第21話
本日2話目です。
ご注意ください。
30分掛けて湖の東側にやって来た。
前回ボタン肉付きの矢を射ち込んだ場所だ。
湖面は穏やかで、とてもあんなデカいワニが居るよーには見えねー。
こっから少し東に進んだ。
10分程でゴブパーティーに遭遇した。
いつものよーにしのび足で近付いて弓ゴブリンを倒し、美也子と五月ちゃんが残りを殲滅。
そしてキノコ狩り。
最早ルーチンワークと化してる。
案の定、周辺には麻痺茸が群生してた。
ゴブパーティーを見付けなくても見付かる程だ。
1ヶ所に10本くらい生えてるから、6本ずつ採取する。
食用じゃないとはいえ、狩り尽くすとあとが困るからな。
それでも200本くらい取れた。
ゴブパーティーもそれなりにやって来た。
5パーティーくらいか?
オレと五月ちゃんが採取してる間、美也子が周辺を警戒してたから奇襲を受ける事もなかったし、むしろこっちが奇襲を成功させてた。
何だかんだで美味しい狩場だ。
なんせ、レベル6まであと2%だしな!
それに、気配察知としのび足が共に3になった。
美也子もフィールドソナーっつー気配察知と同じよーなスキルと、ウェポンスキルのシャープシュートが3になったよーだ。
五月ちゃんはマナボルトが2、ファイアボルトが3だそーだ。
「流石にこんだけあったら大丈夫だろ」
「そうね。200本以上あるでしょうしね」
「うんうん」
「1時間も頑張ったしな。帰るかー」
「「賛成ー」」
って事で落とし穴掘り現場まで戻った。
戻る最中にはゴブパーティーには遭遇しなかった。
落とし穴掘り現場に戻ると、漸く50cmくらいの深さになってた。
こりゃー残りの時間は穴堀で終了だな。
なんせ、縦横5m、深さ10mの落とし穴を掘ろうってんだから、今回のログインだけでは終わらねーだろ。
オレら3人も手分けして落とし穴を掘る事にした。
が、その前に、オレは周囲を見渡した。
「んー、こいつでいっか」
平たくて楕円形のそこそこ大きな石を見付けたオレは、それを岩に打ち付けて更に薄くなるよーに割った。
2/3くらいの大きさで斜めに割れてしまったが、まー問題はねーだろ。
それを美也子と五月ちゃんに渡し、スコップの代わりにしてもらう。
悟志はタワーシールドをスコップ代わりに、空牙は初心者の槍をツルハシ代わりに、恵麻は2人が掻き出した土を運んでた。
タワーシールドが一番役に立ってるな。
オレは恵麻と一緒に土を運ぶ。
運ぶ。
運ぶ。
運ぶ。
……いてててて。
こりゃー腰にくるなー。
「恵麻、あんま無理すんなよ?」
「桃弥と一緒ダカラ、ヘーキ」
何て事言うんだ、このお嬢様は。
そして美也子、睨む必要ねーって。
結局、時間一杯掘ったが深さは1.5mにしかならなかった。
面倒なので落とし穴の中でログアウト。
簡易結界さんの出番だ。
ログアウトしたオレらは佐々木さんの待つフードコートに向かった。
オレらの姿を見付けた佐々木さんが午後のティータイムの準備を始める。
オレらが席に着くと、お茶とケーキを配りながら成果を聞いてきた。
「ワニ退治は順調ですか?」
「いや、穴掘りが予想以上に厄介でなー」
「深さ1.5m。約1/7」
「そうですか」
「やっぱスコップが必要だなー」
「うむ」
「タワーシールドは役立ってるけどよー、1個っきゃねーからなー」
「3つは必要」
「だな」
「うむ」
お前らはどこぞの二首トカゲ人間か!
……あ。
そーいや、次は夜中のログインか。
5時過ぎには明るくなり始めるから、それまでが勝負なんだよなー。
でも、島に渡る舟もねーぞ?
どーすんだ?
「桃弥様、考え事に集中され過ぎますと大変な事になりますよ?」
そう言った佐々木さんがオレの背後から首に手を回して抱き着いてきた。
もちろん頭はグランドキャニオンに埋もれてる。
「あぁ、わりー」
佐々木さんの腕をタップして解放してもらう。
「折角でしたらお触りになっても宜しいのですよ?」
「ははは、まだ死にたくないんで遠慮しとく」
「残念です……」
そう言って離れる佐々木さん。
だからそー睨むなって、美也子。
「次にログインしたら夜中だろ? でもって、オレらにとっては最後の夜だ。……間に合わねーんじゃね? って思ってさ」
「言われてみれば」
「それに、島に渡る舟もねー」
「「「「「あ」」」」」
みんなも失念してたかー。
「忘れてたぜー!」
「うむ」
「たははー」
「ま、オレもさっき気付いたんだけどな?」
「どーする? 掘っても意味なくなるぞ?」
「ダメ元で湖周辺を探す」
「それくらいしかねーよなー」
「だろーな」
「うむ」
男3人で頷き合う。
「ゴブリン達が居ないだけマシよね」
「うんうん」
「ワニも夜は寝るはずデース」
「そうですね。片方ずつ目を閉じて頭を陸に揚げて眠ると聞いた事がございます」
「ほー、器用なこって」
「両目を瞑って寝るのは安全が確保出来る場合のみ」
「ま、戦わねーで済むならそれで良いさ」
「だな」
「うむ」
「じゃ、ログイン後は方針転換して湖の周辺探索。夜が明けたらゴブ狩りしつつ村に戻るって事で良いか?」
悟志の言葉にみんなが頷く。
こーしてオレらの方針が決まった。
「ですが、折角掘られた落とし穴が無駄になってしまいますね」
お茶のお代わりを注いで回りながら佐々木さんが言う。
「そーゆー事もある」
「失敗から学べば良いのよ」
「「うんうん」」
「そう……でございますね。では失礼して」
そー言ってオレの膝に座る佐々木さん。
って、おい!
「何にも学んでないじゃないのよ! このダメイド!」
「あら。先程は後ろから迫って失敗しましたので、前から迫ってみる事にしましたの」
「そーゆー事じゃなーい!」
明日は3話予定してます。