第20話
本日1話目です。
ログアウトして、ダイブスーツにジャケットを羽織ってダイブクローゼットを出る。
みんなと合流して佐々木さんの待つフードコートに向かう。
今日の弁当はおにぎりだった。
しかも50個も!
ただし、大きさはコンビニのおにぎりと比べるととても小さかったが。
五月ちゃんは相変わらずの少食で、おにぎりは3つしか食べられなかった。
それでも食べた方だと言う。
恵麻と佐々木さんはそれぞれ5個ずつだ。
何だかんだで結構食べた方だろう。
美也子は7個食べた。
年頃の女の子にしては食べた方だろう。
……ダイエットなんかされたら、ただでさえそんなに大きくない胸が……ハッ!?
寒気がするから考えるのは止めよう。
オレら男3人は10個ずつ食べた。
これくらい普通だよな。
むしろ、少し物足りないくらいだ。
ちなみに、おにぎりの具は、おかかに梅に鮭ほぐし、鰹みりんにシソ昆布、納豆、エビマヨ、シーチキン、だし巻き玉子に焼肉と盛り沢山だった。
恵麻ん家の料理人さん、マジGJ!
「それで、『月宵草』とやらは見付かったのでしょうか?」
佐々木さんがお茶を配りながら聞いてきた。
この辺の情報は恵麻経由で知ってるらしい。
「まだー」
五月ちゃんが答える。
両手で抱えたカップからちびちびお茶を啜る姿が愛らしい。
「そうなのですか」
「目下の懸案事項はワニ」
とは空牙。
確かにアイツは怖い。
「ワニ……ですか」
何やら考え込む佐々木さん。
「そう言えば、ワニは噛む力は500kgとか1tとか言われておりますね。ですが、口を開く力はとても弱いんだとか。そう考えると、何だか可愛らしく感じてしまいますね」
そう言って優雅に微笑む佐々木さん。
この巨乳、天使かっ!
あ、もちろんうちの美也子の方が天使度は高いっすよ?
天国に召されるって意味で……。
「なるほど。口さえ閉じさせてしまえば何とかなる……とは思えねーよなー……」
「どうやって閉じさせるかも問題」
「そりゃーお前、あれだ。うん。何かねーか?」
悟志と空牙が漫才やってら。
「あ」
そー言えば。
「キノコはどーだ?」
「キノコォ? って、あぁ! 「麻痺茸か」って俺の台詞!」
まだ漫才を続ける悟志と空牙。
お前ら仲良いな!
「でも、あの巨体だと相当食わせねーと効かないんじゃね?」
「効くまでの時間もな」
「湖に逃げられねーよーにもしねーとなー」
「悟志が囮」
「俺かよ!? って、それが妥当だよなー」
「落とし穴」
「落ちるかー?」
「勢いで」
「それって俺も落ちね?」
「……」
「何か言えよ!」
何時まで続くんだ? この漫才。
「ま、あのワニは必ずしも倒す必要はねーんだから、そのくらいにしとけよな」
「だな」
「うむ」
オレの指摘に同意する2人。
すると美也子が口を開いた。
「そう言えば……」
「どうした? 美也子」
「あのね? あの湖の真ん中に島があったの」
「島ぁ? 対岸じゃなくてか?」
「うん、間違いなく島だったよ? で、もしかしたらあそこにあるんじゃないかなー、なんて……」
「あるんじゃないかなーって、『月宵草』がか?」
「うん。だってさ、グランツさん達みたいなベテラン冒険者でも見付けられてないんだよ? だったらとんでもない場所にありそうだと思わない?」
「言われてみれば……」
確かにあのグランツさん達でさえ見付けられてねーってのは大きなヒントだよな。
って、みんな何見てんだ?
「これが婚約者同士の掛け合いか」
「流石だな」
「いーなー……」
「羨ましいデス」
「まだチャンスはありますよ、お嬢様。えぇ、ありますとも……」
佐々木さーん、目が死んでますよー。
「と、取り敢えず、キノコと落とし穴で罠に掛けてワニを倒してみるって事で」
「そ、そうね。そうしましょ」
「オレと美也子と五月ちゃんでキノコを探しつつゴブリン狩り、悟志と空牙が落とし穴掘りで、恵麻がその周辺監視って事で」
そー言って一気にお茶を飲み干した。
さて、本日2度目のログインだ。
前回は湖が見える範囲の森の中でログアウトしたんで、悟志にそこからのログインを選択してもらう。
悟志が選択するまではログイン待機中として待たされる。
全員がログイン出来たのを確認してから、さっき確認した通り二手に分かれる。
美也子と五月ちゃんを連れて森を彷徨く。
美也子、五月ちゃん、オレの順番だ。
美也子が前半分の索敵をして、オレが後方確認だ。
五月ちゃんはその手のスキルを持ってないから、いつでも魔法が使えるように用心するだけだな。
まぁ、キノコ探し担当でも良いんだが、あんまりキノコに集中されても危ねーからな。
30分程彷徨いた。
悟志達が落とし穴を掘ってる地点からあんまり離れ過ぎても問題なんで、そんなにゴブリン共を見掛けねー。
今のところ僅かに2度、3パーティーのみだ。
キノコも惑い茸っつー幻覚を見せる危ねーキノコと、食用のシメジのみだ。
「やっぱワニのせーなんかねー?」
「ゴブゴブ居ないねー」
「でも、キノコはそこそこあるわね。シメジばっかりだけど」
「良いんじゃね? 食えるんだし」
「麻痺茸さん出てこーい」
オレらは割と暢気に散策中だ。
「麻痺茸あったのって、最初の方だけ?」
「いや、湖に着くちょっと前にも見付けたな」
「東側にしか生えてないのかな?」
「どーだろな」
「ちょっと遠いけど行ってみない?」
「行くならーさっくん達にゆった方が良いんじゃないー?」
「そーだな。そーしよっか」
て事で掘り部隊と合流する事にした。
落とし穴はまだそんなに掘れてなかった。
まぁ、スコップもねーんだから仕方ない。
取り敢えず悟志達に、湖の東側を探しに行くと告げる。
「分かった。気を付けろよ? あと、五月ちゃんも居る事を忘れてんなよ?」
悟志にニヤニヤしながら言われたから、悟志の顔に掘り出されてた土を投げ付けてやった。