大魔王の試練④
理夢はリリスを抱きかかえ、リリスをソファに座らせる。
「リ、リリスちゃん、どうしちゃったの?何があったの?ねぇ、リリスちゃん!」
理解が及ばない蜜柑。
その場に立ち尽くし、必死に問いただすが、リリスはもはや・・・抜け殻であった。
ゆっくり、リリスから手を離す理夢の顔は怒りに染め上がっていた。
ビクつく蜜柑。
--こ、殺されるーーー!!!ア、アレは僕の意思じゃないんです!!!
空気を読み、口にはしないが、脳内でひたすら先程の行いの、言い訳をする蜜柑。
「カツカツ」と蜜柑に歩み寄り、理夢は襟元を掴み引き寄せる。
蜜柑と理夢の互いの顔が急接近する。
雰囲気が違う・・・それに辿り着くのに、余り時間を要さなかった蜜柑の顔が真顔になる。
「連れて行きなさい・・・」
「・・・えっ?!」
「『あの御方』の所に、私を連れて行きなさい!・・・ぶん殴ってやる!!!」
「・・・え?!・・・ど、どうしちゃったの理夢ちゃん?僕よく分かんないんだけど・・・」
「これはね・・・アイツ仕組んだ事なんです!!!・・・私見た事ありますの・・・身動き取れず、誰かを操るスキル・・・これはリリスのスキル『操り人形』ですわ」
「えっ!さっきのリリスちゃんがやったの?」
静かに頷く理夢。
「さぁー私を『あの御方』の所に連れて行きなさい!!!」
怒りを言葉に乗せて放つ理夢。
徐々に理解が及ぶ蜜柑。
顔を下げて頭を整理する。
『あの御方』の性格。
5ヶ月後に控えた入試試験。
理夢のはだけた左胸から滴る赤い液体。
蜜柑が保有するスキル『魂食人種』の存在。
リリスと理夢の今の関係。
リリスが何故?操り人形を使ってこんな事をしたのか。
組み合わさるパーツを拾い集め、次第に形取る、完成に近づく程、蜜柑の顔が変化する。
そして頭で全てが組み合わさった。
その蜜柑の顔を見た理夢は一歩足を立ち引かせ、驚愕の顔を浮かべた。
蜜柑が今浮かべる表情、それは『怒り』であった。
ほんの一瞬だけ見せた蜜柑の表情。
初めて見せる、それは理夢は寒気させた。
--私が蜜柑に怯えた?!
蜜柑は顔を上げると、いつもの蜜柑に戻っていた。
だが・・・それが逆に理夢が抱く蜜柑の不気味な恐怖感を増した。
蜜柑は理夢と目が合うと、ニッコリ微笑み言葉を掛けた。
「僕のせいだから、僕が何とかしてみせるよ」
「あっ」っと、言葉を掛けようにも、何故か理夢の中で何かが邪魔をする。
蜜柑は直ぐに、「クルッ」と身体を反転し、次の行動に移していた。
「眷属召喚、『ゴルゴン3姉妹』『ステンノー』『エウリュアレー』『メデューサ』力を貸して・・・」
蜜柑の影が3つに分かれ、影が立ち上がる。立ち上がった影から、歩み出る、ゴルゴン3姉妹。
顔は化け物の方だった。
直ぐにステンとエウリが片膝を落とし頭を下げ、メデューサはスカートの端を持ち、少し持ち上げ、頭を下げた。
「手伝って欲しいんだ」
その言葉は力強く、最初に会った蜜柑と同一とは思えなかったステンとエウリは、驚き互いの顔を見合う。
メデューサは「テクテク」歩み寄り、人差し指を咥え、蜜柑のローブを掴む。
再度蜜柑の顔を拝んだステン、エウリは口の角を吊り上げ。
「「お任せを」」
メデューサは下から蜜柑を見上げ、コクッと頷いた。
3人にニッコリ微笑む蜜柑。
それを見たステンとエウリは膝を上げ立ち上がる。
「じゃー行こうか!・・・誰か転移魔法持ってる?」
「仮主人様、私に任せな!・・・で?、何処行くんだよ」
自分の胸を「ポンッ」とひと叩きしたエウリが一歩前に出る。
「氷の大陸『ニブルヘイム』『魔神の間』まで行ける?」
一瞬「キョトン」とするステンとエウリ、しかし・・・直ぐに笑みを作り。
「いいねぇーそういうの好きだぜ!任せな仮主人様」
「うん、よろしくエウリちゃん」
蜜柑は理夢の方に「クルリ」と身体を回転させると。
「リリスちゃんの事よろしくね」
「え?・・・あ・・・み、蜜柑!」
理夢に言葉を掛けるとエウリの影が4人を飲み込み姿を消した。
呆気に取られる理夢は言葉足らずに蜜柑を見送るのであった。
しかし理夢は蜜柑の言葉を聞き逃していなかった。
蜜柑は言った『なんとかしてみる』では無く、『なんとかしてみせる』と言葉した事を。
「いつの間に男になってしまったんでしょうね?」
少し呆れ顔で理夢はそう言った。
そして理解した、何故?自分が口を紡ぎ蜜柑に言葉する事が出来なかったのか、それは蜜柑の中に『漢』を見たからであった。
--『ニブルヘイム』『魔神の間』
『あの御方』が眉間にシワを寄せ何かの訪問に気が付く。
「これは、これは、チート姉妹とは懐かしいの」
その言葉を期に、床から影が現れ、床から迫り出し、人程の大きなになると、その影から歩み出る様に4人が姿を現わせる。
「クックックック、ホント愉快な奴よの~退屈せんで良い事じゃ」
『あの御方』の前で余裕の笑みを浮かべる4人。
「これは、これは、月の化身、量子転移、女支配者とは恐れ入ったわ・・・さすがの儂でも、度肝を抜けれたわい・・・して、何の用じゃ?」
『あの御方』に余裕が無い・・・直ぐに見て感じ取れた。
そして・・・
口の緩め蜜柑が口を開いたのであった。
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「うむ、まぁ~ええじゃろ!儂もまだ死ぬ訳にはいかんでの!・・・『大魔王としての覚悟』、しかと見定めさせてもらうぞ・・・しかし期限は3ヵ月じゃ!よいな?」
「うん、ありがとう」
「しかし、儂を脅すのはお前ぐらいなもんじゃぞ!アハハハ、ホント愉快な奴じゃの!アハハハ」
--脅す?何の事を言っているんだろう?
蜜柑はゴルゴン3姉妹の力をまだ知らない。
ゴルゴン3姉妹を召喚したのは、移転魔法が誰か使えるかな?と凄い軽い気持ちで召喚しただけであった蜜柑。
翼を手に入れてもレベルが見合わず、辿り付けなかっただけ。
「じゃー僕達もう行きますね」
「ふむ、まぁーしっかり、やる事じゃな!・・・楽しみにしておるぞ」
「うん!任せてよ」
「もう、いいのか?仮主人様?」
「次は『ミッドガルド』に行きたいんだけど・・・いいかな?」
「ああ、いいぜ、任せな!」
--人型の大陸『ミッドガルド』
焼野原になった店を新築し、徐々にマジックアイテムを増やし続けているヘパイスに訪問者が現れた。
「おやおや、これはこれは、リリスと理夢は一緒では無いのかな?・・・おや?後ろの方々は?」
「ああ、僕の眷属です・・・実はお願いがありまして・・・」
「ふむ、残念だが・・・男単体で来られても、私は何もしてられないけどな、前にも言った通り契約で成り立っているのだよ!・・・男と契約を交わすなんてナンセンス!・・・済まないが力になれそうも無いな」
「・・・あ、はい・・・分かりました・・・あのー聞くだけ聞いていいですか?」
「ふむ、聞くだけなら構わないよ」
「実は・・・・・・」
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「なっ!!!・・・フフフフ、アハハハ実にいい!・・・実にいいよ!・・・そう言う事なら是非私に協力させてくれ!・・・そうだな・・・契約はそれを使用した時の感想ってのはどうだい?」
「・・・・・・あ、はい・・・それで結構です・・・」
「直ぐに取り掛かるから明日また来てくれるかな?」
「あ、はい!分かりました・・・どうか宜しくお願いします」
「フフフフ・・・もうスンゴイの作っちゃうよ・・・フフフフ」
「・・・・」
蜜柑が『怒り』を覚えたのは、自分の力の無さであった。
『覚悟』と置き換えてもいい怒りが蜜柑を急成長へと導く。
それが出来たのは理夢の存在があったのは言うまでも無い。
伝説の大魔王『早乙女蜜柑』の歴史が今始まろうとしている。
次回から一気にパワーアップしていきます。




