第2話
本日2話目の投稿です。
第1話を読んでないならそちらからどうぞ。
「よっ! お疲れー」
村の入り口の門をくぐったオレらを、悟志が右手を挙げて出迎える。
みんなを代表してオレが右手を挙げてハイタッチしつつ応える。
「よう、悟志。結局死に戻ったんだな」
「まーなー」
「どの辺まで運べた?」
「川に突き当たってグレートボアと一緒に流されて滝壺ドボン!」
「にゃはははは☆」
「笑い事じゃねーよ……。いくらゲームだからっつっても、溺死はツラかったんだぜー?」
五月ちゃんの笑いに悟志はオーバーにリアクションを返す。
溺れ死ぬまで数分掛かったらしい。
悟志の今の言葉からも分かる通り、今現在オレらが居るのは、めっちゃリアルなバーチャル空間で遊べるフルダイブ型のMORPG『ワールドハーフ・オンライン』の初期村・ケトル村の中央広場だ。
ライトノベルなんかでお馴染みのVR技術を使ったゲームなんだけど、流石にラノベとかみたいに個人所有が出来るような規模にまでは小型化出来てなくって、アミューズメントパークの大型筐体で1回1時間以内1000円でプレイ出来るのがやっとなんだ。
一応長時間契約割引プラス学生割引で50時間分10000円ってゆー料金プランもあって、大抵の学生プレイヤーはこっちを選択してんのが殆どなんだけどな!
1つのアミューズメントパークにダイブクローゼットって言う個室が大体50個くらいあって、それの中央制御コンピューターがデカデカと鎮座してるんだよなー。
SA⚪みたいなヘルメット型やゴーグル型のフルダイブマシンなんてのは何時になったら出来るのか、見当もつかないらしい。
ダイブクローゼットの中で専用のダイブスーツに着替え、酸素吸入機の付いたヘルメットを被ってからダイブカプセルっつー酸素カプセルみたいなベッドに寝そべって各種ケーブルやホースを繋いでからダイブインするんだけど、このダイブスーツってのがピッチピチなんだわ。
所謂、全身タイツみたいな感じだな!
ダイブ中のオレらの体を動かないようにある程度弛緩させつつも排せつ物なんかが漏れ出さないように微妙で絶妙なバランスで調整するための措置らしいんだが、体型の気になる女の子にはとんでもなく不評らしい。
異常事態でもなければ別に見られる訳じゃねーんだがな。
伸縮自在の新素材で出来てるらしくて、スイッチ1つで体にフィットするので成長期の子供でも問題ないらしい。
後はまー、ラノベではお馴染みの脳波とのダイレクトコネクトで情報をやりとりするって感じだな!
当然ながらクロックアップもされてて、現実での1時間でゲーム内の4時間になってる。
これ以上のクロックアップは脳に与える影響が大き過ぎる可能性があるとかで許可が下りなかったらしい。
実験中に死亡事故が多発したらしいからなー。
理論値としては1000倍までは行けるみたいだけどな!
もっとも、数分で脳が沸騰しちまったらしいけどな!
それと、連続プレイ時間はリアル1時間までで、その後には16時間のインターバルを挟まなくてはならないんだよなー。
これはあまり連続してダイブし続けて仮想現実に引き込まれ過ぎるのを防止するためらしい。
ま、それでも毎日4時間は遊べんだから問題ないっちゃーないな。
ととと、オレらがやってるゲームの説明が途中だったな!
『ワールドハーフ・オンライン』では最初にキャラメイクするんだけど、基本的にアバターは弄れない。
変えられるのは髪の毛や肌や目の色とかのディテール部分くらい。
身長や体型、性別といった大本の部分は変更出来ないようになってる。
これは現実の肉体との齟齬を無くすための措置らしい。
で、細かい所を変更するなりしたら、今度は初期クラスの選択だ。
初期クラスは7つあって、剣と盾を扱い仲間を守る盾になるのがメインのソードベアラー、両手斧による攻撃で大ダメージを狙うアックスベアラー、両手槍による攻撃で中距離を担うポールベアラー、短剣やナイフなんかを使い鍵開けや罠設置・解除が得意なシーフ、弓や手斧なんかを使い遠距離から攻撃したり野外での追跡術なんかが得意なレンジャー、古代語魔法を使っての攻撃が得意なマジシャン、神に祈りを捧げて回復などのサポートが得意なクレリック、となる。
括りとしては前者5つが物理クラス、残りの2つが魔法クラスと呼ばれている。
とは言っても、物理クラスにも魔法攻撃に似た『ウェポンスキル』と言う技がいくつかあるし、魔法クラスにも土魔法のような物理攻撃に分類される攻撃魔法もあったりするらしい。
ま、オレらにはまだまだ先の話だがな!
ちなみにオレらのパーティーは、ソードベアラーの悟志、ポールベアラーの空牙、シーフのオレ・桃弥、レンジャーの美也子、マジシャンの五月ちゃん、クレリックの恵麻の6人だ。
アックスベアラー以外が揃ってる、バランスの良いパーティーだと思ってるぜ!
で、まぁ、ゲーム自体は『グランドクエスト』って言われてるメインシナリオに関わるクエストをこなしていくのが主流らしいが、『グランドクエスト』をやらなくてもある程度の場所は行けるしかなり遊べるらしい。
自分のアバターはモンスターを倒して行けばフィジカルレベルが上がって肉体的に強くなる。
それとは別にクラスランクっつーのもあって、そっちはクラスに見合った行動を取って行けば上がって、クラススキルポイントってのが貰える。
そのクラススキルポイントを使って各クラスのスキルを強化して行くんだけど、全部のスキルをMAXまで上げるのは無理なんだってさ。
だから、良く考えてスキルを強化していく必要がある。
広く浅くスキルを育てて中途半端ながらもオールラウンダーにするも良し、尖鋭化させてスペシャリストにするも良し、って訳だ。
スキル自体は前提スキルやスキルランクなどを満たしていれば、各種クラスの師匠NPCから伝授してもらう事が出来る。
他のプレイヤーから伝授してもらう事も出来なくはないが、大抵の場合は法外な金額を要求されたりするのでトラブルの元らしい。
まぁ、師範代クエストってのをクリアしたプレイヤーにしか出来ないって話だから仕方ないっちゃー仕方ないよなー。
かなり面倒なクエストらしいし。
っと。
んでまぁ、グレートボアと滝壺心中して死に戻ってきた悟志と合流したんだが、死に戻りしたせいで悟志はデスペナルティーを食らってたりするんだなー。
オレらの中では初めてのデスペナなんで、どんな感じか聞いてみる。
「悟志ー、デスペナどんな感じよ?」
「そうだなー、ステータスが全部半分になってんな。15分はこのまんまみてーだな」
「15分……結構長いわね」
「ま、仕方ねーさ。死んじまったんだしな」
「経験値が減ったりアイテムや装備を落としたりするデスペナじゃないだけマシ」
空牙の一言にみんな頷く。
前にやってたフルダイブじゃないMMORPGでは、死ぬ度に次のレベルになるまでに必要な経験値の1割が減るうえに、装備やアイテムは死体ごとその場に1時間晒されて、他のプレイヤーに持って行かれるなんてのはざらにあったんだよなー。
そのうえPK行為も可能だったからすっげー殺伐としてたしな。
それに比べりゃあ『ワールドハーフ・オンライン』は親切仕様だな。
「よし! んじゃ、冒険者ギルドに薬草を納品に行きますか!」
「おう!」
「ん」
「そうね」
「「うん!」」
オレの言葉にみんなが頷いた。