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楽園 『ミッドガルド』

ブックマークありがとうございます。

ポイントありがとうございます。


皆さまの貴重な時間を割いて頂きホントにありがとうございます。

 雲は一つも無い。遥か遠くに色褪せた巨大な木が見え、周りは山々が連なり雪と氷の白銀の世界であった。


 今いる位置は山頂より500m程の上空。

 山頂の一角噴火口から出てきたのだが・・・その噴火口の底は赤く活火山である事が分かった。


 「えっ?何で?!!」


 底に何があるのか知っている蜜柑みかんの当然の疑問であった。


 「うふふふふ、幻覚よ!げ・ん・か・く」


 「幻覚?!」


 「そう幻覚、こうしないとね、偶に竜が紛れ込んだりするのよ!賢いんだか?馬鹿なんだか?・・・それに目印にもなるしね!」


 「竜なんているの?!」


 「うんいるよ、ホラあそこ」


 蜜柑みかんは下から上に顔を動かすと心躍る光景がそこにあった。氷に覆われた竜の大群が1Km程上空を巨大な氷の翼を羽ばたかせ優雅に飛行していた。


 「地上には巨人もいるわよ」


 蜜柑みかんは地上に目を移す。

 地上には50mはあろう人間と酷似した氷の塊が巨大な足を交互に動かし歩行する。


 釘付けの蜜柑みかん

 そんな蜜柑みかんの顔の横を氷の結晶で出来た鱗粉を振り落とし飛行する虫が横切る。

 その虫の動きに合わせ視線を送る蜜柑みかん、自然と目が輝き、ゆっくり口が吊り上がる。



 リリスが巨木を指差し言葉を掛ける。


 「そして、あれはね世界樹って木なの、そして今居る場所が『ニブルヘイム』よ」


 「・・・あれ?楽園エデンじゃ~ないの?」


 「楽園エデンは8つの大陸と1つの惑星を差す場所なの、世界樹がある『ユグドラシル』、人型の大陸『ミッドランド』、巨人・幻獣の大陸『ヨツンヘイム』、火の大陸『ムスペルヘイム』、小人の大陸『ニダヴェリール』、光の大陸『アールヴヘイム』、闇の大陸『スヴァルトアールヴヘイム』、そしてここが氷の大陸『ニブルヘイム』」



 リリスが天に指差す。

 リリスが指差す方向に目を向ける蜜柑みかん


 「そしてあれが、神々が住む惑星『アスガルド』よ」


 天には空の1/4を覆い隠す、掠れた惑星が見える。

 蜜柑みかん目が見開き瞳が肥大し言葉が洩れる。


 「す、凄い!」


 それ以上言葉が出ない蜜柑みかん、それを聞いたリリスは笑みを作る。



 「取り敢えずの目的は・・・蜜柑みかんの武器の調達ね。向かう先は『ミッドランド』。私転移魔法使えないし・・・ここからなら・・・30分もあれば行けると思うわ」


 「う、うん」


 「そこまで私の翼もたないから、移動手段変えるね。--眷族召喚『羽毛ある蛇ケツァルコアトル』」


 リリスは言葉と同時に容姿を元の姿に戻す。

 炎翼の飛行能力を失い。もちろん重力に従う蜜柑みかんとリリス。


 「ちょっ、リ、リリスちゃぁぁーーーーーーんんん!!!」


 「うふふふふ」


 悶絶の蜜柑みかん、反するリリスは満面な笑顔。


 2人に近寄る巨大な影。

 それを見た蜜柑みかんは再び絶叫を上げる。


 「ぎゃぁぁーーーーーー!!!助けてぇぇぇーーーー!!!リリスちゃぁぁーーーん!!!笑ってないでぇ!どうにかしてよぉぉぉーーーー!!!」


 5分持たず「僕がリリスを守る」前言撤回。

 

 「うふふふふ、大丈夫よ蜜柑みかん


 命を刈り取る悪魔にしか見えないリリスの笑顔。


 影の正体それは・・・全長30mはある。柔かい蒼のライオンの様なたてがみと白い2つの巨大な翼を持つ、カラフルな珊瑚礁を連想させる色の大蛇であった。

 大蛇は巨大な体を畝ねらせ2人をすくい上げる様に下から上に上昇する。

 大蛇の背中に跨る蜜柑みかんとリリス。その背中は爬虫類には存在しない羽毛で覆われ「モフモフ」して好感触。


 「なっ!何これ?あり得ないよ!「モフモフ」過ぎるよ!」


 羽毛を頬で「スリスリ」一難去って気持ちが緩む蜜柑みかん


 「って!違う!それどころじゃーないよ!拉致られる!ウチ貧乏なのにぃぃーーー!リリスちゃんどうしょう?身代金は折半でもいい?出世払いでもいい?・・・お金、稼がなくちゃね・・・でも、遠洋漁業は無理だよ!接客も無理!単純作業も出来ないよ僕、4時間労働、年商1000万の仕事探すから、もちろん残業無し、福利厚生充実、それ迄待ってくれる???僕頑張るからぁぁーーー!!!・・・続く」


 「う、うん、頑張って・・・」


 蜜柑みかんを色々な意味で不憫に思い涙ぐむリリス。


 暫く様子を見て落ち着くのを待っていたリリスだったのだが、蜜柑みかんの暴走は増すばかり、見兼ねたリリスが一発殴って言葉を掛ける。


 「い、痛いよリリスちゃん・・・」


 「はぁ~蜜柑みかん、これが私の眷族の『羽毛ある蛇ケツァルコアトル』よ」


 「えっ!これが眷族!!!・・・す、凄いよ!リリスちゃん眷族ってこんなに「モフモフ」してるんだね!」


 「う、うん・・・そうだね」


 もう「いいや」と面倒になるリリス。



 暫く目的地に向かい飛行すると興奮状態が徐々に収まり、吐く息が白い事に気が付いた。

 冷たい風の影響で体温が奪われ鳥肌が立つ、蜜柑みかんはローブを纏いまだいいが、リリスに至っては際どいレオタード一枚姿。


 横目で後ろを確認する蜜柑みかん

 平然な表情をしているリリスであったが蜜柑みかんはローブを脱ぎ、リリスの前に差し出した。


 「リリスちゃん、これどうぞ」


 一瞬呆気に取られるリリス、直ぐに笑みを浮かべて言葉を返す。


 「ありがとう」


 リリスはそれを受け取り自分の身体に羽織る。

 そして蜜柑みかんの腰に手を回し、背中に頬を付け、目を瞑る。


 蜜柑みかんの身体は高揚し熱を帯びる。


 2人の目的地の『ミッドランド』迄の道のりは、その後暫く沈黙ではあったが、こうして2人は再び会えた喜びを肌で感じ合うのであった。


 ・

 ・

 ・

 ・

 地平線に青い海が見えて来た。『ニブルヘイム』大陸の端であろう。

 それを確認したリリスが立ち上がる。


 「蜜柑みかんありがとう」


 羽織っていたローブを蜜柑みかんに返すリリス。


 「ん?もういいの?」


 「うん、こっからは一気に行くからね!」


 蜜柑みかんがローブを纏うのを確認すると、リリスは言葉を発する。


 「我が内なる力目覚めよ」


 リリスの義体が姿を現せる。

 蜜柑みかんを先程と同じ様に両脇に両手を回す。


 「え?・・・まさか・・・またアレやるの?・・・」


 顔を引き攣らせリリスの顔を横目で見る。


 「うん」


 と凄く、メチャクチャ、ウルトラ、ハイパー、オメガ級に可愛い笑顔で肯定するリリス。

 しかし、リリスのその笑顔は蜜柑みかんにとっては只の恐怖でしかなかった。


 リリスは『羽毛ある蛇ケツァルコアトル』の背中を軽く蹴り宙に舞う2人。


 「ありがとう『羽毛ある蛇ケツァルコアトル』。またよろしくね」


 前方を飛ぶ『羽毛ある蛇ケツァルコアトル』に言葉を掛け、炎翼を勢いよく羽ばたかせるリリス。


 徐々にスピードを上げるリリス。蜜柑みかんの顔の皮が後ろに伸びる。

 更ににスピードを上げるリリス。蜜柑みかんの顔の皮が更に後ろに伸びる。

 更に更にスピードを上げるリリス。蜜柑みかんの顔の皮が更に更に後ろに伸びる。


 --駄目だーーー又チヌーーーーー!!!


 蜜柑みかんの顔は一切原型を留める事無く猛スピードで目的地の『ミッドガルド』へ到着したのであった。




 --人型の大陸『ミッドガルド』



 その大陸を見た蜜柑みかんは肩を落とし「ガックシ」している。

 それもその筈、その大陸はファンタジー感を大いに損なう光景であったからだ。


 人型の大陸『ミッドガルド』


 それは・・・



 近未来的な大陸であった。



 車・バス・飛行機・電車等の交通機関は無いものの、建物はコンクリートもしくは鉄筋。

 高層ビルが立ち並び、長方形の画面から飛び出す画像。

 道も綺麗に舗装されており石一つ転がっていない。


 「・・・何これ?ぶち壊し感半端ないんですけど・・・」


 つい言葉が漏れる蜜柑みかん


 唯一の救いは其処で生活する人々の格好と種類であった。

 煌びやかなフルプレートの鎧と剣を携える人、全身黒いローブとスタッフを持つ人、リリスの様に際どい服を着る人等が空と地上を徘徊しており、人の型ではあるが爬虫類・昆虫・猫耳・狼・蛸・蜘蛛等の様々な姿形を持つ者達。

 翼で飛行する者もいれば、魔法陣で空を飛ぶ者もいた。


 周りの人々に魅入る蜜柑みかんにリリスが声を掛ける。


 「蜜柑みかんこっちよ!」


 「うん、分かった」


 リリスが先導して道を歩く。

 横切る人を食い入る様に見る蜜柑みかん


 暫くするとリリスが立ち止まる。


 「ここよ蜜柑みかん


 「・・・・」


 リリスに案内されて向かって来た場所。武器を調達する為に来た場所。

 それは蜜柑みかんもよく前世界で利用していた場所の様な外観で、文字が読めないでもニュアンスで何となく理解出来る場所。


 それを見た蜜柑みかんは思わずその店が正なのかリリスに問う。


 「ねぇ~リリスちゃん、このお店でいいの?・・・」


 「うん、ここが武器屋よ」


 蜜柑みかんの懸念を振り払う様にリリスの顔は笑顔。

 しかし蜜柑みかんは首を傾げ、難しい顔で言葉を呟く。



 「ここ、どう見ても100円ショップなんですけど・・・」


 そう、その店は全面ガラス張りで、所狭しと陳列されている雑貨と思われる商品が外から見える。

 そして店の看板の文字は読めないが、デカデカと『100』の文字が刻まれていたのであった。

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