大魔王の誓い
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本当の姿を見せたゴルゴン3姉妹。
歓喜し土下座する蜜柑。
そんな蜜柑を呼ぶ声がする。
「「蜜柑お待たせー!」」
同時に掛けられる言葉・・・そうリリスと理夢であった。
冷汗が噴き出る蜜柑。
間違いなく誤解され拷問の様な仕打ちを受けるのは当然の事。何も無くても気まぐれで拷問される蜜柑にとってこれは非常に不味い事態であった。
まるで浮気がバレない様に。
--クローゼット!クローゼット!
訳が分からない事を脳内で呟き、急いで頭を上げ、クローゼットを探す蜜柑。
しかし・・・ふと目に止まったステンの顔は最初に会った時の顔・・・そう化け物の様な顔に戻っていた。
「え???なんで???」
意味が分からない蜜柑は固まる。
ステンが蜜柑に近寄り耳元で小さく言葉を掛ける。
「どうぞ、私達の事はご内密に・・・名も出来ればお控え下さい・・・」
「はっ・・・はい!!!」
本当の姿を知っている蜜柑は頬を赤く染め、身体が硬直、軍隊張りの直立不動の体勢を取る。
理夢を抱えたリリスは一度蜜柑の周りを旋回し、そしてゆっくり地面に足を付け義体を解除する。
理夢も足を地面に着ける。
蜜柑の元に歩み寄るリリス。
「どちら様???」
リリスの言葉に焦る蜜柑は言葉が出ない。
そんな蜜柑の前に出てリリスに言葉を返すステン。
「私達はこの御方の眷族でございます」
ステンはリリスに頭を下げ自分の立場を主張する。
「ふ、ふ~ん、そ、そうなんだ・・・」
手を後ろで組み、余り関心がない様な素振りをするリリス。
だが・・・実際にはそうでは無かった、リリスはステンを見て手が震えていた。
それを隠す為に手を後ろに回したのである。
しかし・・・そんな存在を前にリリスの意識は1人の存在に研ぎ澄ましていた。
それは幼女と思われる存在、蜜柑の背後から時折「チラチラ」とリリスと理夢を覗き込む様に顔を覗かせる存在。
何故?リリスはステンを前に幼女に神経を削ぐ行為に移した答えは簡単であった。
何故なら・・・
リリスには・・・
幼女の顔が見えなかったのであった。
そう、それは蜜柑とリリスの主人と一緒。
顔に黒い靄が掛かりその容姿を認識出来ないでいる。
危険は感じない。
だからその場でも冷静を装う事が出来た。
だが理夢は違った。
歯を「ガタガタ」させて地面に着地した位置から一歩も動いていなかった。
強者だから分かる自分より遥かな高みにいる強者の感覚。初めて見るその存在は、理夢に恐怖を与え行動を静止させる。
「この場に居たくない」唯一それだけが脳内を支配する。
流れ出る汗。
拭う事も許されない圧倒的な力の差。
リリス、理夢に与えた恐怖はメデューサのスキルに因るものなのだが、それはまだ後の話になる。
それを悟ったかの様にステンは蜜柑の背後に歩み寄り、メデューサの襟元を掴み、その足でエウリの元に足を進める。
「一度引き上げます。御用の際はいつでも我らの名をお呼び下さい」
蜜柑の方には振り向かず言葉を掛けるステン。
エウリは片腕を頭の後ろに回し、空いた手で蜜柑に手を振る。
メデューサは両手両足をバタつかせ、蜜柑と離れたく無い様な素振りを無言で見せる。
「では、後程・・・」
最後に言葉を残すとステンの影が高波の様に迫り出し、3人を飲み込み、影と共に姿を消したのであった。
ゴルゴン3姉妹長女『ステンノー』が蜜柑召喚され蜜柑に最初に抱いた感情は「失望」であった。
何故ならゴルゴン3姉妹には悲願があった。
それは復讐である。
ゴルゴン3姉妹は元神だったのだが、ある些細な出来事により神の位から魔物の地位迄落とされたゴルゴン3姉妹。
その出来事によりメデューサは言葉を失い、3人はその容姿を隠さなければいけない事態となる。
屈辱の日々、その者に一矢報いたい、それが悲願。
久々に強者に召喚されたと思ったら・・・その相手が蜜柑であった。
直ぐに殺す事も出来た。
しかしその者には見慣れないスキルが多数存在した。
少し悩みそのスキルを確認してからでも遅く無い。
どうせ次の召喚も何十年・・・嫌・・・何百年の歳月を要するのか分からない。
だから試したのだが・・・
何故かメデューサが蜜柑を気に入り『湖の洞窟』に出現する魔物を察知した瞬間、遥か遠くから次々と指を回し剣技『真空斬り』で分子レベルで屠る。
頭を抱えるステン。
--これでは計れないではないですか・・・
そしてエリアボス『ミノタウロス』戦。
もちろんメデューサは蜜柑の代わりに対峙する為、駆け出した。
--はぁー、あの子には本当参りました・・・
完全お手上げ状態のステン。
しかし予想外な事に蜜柑がミノタウロスに立ち向かった。
口が緩むステン。
即座に闇魔法『黒い薔薇』でメデューサの神経を奪い動きを封じて、蜜柑の可能性に着眼する。
【黒い薔薇:神経に薔薇の根を張り身動きを封じる闇魔法、無理に動くと神経が断絶する】
メデューサを庇いたった一撃で身体が2つに別れる蜜柑・・・
遠い目をするステン。
しかしそこからの光景は可能性に溢れていた。
必死に対峙する蜜柑。
腸を引き摺り、血を撒き散らし、悍ましい姿のまま喰らいつく姿に目を奪われた。
戦うレベルは底辺だが、ここまで戦慄な戦いは見た事が無かった。
横目で見えるエウリもその光景に魅入っていた。
そして蜜柑が召喚したであろう獣も見た事が無い、熊に酷似しているが能力値は遥かに高い、カラーが黒と白、何故か愛くるしいその獣・・・大熊猫に、少し「トキメク」ステン。
【もちろん3枚のカード分は、通常の大熊猫の能力値に×2×2×2倍率補正を掛ける。】
直ぐに蜜柑を「異世界人」と判断した。
ミノタウロスを倒し、蜜柑も倒れた。
まだ奥で戦う大熊猫とミノタウロス2匹。
ステンは大熊猫に歩みより「邪魔ですわ」と大熊猫に触れる。
しかし・・・
大熊猫は消えなかった。
「な、何故?」直ぐに理解が出来ないステンに襲い掛かるミノタウロス2匹。
振りかぶり、振り落される斧・・・
しかしステンの身体には外傷は一切無い。
そう・・・ステンは元神である。
もちろんステンの身体には『絶対魔法防壁』が備わっている。
魔素で構成されたミノタウロスの斧は魔素に戻り、斧から伝いミノタウロスの腕から徐々に魔素へと戻るミノタウロス。
ミノタウロスが完全に姿を消したとほぼ時を同じくして、光に戻る大熊猫。
大熊猫が消えた後に残る3枚のカード。それを拾い上げるステン。
「やはり・・・」
そのカードも触れる事が出来た。
『白』『黒』『動』と書かれ、カードの裏には『へファイストス』の紋章が刻まれていた。
「なっ!・・・ば、馬鹿な・・・」
この世界では殆どの物事が1から始まり100で終わる。1が最低を示し100が最高を示す。それは人の価値も同じ表現をする。
この世界でたった1人しかいない最高の職人の地位「100」を持つ彼女が何故?
変人で通る彼女の名は『男』に容赦無く武器を与える事等考えられなかった。
「私の武器が欲しい?・・・なら女になれ!」
『ヘファイストス』のその一言で、神宝級の武器を何人の男が肩を落とし諦めたか・・・それでも諦められない男達は何人涙を呑んで改造手術を施したか・・・
しかし蜜柑は男のまま。
男は風前の灯火の際に子孫を残そうと無駄な足掻きををすると聞いた事がある。
2つに別れた蜜柑の下半身に視線を送るステン。
非常に、滅茶苦茶、ウルトラ、ハイパー、超、オメガ級に小さいが男のシンボルが硬直しているのが「ギリギリ」分かる。
「ハッ」と一つの可能性に行き着くステン。
『ヘファイストス』は全能神の怒りを買い、神界から死罪を言い渡されたのだが、『あの御方』の計らいにより、その刑を免れ、『あの御方』の保護下に身を置いていると風の噂で聞いた。
無言で蜜柑に近づき、ステンは両胸に手を添える。
すると直ぐに漆黒の禍々しい紋章が胸から浮き出る。
「この紋章・・・間違いない・・・」
笑みを浮かべるステン。
この者は手当たり次第の異世界転生では無い・・・
選ばれし者・・・
そう・・・
『異世界転移者』。
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3人の姿が見えなくなると、リリスは胸を撫で下ろすかの様な息を吐く。
理夢は硬直から解放され両膝、両手を地面に着け身体を支える。
蜜柑は必死に言い訳を考える。
3人はこうして暫く動く事無くその場に立ち尽くしのであった。
沈黙を破ったのは理夢であった。
「あれ・・・何ですの?・・・」
「ビクッ」と恐怖で毛を逆立てる蜜柑。
「いや・・・あの~・・・その~・・・ランダム召喚したら出てきて・・・」
自分が嘘は下手だと知っている蜜柑は正直に話す。
「はぁー・・・まぁ~それしか可能性は無いわね・・・」
何故か援護射撃してくれるリリス。
「あんな化け物が出るんですの?」
理夢がリリスに問い詰める。
--化け物?・・・嗚呼・・・容姿の事か・・・
勘違いする蜜柑。
「あんなの見た事ないよ!私だって!!!」
「・・・・」
リリスの強い口調で理夢は口を紡ぐ。
又沈黙いなりそうな雰囲気。
--何か話題を変えないと・・・
蜜柑は必死に引き出しを模索する。
そして話題はリリスと理夢の別行動の質問であった。
「2人はどうだったの?・・・」
「えっ?・・・うん上々だったよ!理夢も居たから凄い簡単だったよ」
意外なリリスの言葉に理夢は驚いた顔をする。
理夢は口元を緩め。
「先生が優秀だったからですわ」
意外な理夢の言葉にリリスは驚いた顔をする。
リリスは口元を緩め。
「生徒が優秀だとね、つい力入っちゃうよね」
「何をおっしゃってるの?先生の後に付いて行くので必死でしたわ」
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--単純なんだね2人共。
何だか2人の扱い方を少し学んだ様な気分になる蜜柑。
暫く続く2人の褒め合い合戦を黙って笑顔で見守るつもり・・・だったのだが・・・余りにも長い・・・もう既に1時間はこうしているのでは?!
苦笑いして、もう「いいや」と蜜柑は2人を無視して、両手で拳を作り、天を見上げ。
こんな僕でも・・・
この世界なら・・・
この身体なら・・・
誰かを守れる事が出来るんだ。
そう僕は皆を守れる漢になるんだ!
蜜柑は少し漢になった気分で、非力な自分でも誰かの為に力を奮う事を此処に誓うのであった。




