第12話
本日1話目です。
本日2度目のログインだ。
今回は1時間45分でログアウト予定だ。
ちなみに、さっきの昼飯の時はダイブスーツの上にジャケットを羽織って食ってた。
普通は店舗毎に用意されてるレンタルダイブスーツを借りてプレイするんだが、恵麻がオレらと一緒に『ワールドハーフ・オンライン』をプレイすると知った恵麻の爺さんが、オレらの分も含めて専用ダイブスーツを用意してくれたんだよなー。
さすがに最初は断ったんだぜ?
何せ、1着25万円もするからな、これ。
さすがに孫娘の友達ってだけで受け取れる程、神経図太くねーよ……。
でも、結局は押しきられたっつーか、問答無用で送り付けて来やがったから、みんなで話し合って「いつか返済する」って決めた。
まー、あの爺さんなら受け取らねー可能性もあるけどなー。
じゃなくて。
ダイブスーツを脱ぐ手間は省けるが、それでもケーブル類の着脱とかで5分は掛かるから少し早めにログアウトしないと佐々木さんを待たせる羽目になるからな。
ついでに言うと、ダイブスーツに着替えるのは、ダイブクローゼットに繋がる廊下にある更衣室だ。
鍵付きロッカーもあるから大丈夫! ……なはずだ。
ログインしたオレらは早速冒険者ギルドに向かった。
もちろんクラススキルを習得するためだ。
オレらは全員違うクラスだから、それぞれの指導員NPCも別々だ。
「じゃ、スキルを習得したら掲示板前に集合な」
悟志の言葉にみんなが頷き、指導員NPCのところに向かう。
オレもシーフ担当の指導員NPCの元を訪れ、スキル習得のチュートリアルを受ける。
今回は『罠察知』だからスキル習得後に専用エリアに連れていかれ、罠を察知する感覚を何度か試させられた。
『気配察知』の時は周囲がなんか聴覚がゾワゾワする感覚を味わわされたが、今回は罠があるところに近付くと視覚がピクピクする感覚を味わわされた。
どっちもあくまで「近くに感じる」ってだけで、詳細な位置までは分からないんだよなー。
多分、スキルの熟練度が上がれば、その辺も分かるようになるんじゃねーかなー。
5分程『罠察知』の感覚を味わって、なんとなくスキルの感覚を掴んだ。
感覚を掴んだあとは、一般的な罠の種類を教わって、「この罠はここで判断する」ってのを実地で習った。
結局15分程掛かったが、指導員NPCも合格点を与えてくれたし、あとは実践で腕を研くしかないな。
ギルドホールに戻ってみると、オレが一番最後だったようだ。
5人共掲示板の前に居て、指導内容を話し合ってた。
「オレが最後かー」
そう言いつつみんなに近寄る。
「遅かったな」
「罠の種類が結構な数あってなー。1つ1つ見付け方を指導されてたからな」
「へー、そんなの習うんだ?」
「あぁ。でも罠が何かが分かっても、まだ解除出来るだけのスキルはねーんだよなー。やろうと思えば出来なくはねーけど」
「『罠解除』はランク7だ」
「ランク5は『鍵開け』だしなー」
「ランク9で『罠設置』だったよねー」
「戦闘系スキルは暫く増えねーんだよなー、シーフは」
「仕方ねーさ。さて、全員揃ったしリームさんとこ行ってゴブリン討伐依頼受けて、さっさと出発しよーぜ!」
そう言いつつ、掲示板からゴブリン討伐依頼の依頼票を外し、悟志はギルドカウンターのリームさんのところに向かった。
「ちーっす! 今日はゴブリン討伐に行ってくるから手続きよろしく!」
「畏まりました。では、パーティーライセンスに登録しますね」
リームさんに茶色いカードを渡す悟志。
この茶色いカードがパーティーライセンスだ。
茶色いのはオレらのパーティーランクがカッパーだから。
貢献度によっては銀色のシルバーや金色のゴールド、白色のプラチナや虹色のオリハルコンといったランクに上がっていく。
ま、オレらは暫くはカッパーだろうけどな!
で、討伐依頼の場合はこのパーティーライセンスに依頼を登録しておくと、対象を倒すだけで自動的にカウントしてくれるんだ。
これをしておかないと、折角倒しても依頼達成にはならないし、護衛依頼なんかも同じだ。
忘れねーよーにしねーとな。
ちなみに、採集依頼の場合は現物引渡し時に登録すれば良かったりする。
「はい、登録終了です。お気を付けて」
そう言ってリームさんが頭を下げる。
「はーい! 行ってきまーす」
五月ちゃんの行ってきますの声でオレらは冒険者ギルドから出発する。
リームさんは五月ちゃんと手を振り合っていた。
村唯一の門から出て北に向かい森を目指す。
森までの道は整備されていてモンスターも殆ど出ない。
15分程で森の入り口に到着し、そこから森の外側の沿うように西へと向かう。
ここからは整備された道もなく、下草の背が高いため見通しも利かない。
注意深く進まないと出会い頭での戦闘になっちまう。
だから、下草を刈りながら少しずつ慎重に進む。
下草を刈る範囲はおよそ幅3m程。
刈るのは空牙の担当だ。
正直、草を踏み倒すだけでも良いんだが、それだと良く起き上がってくるんだよな。
そんなこんなで20分程刈り進むと、今度は見晴らしの良い草原に出た。
ここからがゴブリンの棲息域だ。
暫く歩いていくと第1ゴブリンパーティーらしき集団発見だ。
向こうもこっちに気付いたらしく、ギャーギャー喚いてやがる。
「ゴブリン3匹、全部剣だね」
ここへ来てやっと美也子が『視覚強化』の能力を発揮する。
オレらはゴブリンらしき物体としか見えねーが、美也子にはキチンとゴブリンの詳細な格好まで判別出来ているようだ。
「んじゃ、俺が『挑発』使ったら、俺が攻撃してるヤツから倒していってくれ」
「分かった」
「行くぞ!」
悟志の号令で駆け出すオレら。
ある程度近付いたところで悟志が『シールドブーメラン』を使い、一番前を走ってたゴブリンにぶち当てる。
そしてゴブリン3匹に接近したら『挑発』を使って、3匹のゴブリンのヘイトを集めた。
そして最初に『シールドブーメラン』をぶつけたゴブリンに斬り付けながら、左手の盾でゴブリンを押し倒したり蹴倒したりしながら、なるべく1匹ずつ戦えるようにコントロールしていく。
コイツ、どこでそんなテクニック研いてたんだ?
オレは大きく迂回してゴブリン達の背後に回り、空牙は悟志に蹴倒されたゴブリンを牽制。
美也子と五月ちゃんが遠距離から攻撃するために空牙と反対方向に展開し攻撃開始。
美也子の『シャープシュート』と五月ちゃんの『ファイアボルト』を食らったゴブリンがあっさり死亡した。
これで残りは2匹。
出番を奪われたオレは悟志の盾で押し倒されたゴブリンの背後を狙う。
起き上がって駆け出そうとしたゴブリンの背後から首筋を狙って『バックスタブ』を使う。
このウェポンスキルは背後からのクリティカル攻撃の威力を上げてくれる。
狙い通りゴブリンの首筋に決まったオレの一撃でゴブリンは死亡。
残り1匹。
と思ったら、牽制してたはずの空牙の槍がゴブリンの喉を貫いてた。
てゆーか、顔にも貫かれた跡があるな。
て事は、二段突きの『ダブルスラスト』か。
あれじゃー助からねーわ。
こうして初めての対パーティー戦闘は余裕のうちに終わった。