第17話
本日2話目です。
ご注意ください。
美也子と一緒に手を繋いで帰ると、美也子の家の前にには家族が勢揃いだった。
時間は夜の11時を過ぎてるからか美也子の弟の姿はなく、姉ちゃんとおじさんとおばさんの3人だったが。
オレらが手を繋いで帰って来たんで、おじさんはちょっと仏頂面だ。
逆に、おばさんと姉ちゃんはニコニコ顔だ。
最初はみんな怖い顔と心配顔のミックス顔だったんだけどな?
外で話すのも近所迷惑になるんで美也子ん家に入る。
もちろん手は繋いがれたままなんで、オレも上がり込む。
美也子がおじさんに叱られてる間もずっと隣に座って手を繋いでた。
「……で? 原因は何なんだ?」
何故かおじさんがオレに聞いてきた。
何故オレに聞く? と思わなくもないが、美也子が俯いたまま喋らないんだから仕方ねー、のか?
ちなみに、俯いた髪の毛の隙間から見える美也子の口許は嬉しそうに歪んでた。
ダメだコイツ……。
「えーっと、多分なんですが……」
「うん、何だ?」
おじさんの視線に殺気が籠り始めた気がする……。
「嫉妬と生理が重なって情緒不安定になっ……イタタタタ!」
繋いだ美也子の右手がオレの左手を力一杯握り締める。
所謂『恋人繋ぎ』を強要されてたから、手の甲に爪が食い込んでスゲー痛い。
「なんで分かるのよ」
美也子が呟く。
いや、だって、洞穴で見付けた時、パンツ丸見えだったし、そこにナプキンの羽が見えたからモロバレでしょ。
いや、言わないけどさ。
曖昧な笑顔で誤魔化す。
「あー……その、なんだ。そういう事は良くある事なのか? 母さん」
「そうねぇ、思春期じゃなくてもあるとは聞くわね」
「そうか……」
こーゆー話って、男は例え親でもし辛いよなー。
「まぁ、桃弥が煮え切らねー態度なのが問題だったんだろーけど、その、な?」
「はい。将来結婚する約束もしてまあああああ!?」
「いつだ! いつの間にそんな約束を!!! まさか既に事に及んで!?」
おじさんが襟首を掴んで前後に揺さぶる。
それを止めようと必死になる美也子。
「止めてお父さん! 桃弥が死んじゃう!」
「いつの間に! いつの間にぃ!!」
「あああああ」
おじさんの暴走が止まらねー!
と思ったら、姉ちゃんから救いの手が。
「確か、小学校の1年の時だっけ? 良く覚えてたわね? って言うか、あれってお互いに本気だったんだ?」
何故知ってるんだ、姉ちゃん……。
あ、おじさんが止まった。
「……あん時からか……」
そう言って、チラッと美也子の左足を見るおじさん。
今では目立たなくなったが、美也子の左足には犬に噛まれた痕が残ってる。
オレらが初めて会った後の帰り道で、美也子が犬に噛まれたんだ。
美也子に噛みついた犬をオレは必死に棒で叩いて追い払った。
美也子は4針も縫う大怪我を負った。
毎日見舞いに行き、送り迎えもした。
そりゃ「およめさんになる」って言われもするわな。
もちろんオレも「みやちゃんをまもる!」とか言ってたし、「いっしょうしあわせにする!」とも宣言した。
あ。
そうか。
そういや小学6年の修学旅行の時、別のクラスの女子に呼び出されて告白されたんだったな。
あん時は舞い上がっちまって保留したんだが、「予約ね」とか言われて女子に抱き付かれてキスされたんだ。
あとで断ったけどな。
でも、キスされた場面だけを美也子が見てたんじゃ?
それで勘違いした美也子がオレと距離を置こうと思って狂暴化した?
そのうえ、今も五月ちゃんや恵麻の好意を野放しにしてるし、佐々木さんの巨乳にデレデレしてる。
なのに時々思い出したように優しくされたら不安にもなるよなー。
て事で、全面的にオレのせいだな。
……しょーもない男なのにな。
よし! ここは1発、男になろう!
覚悟完了だ!
勢いって大事だよな!
「美也子!」
おじさんに襟首捕まれたまま美也子を見る。
「成人したら結婚しよおおおおおおおおお!」
「親の目の前でプロポーズたぁ良い度胸だ!」
「お父さん!」
またも揺すぶられた。
そして正座させられた。
美也子もオレの正面に正座させられた。
そしておじさんが改めて言う。
「きちんと面と向かって言ってやれ」
そう言うおじさんは真面目な顔をしてた。
おばさんは嬉しそうで、姉ちゃんはニヤニヤしてる。
オレは真っ赤になってる。
正面に座る美也子を見る。
腫れぼったい顔を見せたくないみたいで伏せたままだ。
美也子も真っ赤になってるんだろーな。
再度覚悟を決めて美也子に言う。
「美也子。成人したら結婚してください。お願いします」
言い終わり頭を下げる。
「はい、こちらこそ末永くよろしくお願いします」
美也子も同じようにしてるんだろう。
「よしっ! 色々あったがめでたい日になったな!」
そう言いながらおじさんがオレらの頭を撫でた。
「あ、『娘さんをください』宣言は成人してから来いよ? それより前に来たらぶっ飛ばすからな? この意味、分かるよな?」
「お父さん!?」
「あはは……肝に命じますけど、我慢出来るかはちょっと……」
「桃弥?」
あ、美也子の視線が冷たい。
いや、顔は真っ赤だしニマニマしてる?
「今日は泊まっていきなさい? 美也子と一緒でいいよね?」
「そうねー。我慢出来るか試してみると良いわね」
「ちょっとお母さんもお姉ちゃんも何言ってんの!?」
「あ、はい。そうします」
「桃弥まで!?」
「じゃ、まずは一緒に風呂に入るか?」
「お父さんまで……いい加減にしないとみんな殴るよ……?」
今度こそ美也子の視線が冷たくなった。
流石に潮時だ。
おじさん達も分かってるっぽい。
流石家族だな。
「て事なんで今日は帰ります。お泊まりはまたいつか美也子と2人きりでしますんで」
そう言いながら美也子を抱き寄せる。
……あれ? 殴られるかと思ったら、動きが止まった?
まぁ良いや。
「じゃ、おやすみ」
そう言って美也子の頬に口付けして帰宅した。
美也子は固まったままだった。
あー……、明日何て言おう?




