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攻略対象が典型的な貴族の場合のまともなヒロインと友人~リリアン視点~後編

作者: 向日葵

http://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/833431/の続きです。回想の後、リリアンが学校に入った直後くらいから始まります。

この世界では、勇者召喚というものがある。«チキュウ»や、«モルシア»などいう異世界から現れた彼らは、ありえない程の魔力、或いは頭脳など、卓越した点を必ず持っていたと伝えられる。リルアスト王国の祖先である初代王妃も、«チキュウ»から現れた異世界人という伝承もある。実際、初代王妃がやった(やらかした)事は大量にあり、今でも真偽がとわれている。

初めは、『魔王』を倒すために呼ばれていた。

だが、彼らのあまりの強さに欲をかいた国王(名前は伝えられていない。)が、召喚した勇者()を洗脳し、当時戦争していた国に向かって放ち、大勝利を収めたことがきっかけでわれもわれもと戦争に勇者…いや、兵器を使い始めた。これが後の暗黒時代である。

200年前、この世界«アインソルト»では、第五次世界大戦が行われていた。そんな中、人間離れした能力を持つ彼らは対人戦略兵器として使われ、殺し合いをさせられていた。兵器が疑問を持たぬよう、楔をつけて。しかし、その力を超える者は現れる。ある時、ある聡い女性がこの事について疑問を抱いた。決して他のものは気づかない、気づかなくさせられていることに気づいてしまった。


〖何故私達は殺し合いをさせられているのだろう 〗


単純な疑問が大きな波紋を呼んだ。ある者は国王に問い詰め。ある者は全てに絶望し。そうして望んだのは還ること。懐かしき故郷に。愛おしき故郷に。しかし、ほぼ例外なく彼らの手は血で濡れていた。人を殺すことを知ってしまった彼らが元の世界に戻ったとして、また元のように過ごせるか。――答えは〘 否〙。出来るはずかない。忘れようにも、殺された者の遺族が忘れさせない。そこに解決策を見出したのは、誰であろう、リルアスト王国初代王妃であるリナ・タナカである。«楔»を打ち破り、また召喚魔法や契約魔法に特化しており、血で濡れていない例外中の例外である彼女は、彼らを国に返すことが出来た。彼女は、永遠に忘れさせないことによって彼らの罰とした。そして自らはこの世界に残り、2度と勇者召喚が起こらないように監視し続けたと言われている。


――リルアスト王国物語、序章





――王族を超える魔力を持つ、黒髪黒目の平民アリア。«チキュウ»の«ニホン»から訪れた者は黒髪黒目ということはこのわたくしがよーく知っている。そしてこの国では黒髪がいないと言ってもいいくらいにいない。なんせ貴族や教会からの迫害が強い。黒は魔族の証らしいからな。いるとしたらせいぜい濃いめの茶髪だ。黒髪とは違う。そこに現れた、黒髪黒目の膨大な魔力を持つ者。…いや、少しそれは考えすぎか。だけど、頭に入れておこう。今やるべき事はアリアを守ることだ。うん。




10月3日から、わたくしは学園に通い始めた。シルヴィに調べさせたところ、アリアを率先してイジメをしているのが4割、傍観しているのが6割と言ったところである。残りは何をしているのかとおもったが、曰く、

〖平民のために王家に喧嘩を売るのは 馬鹿らしい。〗

〖まず興味無し 〗

らしい。こいつらがアリアに対して少しでも気にかけていればこんな事にはならなかったのだと思い、ふざけんなよと切れかけてついうっかり持っていた報告書を破りかけてしまった。いけないいけない。紙はあまり貴重ではないが、シルヴィが頑張ってくれたものだ。大切にしないと。とりあえず、この学園にいる生徒の親達とは後で大切な話をするとしようそうしよう。なあに、3年の空白ができたとしても、貴族の代わりはいくらでもいる。それが有能無能関係なく。…世襲制やめてもらうよう後でお父様に掛け合おう。そういえばマイル伯爵のとこの三男坊は、結構な天才らしい。そいつ次期伯爵になれるようにしないと…いや、それよりも直属の部下にした方がいいか。うん。

あと、生徒会マジでうざい。何なの?人のやることにいちゃもんつけなきゃいけない病にでもかかってんのかあいつら。うざさが勝って予想よりはましだ。精神的に。悪を断罪する生徒会長(笑)に付き従う騎士(笑)。え?もちろん全部親に伝わってますよ?近頃はあれの魔力封印するための魔道具つくりはじめたとか。大魔法師の青筋がえげつないことになってた。怖いっす。宰相も怖かった。笑ってるのに目が笑ってない。新たなトラウマさんが追加されました。騎士団長に至っては、あんの馬鹿もんがあー!!と絶叫していた。通信魔法をつい切りたくなるくらいうるさかった。



「姫様。」

「ああ、シルヴィ。どうだったの?」

「申し訳ございません。あちこち探りを入れさせましたが、20年前に母親といきなり現れたということしかわかりませんでした。」

「…そう。やっぱり。では、聞き方を変えるわ、シルヴィ。…あの娘、どう?」


この聞き方をするのは久しぶりだ。ほとんど〖影 〗としてのシルヴィとしか接触してこなかったからな。


「お?いいのか?」

「ええ。許可します。」


こいつのタメ口も久しぶりだ。〖王女 〗としてではない1人の人間のような感じがするから結構好きなのだが、残念ながらあまりできる機会は少ない。…こんちくしょう。なんか落ち着くのに。


「そうだなあ。異世界の匂いはする。が、ごくわずか、というかほとんどゼロだ。それよりも、気になることがある。…アリアの母親、だったけか?この写真の奴。」


歳をとったアリアのような顔をしている人を指さす。

…最悪の予想が当たってる?え、嘘?


「…その方がどうかした?」


手が震える。ギュッと握りしめて返事を待つ。大丈夫。大丈夫。落ち着け。動揺を悟られるな。普通に振舞え。頭ポンポンと叩かれる。はは、バレてーら。


「こいつからするんだよ。異世界の〖匂い 〗。ちょっと嗅いだが、あれは〖落ち人 〗じゃねえ。〖召喚 〗されたやつの匂いだ。」


「…はぁー…最悪の予想が当たってしまっていたみたいね。」


まじかー。当たって欲しくなかったのになー。隠蔽したいよー。まー無理なんだけどねー。えー。げんじつとーひしたいよー。というかそれがわかるとかさすがシルヴィだなー。


「いや、でも大丈夫だろ。お前には俺がいるし。」

「他の国民の安全を保証しなさいな。」


こいつは玉にドキッとするような台詞を吐くのが恐ろしい。最初はどんだけドキドキしたことか…まあ、なれたんだけど。というか、過剰反応はダメだよな、うん。まあ、ショックで元に戻ったけど。その無駄な魅力はほかの方をおとす時に使ってください。


「…とりあえず、こちらで手を打っておくわ。ご苦労さま。」

「了解しました。」


こいつの変わり身の速さはもはや詐欺だ。



















「どうしてこうなった。」


そう呟く友人に対して、わたくしは何も出来ない。あの日、守るって誓ったのに。やはり、わたくしは無力だ。



「…大丈夫ですか?」

「これが大丈夫に見えるのですか?」

「…申し訳ありません。」


わたくしに対して令嬢モードになるくらいはやばいらしい。そりゃそうだ。彼女の原点ともいうべき点がなくなったのだから。…あのクソバカどもが…!!


「まさか、あれがあんなにも阿呆だとは思わなかったのです。」

「うん。私も思わなかったです。」


というか、思いたくなかったです。はい。まぁ、実際にイジメられてたんだけど。まさかここまでするとはね。


「まさか、本当に生徒会が率先してイジメしているとは…」

「…信じたく、無かったですね…」


人の信頼とかぶち壊しやがって。いや、元からそんなものなかったか。


「もう少しだけ耐えて頂けませんか?」

「いや、もうこれ張り出された時点でダメでしょう。」


確かに。と思った。いや、言い任されるのはあかん。ファイト!自分!!…無駄だろうけどね。


「何とか撤回させますから…!」

「…王は間違ってはならない。いや、間違えない。でしたっけ?」

「…」

「リルアスト王国法第12条、王は全ての統治者であり神である。よって王の命令は絶対である。もし背いたものがいた場合、その者を極刑と処す。」


…やはり、アリアは優秀だ。あの量の法律をこの分だと全部覚えているだろう。だからこそ、逃してはならない人材だというのに…!


「…ですが、あれはまだ王ではございません!どうか、考え直してくださいませ!」

「無理だよ。よく見なよ。よりにもよって王家の名前で書いてある。」


「生徒番号12542698番 アリア

上のものを退学処分に処する



リルアスト王国 第一王子

アルフレッド・サウスバード・ジルベスタン」


…理事長の名前が書かれていない。おそらく独断だろう。王家の名前を使い、また勝手に人を退学処分にする。流石にこれはアウトだ。外面、というか勉強と魔法の出来がいいというだけで見逃されていた(そこまで見逃されてなかったけど)事が、もう既に見逃せないレベルまで来た。…こいつの王家追放は、もう確定だろう。それを止めなかったという点で、宰相の息子や騎士団長の息子、魔術師の天才児や時期公爵双子も同じ処分だろう。自業自得だが。わたくしにも、見逃していたという点では、自業自得だ。大切な友人を失った。


「母さんは?」


母親の心配をするのがなんともアリアらしい。既にシルヴィに向かわせておいた。そして、気になる点も確認させておいた。…結果?察してくださいお願いします。


「保護はもう完了しています。アレに害される可能性が非常に高かったので。最初は驚いておられましたが、事情を説明するとあなたの心配をされていました。」

「あー。ちなみになんて?」

「無理しすぎたら、ニゴリアルマード10個食わせる、らしいです。」

「ひいっ。」


ニゴリアルマードってなんだろう。退学されても苦笑だけだったアリアが、一気に真っ青になっただと??そういえば玉に父様が食べてたような?食べるといったら、かあさまに全力で止められたけど。あの必死さは凄かった。顔が鬼だったもん。後で父様は説教受けてた。


「あの、ニゴリアルマードとは?」

「…母さんのどれくらい食べ物を辛くできるかという挑戦によって出来た。ちなみに材料は、チゴ、アルマ、ニズリアン。」

「!?」

「ちなみにそれを5こずつ使い、母さんの圧縮魔法で小さく「そこまででお願いします。」


自他ともに認める甘党としてはこれ以上聞きたくないでござる。単品でも無理なのに、全部合わさってるですって?何その最強兵器。普通に食べてた父様がとても恐ろしく見えてきたんですけど。え?そういえばシルヴィも食ってたよな、あれ。


「ねえ、あれ消したら何も無かったことには?」

「…申し訳ありません。撤回は既に不可能です。」

「…だよね。」


早朝だといえ、既に何人かに見られた後だろう。不特定多数に見られた場合、もうどうしようもない。口止めしようにも、誰にしていいかわからない以上、不可能だ。…友人の頼みごとすら聞けないのか、わたくしは。


「ねえ、一旦部屋に戻らない?ここに人が集まってきた。」

「そうしましょう。」



『転移テレポート

我らの部屋まで飛ばせ』


相変わらず、見事な呪文だ。それがもう見えないとなると、とても悲しい…どころじゃなく、あいつらに殺意が湧きまくる。



「ルームシェア出来たのがリリーで良かったよ。」

「何ですか、いきなり。」


びびったんだけど。脳内拷問百科事典ひっくり返してたから。今のところの候補は拷問魔法と物理無効魔法かけての痛覚そのままで火あぶりコースが筆頭…バレてないよな?


「いや、今日が最後に会える日だから、全部言おうと思って。」


よしセーフ。バレてない。流石にわたくし唯一の友人に怖がられんのはきつい。え?他の友人?…学校で最重要と言ってもいい人脈作りなのに、どこかの誰かさんのせいでできませんでしたとも。まあ、いい駒はいたからいいんだけど。あれ?わたくし、あいつより友達少ない?…だ、大丈夫。だってシルヴィがいるもの!……それ入れても2人。グスン。


「リリーは、泣きそうだった私にごめんって言って謝ってくれた。」

「っ、それは!」

「うん、その時私もグレかけてたからね。あの時、あんな事言ってごめん。」

「…ゴメンは顔を合わせて言うのでは無かったのですか?」

「準備してるからダメー。」


…泣いているのだろうか?声が少し震えている。気づかない振りをして、聞き逃す。小さいカバンに詰めているが、おそらくあれも圧縮魔法やら空間魔法が使われているのだろう。…結構あれ魔力使うんだけどなー。というか、わたくしの唯一の得意魔法だったんだけど。それをこうもあっさりと。…ま、まあ、使える空間は私の方がおおきいし!気にしてなんかないし!!微妙に遠い目をしながらアリアの場所を見る。ルームシェアしても、いい?と聞いた時のアリアは凄く可愛かった。ついうっかり萌えてしまった。しかも!ウル目で!!上目遣い!!!もちろん快諾したよね。今となっては懐かしい思い出。シンプル・イズ・ベストな、とてもアリアらしい実用的な部屋。わたくしのこと?聞かないでください。青が好きなんだよう。妙にキラキラしてしまう。なぜだ。これがロイヤルパワーなのか…(驚愕)。




「…よし、終わり。」

「行ってしまうのですか?」

「うん。まあね?」


実用的過ぎて、物が少なすぎる。だから、あっという間に終わった。こっそり入れたアレ、いつ気がつくかな?


「一応冒険者として身を立てようと思う。母さんの事は頼んでもいいんだよね?」


アリアが冒険者かー。ならこっそり会いに行ってもいいよね。うん。え、学校?アリアがいないのにいる意味ある( ^∀^)?目付け役?誰に?第一王子でも何でもないやつにする意味は?


「もちろん。」

「なら任せた。とりあえず、シンラビ町にあるギルドいくよ。治安ちょっと悪いけど、今の私にはちょうど良さそうだし。」

「…必ず、あの阿呆を引きずり落として見せます…!!」

「うん。頼んだ。」


拷問百科事典のうち、水飲みの刑というのが一番良さそうだ。いくらでも水の飲まされるというのは、さぞ苦しかろうな…ふっふっふ。しかも!魔力使わないので、魔法耐性が効かない!!これに決めたァっ!騎士団長やら宰相はまた独自に何かを用意していたけと、わたくしの本能が聞くなと訴えていた。わたくしは命が惜しいです。


「さようなら、とはいいたくないのですが…」

「奇遇だね。私もだよ。だからこうしよう。」




「またな、リリー。」

「…ではまた次の機会に。アリア。」




その時には既にあいつらは蹴落とされているぞ。ということは絶対に伝えない。絶対に絶対に。あの方にも口止めされているし、何よりこんなに綺麗なアリアを汚したくないでごさる(本音)!!



さあ、報復しようか。

(今までの怒り、アリアの悲しみ、苦しみ、受ける覚悟はできてるだろうな?)

リリアン・サウスバード・ジルべスタン

容姿については言わずもがなの超美人。実はシルヴィの事が好きだが、本人の鈍感属性や他の原因(主にとある迷惑集団)によって一切気づいていない。ついに切れたけど、それに寄ってさらに面倒が増えたことにまだ気づいていない。この頃のマイ読書?拷問百科事典ですけど、何か?


シルヴィ

銀髪碧眼の細マッチョ系イケメン。リルアスト王国の«影»。実はリリアンが幼い頃呼び出した闇の大精霊(王様など要人は知ってる)。興味出してついてきたらがっつり惚れてしまった。だが、手をだそうにも本人の鈍感属性やらのせいで華麗にスルー。一番反対していた国王も、あまりの不憫さに認めた。原因の排除により、より本格的に狙う体制に入った。


アリア

主人公。恋愛方面でのリリアンの主な被害者。話しているうちにのろけられていること多数。リア充爆発しろ!!と念じるがリリアンが可愛いのでできない。シルヴィにとって最大の難関。


アリアの母親

異世界からの«召喚者»。実は学校に行く時アリアに偽造魔法を使っていたが、アリアの魔法耐性が高かったために無効。よってこの結果。事情を聞いてとりあえず原因をしばくことを決意。


あの方

???


ダメンズの親

まともな人達。とりあえず、地獄を見せることを決意。騎士団長;熱血、宰相;腹黒、大魔法師;まとも、公爵;優しいが、一番怒らせてはダメな人。これらの頭脳や力が集まった以上、地獄は確定。リリアンをとてもかわいがっている。

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