第5話
本日2話目です。
ご注意ください。
ホラビィ狩りは割りと順調に終わった。
初の戦闘としては充分だと思う。
なにしろ5匹も狩れたしな。
初戦こそ美也子と五月ちゃんが使い物にならなくて苦労した。
美也子はレンジャーで五月ちゃんはマジシャンだから、本来なら彼女達の遠距離からの攻撃での釣りが常套手段なんだが、なんだかんだでやっぱり躊躇いが出ちゃって出来なかったんだ。
仕方なく悟志が突っ込んで斬りつけての漢釣りをせざるを得なくなった。
草叢が邪魔でシールドブーメランが使えなかったのが痛い。
とはいえ、ホラビィ自体は近くで他のホラビィが襲われてるのを感知すると逃げ出す習性があるから、複数のホラビィを相手取る事もないので戦闘練習には打って付けだ。
悟志が2度程斬り付けたところでホラビィがジャンピングヒールストンプで反撃してきたのを空牙が横合いからの槍のひと突きで妨害した。
それを見たホラビィが空牙に向かってホーンチャージで突撃した。
空牙はひらりと躱したが、背後には美也子と五月ちゃんが居たため2人がホーンチャージの直撃を受けて負傷。
そこからは乱戦になり、オレと恵麻とで美也子と五月ちゃんを運んで戦線離脱。
2人を恵麻の回復魔法・ヒールで回復させてる間に悟志と空牙のが何とかホラビィを倒す事が出来た。
その後は立ち位置の確認や戦術の打ち合わせをして兎狩り。
美也子が矢を放って草叢に隠れると同時に悟志が美也子の前に立ち、悟志の攻撃と勘違いして突っ込んで来たホラビィに斬り掛かりそのままヘイト……つまり敵対心を煽ってターゲットを悟志に固定させ、そこに五月ちゃんがマナボルトっていう無属性の攻撃魔法でダメージを稼ぎ、オレが背後から、空牙がサイドから攻撃してあっさり終了だった。
ちゃんとした連携さえ取れてれば楽なものだったよ。
休憩を挟みつつやって25分で5匹狩れたって訳だ。
ついでにドロップアイテムも広い集めた。
毎回手に入る毛皮・肉は良いとして、角が3本に右前足が1つ手に入った。
ちなみにこのホラビィの角はすり潰すと毒消し薬の材料になるって恵麻が言ってた。
なんでも、村唯一の雑貨屋の店主NPCが言ってたらしい。
てか、ポーションの材料じゃねーのな。
最序盤のモンスターのドロップ素材だから絶対ポーションの材料だと思ったんだがなー。
まー、オレらプレイヤーには、それを作り出す手段がねーんだがな。
そんな訳で残り時間15分になったっていうアナウンスも聞こえてきたんで、オレらはケトル村に帰って宿屋でログアウト。
ドロップ品の整理やなんかは次回のログイン時にする事になっている。
といっても、明日の放課後なんだがな。
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みんなでダイブクローゼットから出て来て、ドリンクコーナーで駄弁る。
「いやー、やっぱ5回程度の戦闘じゃレベル上がんねーな」
「だが経験値は稼げた」
「そーね。ホラビィが可愛くてちょっと躊躇ったけど」
「仕方ないヨ。そーゆーゲームなんだカラ」
「いつかホラビィをペットにするぅ」
「んじゃ、明日もホラビィ狩りにすっか!」
「だな!」
「んじゃ、そろそろ19時になっし帰るとすっか!」
「「「「また明日(ね・な・ネ)ー」」」」
そう言って美也子以外と分かれた。
美也子は保育園時代からの幼馴染で家もすげー近いっつーか三軒隣だから同じ方向なんだ。
それに、ガサツっぽいけど一応女の子だから、割りと暗いこの時間帯に1人で帰したとあっちゃ、美也子の両親はもとよりオレの親父から大目玉を食らっちまう。
保育園時代には良く「とーやのおよめさんになる!」とか言ってた美也子も、中学に上がる前くらいから凶暴化してきた。
いや、ツンデレ化か?
確か、小学6年の修学旅行の時からだったか?
何があったか知らねーけど、その辺から距離を置かれるようになったんだよな。
中学時代には殆ど話し掛けて来なくなったし、たまに話す機会があってもツンツンした感じで必要以上には会話もなかった。
それでもまぁ、同じ高校に進学して同じクラスになって、同じ中学から進学してきた悟志や空牙と出会い、同じ班になった五月ちゃんと恵麻と共に美也子ともまた仲良くなった。
みんなでカラオケ行ったり、ボーリングしたり、ゲームしたり。
そーゆーのの延長でみんなで『ワールドハーフ・オンライン』をしようってなって今日、初めてのログインに至った。
ふと、隣を歩く美也子を見る。
俯いてて顔は髪に隠れて見えにくい。
「なぁ、美也子」
「なに?」
ちょっとつっけんどんな感じの美也子の返事。
「ビンタ、痛かったわー」
「あれは! あんたが! その……私の胸を……」
一瞬あげた顔が真っ赤になり、みるみる俯いていく。
「うん。だから、ゴメン。流石にリアルではやらねーけど、フザケ過ぎた」
「う、うん……」
「謝っときたくてさ。いくらバーチャルとはいえ、幼馴染ってだけで好きでもない男から触られたりするのは嫌だよな」
「……」
「もう、あんな事はやらねーから、安心しろ。な?」
そう言って歩き出す。
美也子はその場に立ち止まったまま。
「……きでもな……もん……」
美也子が何か呟いたが、オレはそれを聞き取る事は出来なかった。