヒールの踵で一つの面を突き刺す。
「こんな何処に居たんだね、ヘパイス!!!」
笑みを浮かべるものの青筋が「クッキリ」見えるリリス。
ヒールを突き刺したお面から流れる赤い液体。
「や、やぁ~リリス・・・ひ、非常に痛いのだが・・・こ、これはご褒美なのかな?」
喋るお面。
リリスは気にする事なく、お面に刺さるヒールを左右に舵を切る。
「そうよ、これはご褒美!快く受け入れなさい!ヘパイス!」
不気味に微笑むリリス。
それを見た蜜柑は更に震える。
そんな時・・・
地面に落下した弁当箱から音がする。
「シューーーーー」
それを耳で捉えたお面。
リリスの踵が突き刺さったまま、お面が頭を掻き声を漏らす。
「ありゃ、簡易パンドラの箱が・・・これはエライ事になった・・・」
弁当箱の蓋は空いており地面の床に転がる中身。
中身の物が湯気を上げ周りの気体を吸い込む。
踵をお面から引き抜き弁当箱の方に身体を向けるリリス。
「な、何これ?!!」
身構えるリリス。
直感でこれは危険と判断したリリス。その頬に汗が伝う。
湯気を上げで徐々に形取る弁当箱の中身。
「あわわわわ、お助けを~~~」
蜜柑は皆を捨て、震える身体で少しづつ出口に向かう薄情者。
気体を吸い込み。弁当箱の中身は生きる為に必要な他の臓器を作製し、脳、神経、血管、筋肉、目等が形になる。
最後に皮・毛・服を作りそれは姿を現わせる。
それは・・・
ゴシックドレスを着る幼女であった。
その姿形は蜜柑、リリスはよく知っている幼女であった。
「な、何で?・・・」
思わず口にするリリス。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ」
言葉が出ない蜜柑。
幼女は目を開け周りを見渡し、その目に蜜柑を捉える。
口を吊り上げ笑みを浮かべる幼女はひと蹴りでリリスを横を通り過ぎる。
狙うは蜜柑ただ一人だけ。
蜜柑の前に立ち塞がる幼女。
「なっ!!!」
リリスは不覚を取る。確かに油断していたのは事実だった。
しかしリリス程の手練れが油断していたとしても、一歩も動く事を許さず、大切な者の前に立ち塞がる事を許した。
そう・・・
相手の幼女も手練れ、自分と同等程の力を持つ手練れであった。
--蜜柑が危ない!
死にはしないが、それでも傷付くのは見たく無い。
直ぐに行動に移そうとするリリス。
しかし・・・
幼女は直ぐに次の行動に移していた。
愛する蜜柑の襟を掴み・・・
手を頭に回し・・・
そして・・・・・・
蜜柑と幼女は・・・
キスをした・・・
茫然と佇むリリス。
膝が地に落ち、目の前の光景をただ見つめるだけ。
暫く続くその光景。
ゆっくり目を開ける幼女。
幼女は蜜柑と唇を交わしたまま、リリスを目で捉え、見つめ、目を細くして、勝ち誇った顔をする。
幼女と目と目が合い。
歯を食いしばり、眉間にシワを寄せ、目を見開くリリス。
「我が眠りし力目覚めよ・・・」
呟き、義体解放、本気のリリス。
「ブツブツ」呟き、両手を幼女と蜜柑に向け、言い放つ。
「死に晒せぇぇーーー!!!地獄豪炎!!!」
放たれる豪炎。
しかし幼女も直ぐに行動に移す。
蜜柑と豪炎の間に身体を移し、両手を床に付け言葉を発する。
「愛する人は私が守ります!!!灼熱巨壁!!!」
床から競り出す炎の塊。
豪炎と灼熱の炎のぶつかり合い。
酸素を失い燃焼物を失った豪炎は、生きる糧を求める様に天へと軌道を移す。
店の屋根を溶かし燃え上がる豪炎。
徐々に勢いを失い鎮火する2つの炎。
リリスと幼女は睨み合う。
そんな2人の戦いを静止させる為に蜜柑が2人の間に身体を滑り込ませ、言葉を掛ける。
「や、やめてよ!2人共」
「どきなさいよ!蜜柑!ソイツは私が殺す!!!」
「おどきなさい!蜜柑!アイツは私が屠ります!!!」
一歩も引かない2人。
拳に手を添え「ボキボキ」鳴らすリリス。
舌で下唇に添い舐める少女。
「駄目だよ!お願い!やめてよ2人共!!!」
目を瞑り、最後に懇願する蜜柑。
「「無理!!!」」
声を揃えて蜜柑の願い入れを拒否するリリスと幼女。
蜜柑は顔を伏せ、「ポタポタ」涙を垂らす。
「お願い・・・やめてよ・・・リリスちゃん・・・」
それを見たリリスは幼女の前に立つ蜜柑に顔を背ける。
「お願い・・・」
「やめてよ・・・」
蜜柑は顔を上げ悲痛な顔を晒し・・・
幼女の方に振り向き幼女の名前を言葉する。
「赤坂理夢ちゃん・・・」
少女の姿形は死別した時の、そのままの『赤坂理夢』であった。




