スキル
--6ヵ月前
僕の名前は早乙女蜜柑勿論男です。
でも・・・
見た目は女・・・声変わりも無く・・・
容姿が中性的、若干内股、腕は横振り。
身長150cm、体重40kg
懸垂0回、握力10kg、腕立て1回、腹筋おまけの1回です。
「ギャーーー!!!」
「ウオォォーーー!!!」
「ドカーーーン!!!」
「われ!舐めっとったら、アカンどぉーーー!!!」
「バン!バン!バン!」
テレビ画面に釘付けの蜜柑。
--カッ、カッコイイーーー!!
僕の趣味はVシネマ鑑賞。
特にバトルものが好きでいつもワクワク見てます。
そうこれは憧れ・・・ナヨナヨしている僕の憧れなんです。
いつかきっと僕はVシネマの様なカッコイイ男になる!そう決めているんです。
蜜柑の私生活は屈辱の毎日であった。
同級生には肩を組まれ、胸を揉まれ、出る言葉は「いつ取るんだよ」。
学校の先生も頬を染めて蜜柑に話し掛ける始末。
近所でも「いつも可愛いね」と声を掛けられる。
そうじゃーないんだ!僕は男の中の男になるんだ!!
そう・・・
約束なんだ・・・
立てかけられている写真を見る蜜柑。
僕には幼馴染がいたんだ!
--赤坂理夢。
何時も一緒に僕と時間を過ごし、唯一僕を笑い者にせず、何時も僕に怒りをぶつける女の子でした。
ナヨナヨな僕の尻に理夢ちゃんの必殺技が炸裂します。
『回転廻し中段蹴り』
そんなに痛く無いんですけど、軽く1m程僕の身体は吹き飛びます。
あの時もそうでした・・・
幼い僕と理夢ちゃんは歩道が青になり手を挙げて渡っている途中に、居眠り運転のトラックが僕達目掛けて暴走して来ました。
僕は猫の様に膠着し歩道から動く事が出来なかったんです。
それを見た理夢ちゃんが何時もの様に僕の尻に必殺技を繰り出します。
『回転廻し中段蹴り』
それを喰らい僕は1m吹き飛び・・・助かり・・・理夢ちゃんは・・・・・・・・
理夢ちゃんは僕に笑顔を作り最後にこう言いました。
「アンタ男でしょ?!頑張りなさいよ!」
「・・・・」
そう約束なんだ!理夢ちゃんとの約束・・・・
だから僕はVシネマで研究するんだ!
こうして早乙女蜜柑の妄想の日々は過ぎて行った・・・・・
至る所に傷を作る蜜柑。
昨日一方的な喧嘩の傷が身に染みる・・・
「イテテテ・・・」
冷蔵庫から骨太牛乳を取り出し、それを腰に手を置き一気に飲み干す。
「ぷはぁ~」
空になった牛乳パックをテーブルの上に置くと、蜜柑は新聞に挟まれる広告に目が留まった。
『急募 大魔王求ム 宇宙のバランスを取る為、貴方の応募お待ちしております。』
--なんだこれ?!住所も連絡先も書いてない・・・
しかし気になり広告を持ち自分の部屋に行き、何時もの様にVシネマ鑑賞に浸る。
何時ものVシネマ内容はほぼ暗記していた。
「この後撃たれるんだよ」
「バン、バン、バン」
「テメェーよくもやったな!だよね」
「テメェーよくもやったな!」
「・・・・」
「こっちだー!!こっちへこい!」
「・・・・」
「バン、バン、バン」
--何してるんだろ僕・・・こんなの見たって・・・
「何も変わらないじゃないか!」
怒りを露わにして立ち上がりる蜜柑。
「どうして・・・こんな事しか出来ないんだ・・・僕は・・・」
涙が頬を伝い、涙が溢れ広告に落ちる。
すると・・・
何か・・・感覚が下に持っていかれる・・・
涙を腕で拭う蜜柑。
そして目を開けると・・・
「・・・・・・・・・・あ、あれ?ここ何処?」
其処は真紅の絨毯が敷かれ長方形の部屋であった。
後ろには見るからに豪華な細かい模様が刻まれた重圧感のあるドア。
手前には金の縁に真紅の豪華絢爛な椅子。
其処に足を組み蜜柑を見る少女の姿があった。
少女が蜜柑言葉を掛ける。
「まぁーええじゃろ、合格!」
「えっ!?」
理解が出来ない蜜柑。
少女の容姿を確認しようとするのだが・・・
黒い靄が顔を覆い、口元以外の容姿を、崇める事が出来ない。
少女は椅子から立ち上がり、颯然と蜜柑に歩み寄る。
手が届く範囲迄足を進めると蜜柑の左胸を手刀を繰り出す。
蜜柑の背中から少女の手が姿を現わせる。
「メンゴ、メンゴ、逆じゃったわい」
全く詫びの意が無い言葉。少女は手を胸から引き抜く。
蜜柑の左胸から血が噴き出る。
「・・・えっ?!・・・えっ?!・・・」
少女は凛とした態度を取りながら次は蜜柑の右胸を手刀を繰り出す。
蜜柑の背中から少女の手が姿を現わせる。
その手には、ドクドク脈打つ蜜柑の臓器が納められていた。
「ふむ、なかなか綺麗じゃの!」
「えっ?!」
蜜柑の意識が次第に薄れそのまま倒れる。
「これで貴様も大魔王の権利を得た!大いに励むがよい!」
蜜柑1度目人生最後に聞こえた声であった。
・
・
・
・
暫くして・・・
「・・・ん・・・此処は?」
僕は目を覚ましました。
起こった状況を思い出し急ぎ自分の身体を確認したんですが傷一つありません。
--あれ?夢だったのか・・・
しかし僕の服は両胸に穴が空き乳房を露わにしていたんです!
顔が赤く染まり。
「・・・・・・・いや~ん、マイッチング!」
両手で乳房を隠す蜜柑。
「何言ってんのよ!このチ〇ポ無し!!!」
「えっ?!」
声がする方に振り返ると、其処には足の甲が見えたんです。
足の甲は僕の顔面を捉え、転がる様に5m吹き飛んだんです。
痛すぎ!痛すぎ!出木杉!
僕は両手で顔を押さえ藻掻きました。
僕の顔面に蹴りを入れた少女が声を掛けてきました。
「アンタほ~~~~んと変わって無いわね!何の為にアンタ庇ったと思ってるのよ!死に損よ!し・に・ぞ・ん!本当に勘弁してよね!!!ちょっと聞いてるの?!」
聞いた事がある声でした!顔から手を退け正面に仁王立ちする少女を見ました。
僕の頬に涙が伝い・・・
顔は笑みに代わり抱き付く様に少女に駆け寄りました。
だってその人は!
僕を庇いトラックにグチャグチャのメチャメチャのヌチャヌチャのボロボロにされた・・・
「理夢ちゃ~~~~ん!」でした!
僕は嬉しくて、これでやっとお礼が言えるって思って、どさくさに紛れて理夢ちゃんに抱き付こうとしたんですが・・・
蜜柑の抱き付きを足の裏で阻止する少女。
思春期の理夢ちゃんは意外にガードが固くて阻まれました。
「ぐぶ・・・り、理夢、ちゃん・・・ま、負けない!タッチす・る・ん・だ!グヘヘへへ」
足を突っ張り再度、蜜柑を吹き飛ばす少女。
「ばふっ」
そんな僕に歩み寄り理夢ちゃんは言葉を掛けてきました。
「私は今『リリス』って名前なの!分かった?腐れ蜜柑!--ハグは要らないから、主人に挨拶するよ!」
リリスちゃんは僕に手を差し伸べてくれました。
僕は呆けながら差し出された手を受けます。
--グヘヘへへ、だっぢじだ!
一気に顔が乱れます。
僕は手を引かれ椅子に座る少女の前に連れて行かれました。
リリスちゃんは片膝を落とし頭を下げます。
「こら!蜜柑頭下げるの!!!」
「えっ?」
「あーたーまーさーげーる!」
「あっはい!」
僕は土下座します。僕の十八番です。自身があります。何度助けられたか!僕程綺麗に土下座する人なんて見た事ありません・・・
てか・・・
土下座している人リアルで見た事ありません・・・・・・
「・・・・」
でも・・・
--どうだ!参ったか!
勿論勝ち誇ります!粋がります!
--こんな土下座見た事ないだろ?えっ!えっ!何とか言ってみろよ!
驚く2人の顔が見てなくても頭に浮かびます。
--さてそろそろその驚く顔を拝んでやるか!
顔を上げようとした時・・・後頭部に痛みが走り、僕の顔が地面に食い込みます。
「私じゃーなくて!あの方にするのよ!このお馬鹿!!!」
土下座する人間違えました・・・
僕の人生最大の汚点でした。
仕切り直しで椅子に座る少女に土下座します。
汗が頬を伝い鼻の天辺に溜まります。
--だってあの人僕を突き刺した人ですよーーー!!!
顔がアバターになりました。
ん?アバター?知らないんですか?
リアル版スマ〇フですよ。
「・・・・」
そんなのどうだっていいんですよ!
殺される!!!下手したら殺される!!!無理矢理でもリリスちゃんに抱きついておけば良かったと後悔します。
そんな僕に少女が声を掛けてきました。
「ふむ、これからお前達は大魔王に成る為の試験を受ける事になる。これから6ヵ月後に大魔王養成学校の入試試験がある。それに見事合格し、我にその意を示せ!」
「はっ!畏まりました」
「・・・・」
--ん?全然意味わかんないんだけど?
「これより入試試験までリリスと過ごし己の力を磨くがいい」
「はっ!仰せのままに」
--リリスちゃんと一緒に?グヘヘヘヘ
そこだけは理解が早い蜜柑。
「そうじゃ!前祝にスキルを何かやろう?どんなスキルが欲しいのじゃ?」
--スキル?なんだろうそれ?
「ちょっと早くいいなさいよ!」
リリスちゃんがヒソヒソ話で僕を急かせます。
「だってスキルって何?僕よく分かんないんだけど・・・」
「何でもいいのよ!個性よ!個性!自分が成りたい姿をいいなさいよ!」
--う~ん個性かぁ~・・・それじゃーーー!
「魂と魂を賭けた戦いがしたいです!!!」
蜜柑の言葉を聞いて固まる少女とリリス。
--いや~ん僕カッコイイーーー!!!
自画自賛する蜜柑。
--もう惚れちゃう!!!
まだ浸る蜜柑。
「ねぇー!!!ちょっと本気で言ってるのソレ?!!!」
リリスちゃんの顔がマジ。もしかして僕に惚れたのかな?
僕の顔がニンマリします。
「うん!マジ!」
口が吊り上がり顎下が長くなります。
「アハハハハハハ!ウケる!ウケるぞ!面白いやつじゃ!お前は真の大魔王に成れる器じゃー!褒めてつかわす。それ望みのスキルじゃ!少しお前さんが望むスキルとは違うがの、一方的に魂を奪うスキルじゃ!」
少女は蜜柑に手を翳すと、蜜柑の身体が発光する。
「こ・・・これは・・・」
蜜柑は自分の注がれる力を確かめる様に両手を確認する。
やがて光は収まり少女が蜜柑に話掛ける。
「授けてやったぞ!存分にその力を奮うがいい!」
「あ、ありがとうございます・・・所で何をくれたんですか?」
「惨いスキルじゃー!」
「えっ?・・・」
「残忍・残酷・最悪・最強のスキル!!!」
「えっ?・・・えっ?・・・・」
「そのスキル名は『魂食人種』じゃ!」