秋風が吹く夜に
僅かな雲の隙間から月の光が漏れ出して、
隣に佇む姉の姿をぼんやりと浮かび上がらせていた。
「いい夜ね」
黙ったままでいる私をよそに、姉は続ける。
「ごめんね、頑固なお姉さんで」
命の膨らみを優しく撫でる手は、
白く、美しく、いまにも崩れそうなほどに細い。
「私はあの人の、、あの人が生きた痕跡を残したかったの」
「どうしてもね」
そんなことは百も承知している。
あなたがどれほどに彼を敬い、愛していたか。
でも、それでも、
哀しみの色を湛えた目で見る私に、
彼女はそっと微笑んだ。
「この子の成長を見守ることが出来ないのは、本当に残念」
「あなたにも迷惑をかけてしまうわね」
私の目にわずかな怒りの色を見たのか、
今度は繕うように微笑んだ。
小さな溜息が漏れ、静寂が訪れる。
じわじわと締め付けられるような感覚を胸に、
慈愛に満ちた姉の横顔をしばらく眺めていた。
切ない夜の1シーン、姉妹、秋、などなどと
半田付けをしながらボンヤリと考えていました。
貴重なお時間を頂き、ありがとうございます。