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8

 真夜中の森を駆ける黒毛のライオンのような狼。名をブル。その前方には俺様が跨り、後方には子分のダンカンとスナイデルが跨っている。


「クマの兄貴! ここが裏口です!」


 スナイデルが叫ぶ。

 出発から約五分ほどでここまで到着した。

 俺はブルから降りる。

 裏口というくらいだから、確かに扉は小さい。木製の扉は民家のようにも思える。

 だが、上を見上げればアジトが大規模だとわかる。

 東京ドームのような大きさに、岩の屋根。こんなところが森の中にあっても目立たないのは木々に囲まれているからだろう。

 俺は後方にいる二人の子分とペットに言った。


「テメェラ、ヨイチに手ェ出してみろ、全身の骨砕いて薬にすっからな。後ここで待ってろよ。足がねーと困るからよ」

「「『はい! かしこまりました! クマの兄貴!』」」

「おぅ、待っとけよ」


 俺はただ一人で扉を押し開く。

 中には誰もいなかった。だが、今さっきまでいた形跡がある。酒の瓶やら肉やチーズがそこかしこに置いてあった。

 物色することもなく、俺は奥へと進んだ。

 もう一枚の扉を開くと、球場の内側のような回廊に出た。さらに扉を開くと、そこにはだだっ広い空間。

 本当に東京ドームかよ……。

 人が集まり、途轍もなく高い天井から吊り下げられている少女がいた。


「よく見ると上玉じゃねーか。こりゃぁ奴隷としての価値が良さそうだな。すぐに取引先に連絡入れな」

「ぐっ……」

「安心しな。オメェを売る前に一発俺が犯してやっからよ」


 下種な笑みを浮かべる黒い毛皮を羽織った男。その周囲にいる盗賊団らしき男達数百名も笑っていた。

 俺様はおっぱいが好きだが、レイプとかは大っ嫌いだ。なんせ女の涙が嫌いだからな。

 だが、あまりにも多過ぎる人数を相手にするのは得策じゃない。

 俺は屋上に向かって走った。幸い、ぬいぐるみだから足音は消せるようだ。

 最上階に到着すると、そこは観客席のようだった。こんなところで一体何をするのか不明だが、悪趣味にもほどがある。

 俺は影に隠れて、吊り下げられている少女を見つめた。


「やっぱりシンラか……」


 静かに会話だけを俺は聞くことに専念する。


「なんだお前、アルロザンヌ王国の国宝を返せとか威勢の良いこと言ってたわりには弱っちぃな」

「ぐっ……! いいから、国宝を返せッ!」

「知らねーよ。アルロザンヌ王国とか、そもそも知らねーしよ。お前知ってっか?」


 ボスらしき黒の毛皮を羽織った男は部下に問う。部下は笑って答えた。


「お前知ってっか?」

「知らねーよ。どこだよ。こいつ夢見ちゃってんじゃねーの! ガハハハハハッ!」


 俺の拳に力が入る。

 こいつらワザとなのか。


「ボス。取引先が決まりました」


 部下から連絡を受けたボスはシンラに向き直り、目を見開いて笑って見せた。


「だそうだ! じゃあ、今晩はお前と肉欲を楽しもうじゃねーか! こいつらも溜まってるからなぁ!」

「い、いや…………」


 シンラの顔が引きつる。

 天井から吊り下げられていた紐が降ろされ、シンラの周りを盗賊団の男達が囲む。


「俺が先だろ? 最近フラれちまって溜まってんだよ」

「いつの話だよ。俺もご無沙汰だからよぉ、俺からにさせろや」

「バカ、テメェはモテるからいいけどよ、俺みてーなモテねー奴からさせろよ」


 男の手がシンラに伸びる。

 今まで虚勢を張っていたシンラの顔が曇ってきた。


「い、いや……」


 瞳が潤む。

 やがて、シンラの綺麗な瞳から涙が溢れた。

 俺は理性で今まで数百名対一は危険だと言い聞かせていたが、もう我慢の限界だ。

 俺は物陰から飛び出し、一回のグランドまで飛び降りた。


「シンラァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 俺が叫びながら着地すると、中心にいる数百名の盗賊団が俺に視線を移す。


「く、クマ太郎……?」

「俺がなんとかする。だから泣くなッ!」


 シンラは涙を振り落として、腫れた目で笑顔を見せた。


「クマ太郎大丈夫だよ。アタシは、強いから、こんなのになんか全然平気で耐えられるんだよっ!」


 ポロっとシンラの宝石のような瞳から雫が溢れる。

 俺は飛び込んだ。


「テメェラァァァァァァァァッ!」


 真ん中にいるボスは片手で部下に命令をした。


「奴を捕らえろ。動くぬいぐるみとか、いい見世物になりそうだ」


 迫り来る数百名の盗賊団。

 俺の拳に称号による光が灯る。


「クマ太郎っ! 逃げてよっ! お願いぃぃぃぃぃっ!」

「今助けんぞォォォォォッ!」


 部下の一人が俺の目の前に迫った。

 武器は短剣。

 短剣を振り上げ、俺に向け叩き刺そうとする。


「俺の手柄だ! こいつを倒した奴から、やれるってのはどうだぁ!」

「邪魔だッ! ゴミ屑がッ!」


 振り迫る短剣に俺は拳を放った。

 短剣が木っ端微塵に吹き飛び、部下の腕に俺の拳が届く。

 ボキボキと音をあげながらか、男の身体は吹き飛んだ。


「ぐあああああっ!」

「テメェラ全員地獄行き確定だボケッ!」


 迫り来る数十名の盗賊。

 格闘系の男が俺に拳を放ってくる。

 俺はそいつの攻撃を掴み、そいつごと振り回して後方にいる数十名の盗賊を薙ぎ払った。


「「「「「「ぐあああああっ!」」」」」」


 次々と一撃で返り討ちに遭う盗賊団。

 今度は魔法を詠唱する部隊が視界に入った。

 シンラまでの距離は縮まる。


「我ら炎の神――――」

「うるせぇぞッ!」


 俺は高く飛び跳ねた。

 多くの魔法が俺に飛びかかる。

 グラウンドが白煙に包まれた。


「……なんだ、あのクマは……」


 ボスが狼狽える。

 あまりにも強過ぎるぬいぐるみ。その突然の出現に混乱していたようだった。

 シンラは涙を流して、俯く。


「なんで……なんで……言うこと聞かないの……」


 俺は白煙を振り払い、ようやくボスの元に辿り着いた。

 シンラに視線を移し、俺は微笑んだ。


「言うこと聞かない? バカか。男にはプライドがあんだよ。俺自身にはねーけどよ、どんな女でも涙を流させた男は最低だって、教えられて育ってっからよ。何が何でも女は泣かせられねーんだよ。それが例えシンラみてーな俺のストライクゾーンからかけ離れた女でもよ」

「ば、バカッ…………」


 俺はボスを睨みつける。


「テメェか。シンラを泣かしたのは」

「ぬいぐるみのクセにっ! お前なんか綿でできてるだけの分際だろうがァッ!」


 ボスは背中から剣を抜き出した。

 ギロリと俺を睨むボス。

 こいつは一味違う。戦闘初心者の俺でもわかった。だからなんだ。

 女を泣かせた奴は万死に値する。


「テメェみてぇな虫けらは、こうしないとわかんねーよなぁ!」


 片手を地面に叩きつけたボス。

 俺を睨みながら、叫んだ。


「爆発の神、ボルケーノよ。俺様にこの空間を破壊させる力を寄越せェェェェェッ!」

「逃げて! クマ太郎ッ! 身体が焼き尽くされる!」

「お前を置いてなんて行けるか」


 俺は拳を固めて、ボスに向かって走った。

 日差しのような光を纏った拳がボスに向かう。


「消えな!」


 視界を砂煙りが埋める。

 次々と爆発し、俺はボスを見失う。


「俺に爆発は効かねーんだよッ!」


 だが、俺はそのとき驚くべきものを目にした。

 俺の足元が震えている。

 これは地震――――違うッ!

 俺は咄嗟に飛んだ。

 地面から、赤い液体が天井に向けて噴出した。

 それはマグマだ。


「マグマに飲み込まれな、産業廃棄物が!」


 ボスの声が響く。

 視界が悪い、暑い。

 だけど、俺は叫んだ。


「シンラ、シンラどこだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 だが、シンラの声もないし気配もない。

 やがて、白煙が晴れる。

 そこにシンラがいると思った。

 あったのは、マグマの波。

 押し寄せる灼熱の波を前に俺は生唾を飲み込んだ。

 いくら神の御加護があるとはいえ、俺様でもマグマを前にしたら死ねる。

 そんな中、俺の身体が急に浮いた。


「うぉ!?」

『大丈夫ですか! クマの兄貴ッ!』


 振り向くと、そこにはスナイデルとタンガン。俺はブルに背中を咥えられて助かったのだ。

 驚くべきことにブルは、機動力が優れているらしい。


「クマの兄貴ッ! 無事ですか!?」

「お前ら……」


 こいつら、俺のこと……。


「助けんのがおせーぞ! シンラを見失ったじゃねーかッ!」

「すいませんッ!」

「先に助けろっての……」


 高く、高く跳躍するブル。

 盗賊団のアジトだった場所は噴火した火山のようだ。

 あのボス、どこに逃げやがった。

 俺は注意深く探すが、黒い毛皮の男はどこにもいない。


「クマの兄貴、あ、あれ……っ!」


 突然、スナイデルが人差し指を向けた。

 そっちの方向に視線を移すと、シンラを抱えるボスの姿を発見。

 俺はすぐにブルから飛び降りて、ボスに向かって拳を走らせた。


「おいゲスボスッ! 汚ねぇテメェの手でシンラに触んじゃねぇぞッ!」

「もう追いついてきたか!」


 ゲスのボスであるゲスボスは、俺の渾身のパンチを躱し、俺と対峙する。片手でシンラを担ぎ、片手にはあのマグマを呼び起こした剣があった。


「まさか、お前みたいな、喋るぬいぐるみごときにアジトを崩壊させられるとは思ってもいなかった」

「誰に崩壊させられようが関係ねぇ。早くシンラを離しやがれッ!」

「それはできない。この女の取引は決定したんだ。奴隷として生きてもらう。こっちだってビジネスなんだよ」

「シンラをビジネス? テメェ、本気で言ってんのかよッ!」


 俺の拳が固くなる。同じ人間なのに、年頃の女の子を奴隷にするなど俺には、わけがわからなかった。正気の人間がすることじゃない。

 怒りが頂点に達する。


「シンラはなぁ……。自分の故郷を復興するために国宝を集めてただけなんだぞッ! それがなんで、奴隷にされなきゃいけねーんだよッ!」

「く、クマキチ……っ」


 シンラが涙を溢した。


「シンラ。安心しろ、必ず俺が助ける」

「誰に言ってんのか、わかってんのか? たかがぬいぐるみ風情が、俺の前に立つなッ!」


 シンラの身体を投げ捨て、ゲスボスは両手で剣を握る。

 紅色の剣だが、不思議な力は感じない。ここにヨイチがいれば、どんな剣なのかわかったかもしれないが、いない奴がいたらなんて希望的観測をしてもしかたがない。

 ただわかっていることは一つ。女の子を泣かせたゲスボスは万死に値するということ。


「シンラをこれ以上泣かせるんじゃねぇッ!」

「ぬいぐるみがッ! 喋るのをやめろッ!」


 俺に向かって上段から剣を走らせるゲスボス。

 理性を失いそうな俺もまた、日差しのような光に包んだ拳を走らせる。


「消え去れぇッ!」

「テメェは絶対に許さねぇぞッ!」


 ゲスボスと俺の叫びが響き渡った。

 俺とゲスボスの剣が交差する。

 まるで核兵器でも落とされたかのような爆風が周囲に舞う。

 俺は渾身の力で、剣を押し上げる。


「な!? ば、バカな!? ぬいぐるみに、なんで、こんな力がッ!?」

「俺はぬいぐるみだ、一人では何もできない、ただのぬいぐるみ。だがなッ! そんなゴミ屑みたいな俺でもわかることをテメェは犯したんだよッ! 一度死んで、テメェの両親に聞いてみろッ! 常識中の常識だ、女の子の涙は、子供が産まれた時と、結婚したときで充分なんだよッ! クソ野郎がァァァァァァッ!」


 俺の拳がゲスボスの剣を砕いた。

獲得称号


・無職のぬいぐるみ:効果不明


・ドS好きのドMぬいぐるみ:効果不明


・神に嫌われたぬいぐるみ:効果不明


・神をオカズに抜く男:効果不明


・絶対不死の男:発動した者に対し、物理・魔法問わず、ダメージを与えることができない。但し、神が少し設定をいじっているので、痛みは感じる。


・竜に挑みし者:効果不明


・竜殺しのぬいぐるみ:効果不明


・老人を気遣うぬいぐるみ:効果不明


・神からの超運を恵まれし者:稀に当たったかと思われる射撃や、魔法を躱す。ギャンブルなどでも、大金を稼ぎやすいなどの、屑には与えてはいけない称号


・一撃必殺を授かりしぬいぐるみ:一撃で相手を殺せる力。但し、あまりにも大きい魔物などは、部位破壊として判定される。

追記

人間や、そのペットでは気絶させる程度に弱まる。


上級魔物討伐達成


>魔竜・ヘルフレイムドラゴン【討伐報酬】獄炎の魔剣


>魔竜・ポイズンドラゴン【討伐報酬】死毒の魔剣

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