第7話
本日4話目です。
ご注意ください。
今日は土曜日。
『ワールドハーフ・オンライン』を始めて初めての週末だ。
だが今日はみんなアルバイトで忙しい。
恵麻と五月ちゃんは別だがな。
恵麻は割りと良いとこのお嬢さんだから金銭的には困ってないし、五月ちゃんは見た目小学生だから学校側から許可が降りなかった。
五月ちゃんはホントにちっさいからなー。
身長も136cmしかないし、体重も……。
あ、いや、これは言うと殺されちゃうな。
主に美也子から。
一応乙女の秘密らしいから、無闇に教えるもんじゃないらしい。
五月ちゃんはオレに嬉々として教えてくれたけどな。
よー分からん。
胸のサイズ的には、恵麻>五月ちゃん>美也子、となっているらしい。
五月ちゃんが「恵麻のおっぱい、私よりおっきかったぁ!」って、オレに写真付きでメールしてきたからな。
でも、キャミソール姿の五月ちゃんが両手でパステルグリーンの可愛らしいブラジャーに包まれた恵麻のおっぱいを下から持ち上げてた写真だったんだが、どーやって撮ったんだろーな?
まさか、据え置き動画撮影からのキャプチャーか?
まぁ、どうでも良いが、写真はしっかり保存させて頂きました。
ちなみに、一部では五月ちゃんは『ロリ巨乳』って言われてるんだが、実際には体が小さくほっそりしているから余計に大きく見えてるだけなんだよな。
それでも美也子よりは間違いなく大きいんだけどな。
あ、そーじゃなくって。
土曜日のオレらはアルバイトをしてる。
『ワールドハーフ・オンライン』のプレイチケット代を確保するためだな。
みんな割りと成績は良い方で、悟志は学年トップ10から落ちた事がねーくらいだし、空牙もトップ20付近に名を連ねてる。
オレと美也子は30番台を行ったり来たりで、恵麻は国語や日本史が足を引っ張ってて60番台。
そして五月ちゃんは毎回学年トップだったりする。
ちなみに、オレらの学年の生徒数は231人だから、恵麻以外は上位2割に居るんだよ。
恵麻も最近ではオレらと一緒に夜のネット勉強会のおかげで、随分成績を上げてきている。
この分だと来月の期末試験はオレと美也子辺りは抜かれるんじゃねーかと思ってる。
ま、そんな恵麻の頑張りを受けて、オレらも勉強に力は入れてるんだけどな!
そんな訳で、オレは空牙と一緒に駅前の大きな書店でアルバイト。
美也子は同じ敷地内のドーナツ屋で、悟志は家庭教師とか言ってたな。
流石に出来る悟志は違うな……。
午後2時から7時までの5時間で時給850円、月4~5回のシフトだ。
それでも毎月17000円から21250円になるから充分だ。
空牙はもっぱら品出しや仕分け担当で、オレはレジ打ち担当。
なんせ空牙はニコリとも笑わないからなー。
それが良い! って言うお客さんも居ない訳じゃないけどな!
さぁて! 今日も紺色のエプロンして頑張りますかぁ!
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「こちら2点で1188円になります。1200円でよろしいですか? こちらお釣りの12円とレシートになります。ありがとうございましたー」
引っ切りなし……とは言えないくらいの客が雑誌や雑貨を買っていく。
そんなオレの後で空牙がさっき届いたばかりの本の仕分けと打ち込みをやっている。
以前は店長達が打ち込みをやってたんだけど、空牙がやった方が早く終わるってんで、空牙のシフトの時には任せっきりになってるんだ。
仕分けをしていた空牙から声が掛かる。
「桃弥、こいつを見てみろ」
空牙が1冊の雑誌を広げて見せる。
そこには『ワールドハーフ・オンライン』の記事が載っていた。
来月来るらしい大型アップデートについて、シナリオライターの古菅篤紀とプロデューサーの吉仲凛子がインタビューに答えていた。
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記者「来月の大型アップデートの内容で話せる範囲でお願いします」
吉仲「サービス開始から1年と少し経ちます。サービス開始当初からのプレイヤーの殆どがレベル25を越え、最初のクラスチェンジを終えています。ただ、当初は設置店舗が少なかった事もあって、この半年で大幅に設置店舗が増えたおかげで新規プレイヤーも順調に増えてきてます。そこで、主に新規プレイヤーと最近始められたレベル10以下のプレイヤーを対象にした『初心者のブートキャンプ』をリリースします。これはまだ『ワールドハーフ・オンライン』に不慣れなプレイヤーの方々のプレイヤースキルやレベル、クラスランクなどを実践的なチュートリアルでもって底上げしていこうという試みです」
記者「ほほー。確かに新規プレイヤーは中々同じくらいの仲間が見付からず、最初のホラビィ討伐ですら負けまくる人も多いそうですね」
吉仲「そうなんですよ。設置店舗で新規プレイヤー同士が同じタイミングでログイン出来るとは限らないんですよね。なので、そういう方々の救済措置としての実装を考えています。その過程でサポートとしての冒険者NPCとのパーティー結成も出来るようになります」
記者「えっ!? という事は、今まで冒険者ギルドの片隅で座ってるだけだったあの獣耳女性NPCや黄色いスーツのダンディーなバーテンダー風の男性NPCとパーティーが組めるようになるんですか!?」
吉仲「その辺りは実際にアップデート後の冒険者ギルドで確認して頂きたいと」
記者「うぅーむ、焦らしますねー」
古菅「シナリオ的にも色々導入します。例えば、今までは行けなかった南西しょ……」
吉仲「わああああ! それはまだダメだって!」
記者「南西諸島?」
吉仲「聞かなかった事にして下さい!」
古菅「別に良いじゃーん。南西諸島航路の実装くらいさー」
吉仲「あああぁぁ……」
記者「えっと、ホントに書いても?」
古菅「オッケオッケ。責任は僕が取るさー」
吉仲「私は止めましたからね? 止めましたからね!?」
古菅「心配性だなぁ、凛子さんは」
記者「あはは……。それで、南西諸島以外には何かありますか?」
古菅「そーだなー。凛子さん、これって大丈夫でしたっけ?(チラッ」
吉仲「これと、こっちまでは。あ、あとこれもですね」
古菅「オッケ。て事で許可の確認も取れたので、ほい(ピラッ」
記者「どれどれ……。えっ!? クリエイタークラスとギャザラークラスの実装、ですか?」
古菅「そ。ギャザラークラスに関してはケトル村に新たに施設を建てて、そこでNPCからクエストを依頼されて、って感じで」
記者「でも、既に薬草採取とかは普通に出来ますよね?」
古菅「その辺はまー、クエストをやって頂いたら分かってくるんで、今はまだナイショって事で」
記者「ぐぬぬ……。クリエイタークラスに関してはどうなんです? あと、自分で作ったアイテムを他のプレイヤーに売ったりとかは出来るんですか?」
古菅「クリエイタークラスは街以上の拠点で成れます。これもクエストを終わらせたらって感じになりますね。作ったアイテムに関しては……」
吉仲「それについては私から。今回のアップデートで、ある程度の大きさの街に販売所を設置します。ここではクリエイタークラスだけでなく、全てのプレイヤーがドロップアイテムも含めて出品する事が出来ます。価格設定に関しては各プレイヤーが任意で決められますが、一応の指針としてNPC買取価格とその販売所での他プレイヤーの設定価格を参照出来るようにする予定です。勿論、他の店舗のプレイヤーの見れますので、日本中のプレイヤー同士で売買が可能になります」
記者「それは良いですねー。クエスト達成に必要なアイテムなんかも販売出来るんですか?」
吉仲「はい、出来ます」
古菅「ズルい気はするんだけどねー。でも、後発支援にはなるかなーって事で納得はしてます」
記者「なるほど。確かにそうですね。他には何かありますか?」
古菅「他かぁ……。流石にこれは不味いよな?(チラッ」
吉仲「それは不味いでしょうね。ただ、これだけは言えます。『ワールドハーフ・オンライン』は今までの仕様から大きく変わります。一部の方々にはバレバレかも知れませんが」
古菅「そうだね。基本は変わらないけど、ガラッと変わるね」
記者「その辺は……」
古菅「アップデート直前の正式発表後になるねー」
記者「そうですか……。でも、今回のインタビューでアップデートが楽しみになったプレイヤーさんも沢山居るんじゃないでしょうかね?」
吉仲「そうだと嬉しいですね」
記者「そしてこちらは……おお!」
古菅「ワクワクしてきたでしょ?」
記者「そうですね! プレイヤーホームの実装は私的にはかなり!」
古菅「でしょ! 僕も楽しみなんだよねー!」
記者「私もです! でも、古菅さんはこれの担当ではないんでしょう?」
古菅「ちらほらと関連クエストがあるんで少しは関係ありますね。それに、アーケード形式とは言えオンラインゲームならやっぱりプレイヤーホームとかのカスタマイズコンテンツは欲しかったですからねー。それにほら、僕自身も『ワールドハーフ・オンライン』の1プレイヤーですし?」
記者「えっ!? シナリオライターの激務をこなしながらプレイ出来てるんですか?」
古菅「まだレベル12程度だけどね。でも、月に10回くらいはプレイ出来てるよ」
記者「結構プレイ出来てるんですね」
古菅「開発部の専用ルームでのログインだし、むしろプレイしてる方が仕事が捗るからねー」
吉仲「彼らの仕事の大半は頭脳労働ですから、プログラマーやデバッガーのように常に仕事用パソコンの前に居なきゃいけない訳ではないですからね」
記者「なるほどー」
古菅「取り敢えず出せる情報はこんな所かな?」
吉仲「そうですね。あとはアップデート直前に発表しますので」
記者「分かりました。本日はありがとうございました」
吉仲「こちらこそ」
古菅「どもー」