大魔王の城
褒める言葉を出し尽くした2人。
リリスが蜜柑に声を掛ける。
「さて、そろそろお城に戻りましょうか?」
「・・・お城?」
「ええそうよ!この世界では力に見合った自分の住居・・・そう!お城が貰えるの」
「ええええ!!!ホントに!!!凄くテンション上がるんだけど!!!」
「うふふふ、じゃー行きましょうか」
「うん!!!」
--凄いやー!!!まさかお城が貰えるなんて!!!
歓喜で手を踏ん張る姿勢を取る蜜柑。
そんな蜜柑の両脇に腕を回すリリス。
「え・・・あ、そうですよね!これしか無いんでしたよね・・・」
「うん」
リリスは肯定して蜜柑にニッコリ微笑んだ。
顔面が蒼白に成る蜜柑。
蜜柑の足にしがみ付く理夢。
最初から猛スピードで飛ばすリリス。
--駄目だーーー!!!やっぱりチヌーーー!!!
--人型の大陸『ミッドガルド』
蜜柑は『ミッドガルド』を近未来的な大陸だと思っていたのだが・・・
今居る場所はとても長閑で、金髪ロン毛の足が負重な金持ちの少女が、環境変化で2足歩行を可能にした場面を思い出す程であった。
色々な自然動物が存在し、自然の動物達が草を食べ、芝生程度しか生えていない歩き易い地面に足を降ろす3人。
日も落ち初め「この世界でも夜は来るんだ」と呟く蜜柑。
赤く染まる地平線もとても綺麗だったが、それよりも神々の惑星『アスガルド』に少しズレ沈む光源が朱色に染まり『アスガルド』を縁取る明かりと合わせて「紅玉の指輪」を思わせるその光景は、何よりも美しかった。
その光景に口を緩め目を奪われる蜜柑と理夢。
リリスが2人を急かす様に。
「こっちこっち」
先に足を進め、ある方向に指を差す。
リリスが指差す方を確認すると、そこには一つの納屋があった。
「「・・・・」」
蜜柑と理夢は遠い目をする。
「早くー」
リリスのその声でリリスが指差す方向に足取り重く駆け出す2人であった。
納屋に着き。ドアを開けるとそこには、一人の小さい死んだ様な目をするオッサンがカウンター越しに座っていた。
オッサンが何故こんな所に・・・死んだ目が全てを物語っている様な気がして、言葉に出せなかった蜜柑。
水色の髭の無いサンタクロースみたいなオッサンはリリスを見ると、席を立ち壁に掛けてある鍵を一つ取り、カウンターの上に置く。
「ありがとう、おじさん」
リリスはオッサンにお礼を言うと納屋から出る。
納屋から400m程離れ、鍵を空間に差すと、先が空間に飲み込まれる。
鍵を右に回すリリス。
それは薄っすらと現れ徐々に姿を現わせた。
「「す、凄い・・・」」
「エヘヘヘ、私のレベルではこれぐらいかな?・・・」
謙遜するリリスであったが、それは間違い無く城であった。
中性ヨーロッパをイメージさせる造りで横幅・縦幅約80mの高さ約180m無駄に塔が多いい様な感じはするが、全ての屋根が三角で黒く、窓にも細かい装飾が施され数多く、外壁は石で出来ている事が分った。
「ぼ、僕も貰えるんだよね?」
「うん!おじさんに鍵貰っておいで」
蜜柑納屋に入り・・・暫くて納屋から出てきた。
「貰って来たよーーー!!!」
早速鍵を回す蜜柑。
それは薄っすらと現れ徐々に姿を現わせた。
入り口は1つ、屋根は三角、外壁・屋根は木製、縦幅2m横1.5m高さ1.5の・・・
『犬小屋』であった。
鍵を地面に叩き付ける蜜柑。寂しい目でそれを見るリリスと理夢。
再度納屋に向かい・・・暫くて納屋から出てきた。
「・・・・」
無言で鍵を回す蜜柑。
それは薄っすらと現れ徐々に姿を現わせた。
入り口は観音式の木製、屋根は無く外壁も無し、縦幅10cm横幅3m高さ3mの・・・
『クローゼット』であった。
崩れ落ちる蜜柑。
涙が地面を濡らす。
「「み、蜜柑・・・」」
リリスと理夢が優しく蜜柑に声を掛ける。
蜜柑は心配掛けない様に涙を拭うとリリスと理夢の方に笑顔で振り返る。
駄目駄目な僕に優しく声を掛けて慰めてくれるんだろう、駄目駄目な僕にリリスの城で住もうと言葉を掛けてくれるのであろう、と思われたのだが・・・
2人は拳を作り残った手を添え「ポキポキ」指を鳴らし。
「「誰隠すのそこに!!!・・・」」
「・・・えっ?・・・」
2人に「ボコボコ」にされる蜜柑。
「「頭冷やしな!!!」」
吐き捨てられる様に浴びせた言葉の後、2人は豪華なリリスの城に姿を消した。
暫く節々が痛み動けない蜜柑。
這いずる様に身体を「クローゼット」に身体を進め、観音式のドアを開けると・・・
そこには只々だだっ広い真白な空間が広がっていた。
「・・・・」
本来なら声を張り上げて喜び回る筈の蜜柑であったが、無言で身体を引き摺り、クローゼットの中に入り、ドアを閉めると、崩れる様に倒れ込む。
沈黙の空間に。
「グー、グー、グー、グー」
と「イビキ」だけが響き渡り、その音の発因である蜜柑の顔は・・・
それはとても笑顔であった。
早乙女蜜柑転移後の1日の夜はこうして過ぎて行った。




