表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/23

5

 その日はヘリスによる診察が続き、俺とヨイチは診療所に入り浸った。

 夜になり、帰宅するとヘリスが夕飯を作ってくれて、三人で晩飯を食べることになった。


「で、結局、何が原因だったんだ?」


 俺はオムレツらしきものを喉に流しながら、ヘリスに問う。


「わからない。もしかしたらではあるが、ザ・ラスト・エリクサを飲ませた可能性が高いな」

「「ザ・ラスト・エリクサ?」」


 俺とヨイチが同時に聞く。

 するとヘリスは微笑みながら、言った。


「兄弟みたいだな」

「そ、そんなことない。ヨイチが真似しただけだって」

「クマキチとは、ずっと一緒にいるからね。ある意味兄弟かもね」


 ヨイチがニッコリと微笑む。

 診療所で待機しているときに、ヨイチと相談して呼び名や一人称について決めた。若いのに儂だと、どっかの輩になるし、俺もじぃさんと呼ぶと、これから待っているであろうハーレム王となる俺様の部下にもなるのに、女の子に嫌われちまう。

 そんなこんなで呼び方は変えたのだ。


「とりあえず、数値の方は本当に若返ったみたいだし、何をしても問題はないだろう。たとえ武器を作ったとしても、魔力が回復しないなんてことはない筈だ」

「ありがとう、ヘリスさん」

「うむ。礼ならクマキチに言うんだな。私を救い、ヨイチさんまで救ってくれたんだからな。頭が上がらないよ」

「あ?」


 俺はスープを飲み干して、ヘリスに言った。


「まぁ、俺様は最初からザ・ラストなんたらを飲ませれば、ヨイチは若返るって最初から知ってたからな」

「嘘つくな。あんなに泣いてたくせに」

「そ、それは関係ないだろうが! 第一、竜相手に腰を抜かして泣いてたのは、どこのヘリスだっけ?」

「そ、それは……っていうか、クマキチのくせに生意気言うな! それは秘密だって話しただろうがっ!」

「あんま一々口うるさいこと言ってると、けしからんおっぱい揉むぞ!」


 ヘリスは顔を真っ赤にして、胸元を隠す。


「そ、それだけは、まだダメだっ!」

「あ? いいじゃねーか。減るもんじゃないし」


 ヘリスはごにょごにょと独り言を呟き始めた。


「……そ、それは、わ、私にもか、覚悟が……」

「あんまり困らせちゃダメだよクマキチ。そういうことをする人は、変態って言うんだよ」

「ヨイチ、俺は変態じゃない。紳士だ!」

「紳士はおっ……胸を揉ませてなんて言わないけどね」


 ヨイチはおっぱいと言うのを躊躇った。童貞臭がハンパないな。俺もだけどさ。


「で、これからどうするつもりなんだ?」

「あ? 俺様か? 俺様はハーレ……」

「クマキチには聞いていない」


 ピシャリと俺の言葉を止めたヘリス。

 ヨイチはニコリと微笑んで、自信満々に言った。


「とりあえず、俺達は世界を歩き回ってみたい。それが俺の夢だったからさ」

「そうか……」

「ヨイチ、俺はハーレム王になるんだぜ? 世界中のおっぱいを揉むのが俺様の目標だぜ? ヨイチはついてこれるかな?」

「ついていきたくはないけど、でも世界は必ず周ろう! 俺がクマキチと一緒にいたいんだ!」


 明るく、けれど確かな決意が感じられた言葉。


「俺様がこの家に収まる器だと思ってんのか? ヨイチ、俺は元から世界を歩くつもりだったんだぜ?」

「ははは、そうだよね。じゃあ、俺はクマキチに連れ出されるって形になるのかな」


 爽やかなヨイチの笑顔。俺はホモじゃないけど、その笑顔を見ていると幸せだった。

 これからどうするかという話をしていると、やけに暗い冷気が漂ってくる。

 俺は寒気がして、その方向に目を向けた。


「あっそッ! どうして、こう、男ってすぐ仲間外れにするのかしら。あー、好き勝手やったらいいじゃない。普通会話に乗れてない人がいたら、話を振る筈なんだけどなー。例えば、別に行きたくないけど、一緒に行かないかーとか、ヘリスも一緒にいなきゃヤダーとか、そういう誘い方もあると思うんだけど、どうなのかなー。気がつかないからなー」


 チラチラとこっちを見てくるヘリス。


「で、ヨイチはどこにまず行きたいんだ?」

「ちょっと、見てスルーとか失礼じゃないかしら。クマキチ。ちょっとは……」

「クマキチ。ヘリスさんに旅についてきちゃダメって言わなきゃ」

「おい、ヨイチっ……」

「え?」


 チラっとヘリスを見ると、机に突っ伏し始めた。

 ヨイチは何が原因で突っ伏したかわからないようだ。

 そりゃぁ、年頃の乙女なんだよヘリスも。明らか様に、女の子は来るなみたいな言い方は傷ついちゃうのよ。


「……どうせ、私なんか……役にも立たないし、足手まといの女よ……」

「あ、その……ごめん」

「別にヨイチさんに謝られてもねぇ……」


 顔を上げて俺を睨んでくるヘリス。どうやら、俺がスルーしたことの方が気に食わないようだ。

 いやさ、ほら、求められると突き放したくなる? これって男子特有のSっ気だよね。俺もさ求められるとダメだからさ。え? 女の子? 違うよ、犬にオヤツ求められたときの話だよ。

 俺はヘリスの頭を撫でて言った。


「まぁさ、これは男旅みたいなところあるしさ。ヘリスはヘリスで仕事があるじゃん? ヘリスいなくなったら村の人達悲しむだろうなぁ……」

「大丈夫よ、近くに病院あるし」

「でも危ないからなぁ……」

「足手まといって言いたいの?」

「ヘリス可愛いから、恐い思いさせたくないしなぁ」

「うっ……」


 ヘリスはちょこっとだけ顔を上げて、俺のことをじーっと眺めた。


「ほ、ほんとに……可愛い?」

「え、そりゃあ、もちろん!」


 するとヘリスは嬉しそうに微笑んだ。


「え、えへへ」

「だからおっぱい揉ませろ」

「それは無理っ!」


 結局、俺様には顔とかじゃなくておっぱいが信条だ。


「ほんと、男って胸ばっかり。少しは本人見ないのかしら」

「あ? それ以外に利用価値があるのか?」

「クマキチ、それは言い過ぎだよ……」


 ヨイチが宥める中、ヘリスが逆に聞く。


「じゃあヨイチさんは、どこに女の子としての魅力を感じるのかしら」

「え、えーっと」


 ヨイチはじっくりとヘリスの身体を舐めるように眺める。だが、しばらく見ていると、途端にヨイチの顔が爆発した。

 全く、童貞臭が凄いな。


「お、俺は……な、中身だと思うなっ!」

「中身? 例えばヨイチはどんなところがいいと思うんだ?」

「え、えーっと……、ほら、性格良いじゃん! ヘリスさん、俺の為に一生懸命になってくれたりさ!」

「とか言いながら、ヨイチはヘリスのおっぱいを見ている」

「ちょ、クマキチっ!」


 ヘリスは胸を隠して、ヨイチを睨む。


「変態」

「あれ? 俺とクマキチで反応違くない?」

「器が違うからな。俺とヨイチじゃ、場慣れ感が違うのさ」

「クマキチは場慣れというより、罵倒され慣れてる感じよね……」


 あれれ? 二人の痛い視線が俺の心を貫いてるよ?


「俺が言いたいのはね、男は結局おっぱいが大好きなんだよ」

「へぇ」

「俺は違うからね! ヘリスさん!」

「そうそう。ヨイチは天邪鬼だからな」

「だから違うって!」

「じゃあ、なぜさっきからヘリスを見るたびに胸を見ているんだい? 八百屋さんのおばさんの胸には目がいかないじゃないかっ!」

「そ、そりゃぁ老体より、若い方が……って俺は違……」

「ヨイチ。これは男のサガだ。諦めろ、運命なんだよ」

「そ、そんなぁ……」

「目の前に年頃の乙女がいることを忘れてる会話ですね」


 冷ややかな視線が俺とヨイチを突き刺す。


「というか、クマキチ。ヘリスさんだって好きな人いるのに、失礼なことばっかり言ってちゃダメだよ」

「そうなのか? ヘリス?」

「え?」


 ヘリスは唖然として、俺を見つめる。

 さっきからよく俺のこと見るけど俺のモフモフが乱れてるのか?


「え、ま、まぁ、いますけど」

「だよね。クマキチ、失礼したことは謝らないと」

「あ? そういうのひっくるめて、俺はヘリスのおっぱいが揉みたいんだ」

「最低か!」

「というか、さっきからなんでチラチラ俺を見るんだよ。モフモフが乱れてるのか?」


 ヘリスは再び顔を赤くして言った。


「ち、違うわ! べ、別に乱れてなんかいないんだからね!」

「今ツンデレるところじゃないんだけど」

「べ、別にクマキチを見たいわけじゃないんだからね」

「ツンデレるなっつの」

「クマキチなんか万年発情期のぬいぐるみなんだからね」

「事実だな……」


 中々フランクになってきたヘリス。最初は俺のことを警戒していたようだったが、今となっては罵るまで打ち解けられた。

 俺もヨイチの体調のせいで、揉み忘れたがいつかはヘリスを貪り尽くしたいと考えている。え? セクロスじゃなくて揉むだけよ。


「それじゃあ、私は明日の用意があるから」

「そうだな。今日はありがとうございます。ヘリスさん」

「別にヨイチさんの為じゃないわ」


 席から立ち上がったヘリスは俺のことを嬉しそうに見つめた。その視線を浴びると、揉んでもいいんじゃないかと思えてくる。

 ヨイチは首を傾げていたようで、意味がわからなかったのだろう。


「ま、俺もヨイチの為であって、ヘリスの為じゃないしな」

「ツンデレはどっちだか。まぁ私の為に治療したようなものだからね。今となってはね」

「それでも、恩にきるよ」


 微笑みながらヘリスはヨイチにヒソヒソと内緒話を始めた。


「おい、俺だけ仲間はずれか!」

「ぬいぐるみには、わからない話よ。治療費はいらない代わりに、こっちの要件を呑んでもらうように伝えただけ」

「なら、俺はヘリスを助けたんだから、そのお礼を受ける必要があるッ!」

「胸はダメだからねっ!」

「ちっ」


 ヘリスは診療所で仕事があるからと言い、帰った後、俺とヨイチは準備を始めた。

 ヘリスには悪いけど、実はさっき待ってるときに話していたんだ。もし、俺達が出て行くとなると、ヘリスは間違いなくついてこようとするから、静かに抜け出そうと。

 まだヘリスには明後日出て行くとしか言ってないから、今夜出て行くのが確実だ。もちろん、ヘリスを置いてく理由はただ単に足手まといだからじゃない。美人さんを連れて旅っていうのは、少し違う気がするからだ。それは俺の意見でもあり、ヨイチの意見でもある。

 今夜出発するのは、ヨイチがもうウズウズして仕方がないからだ。

 家を出て鍵を閉める。


「この家ともしばらくお別れだな」

「うん。でも帰ってきたときには、もっと良い武器を作れるようになってたいな」

「鍛冶屋は引退じゃないのか?」

「俺が冒険したいのは、いろんな世界を見てみたいのと、同時にいろんな武器も見たいからなんだ」

「そうか」


 ヨイチは月を見上げると、歩き始めた。

 俺はヨイチの頭に乗る。


「クマキチ。これからさ、俺はとりあえずコロンブス城下町に行こうと思うんだけど」

「そこに女はいるのか?」

「ど、どこにでもいると思うけど……」

「なら行くぜ。俺様の目標はハーレム王だからな!」

「それなら俺は天下一流の鍛冶屋だね!」


 俺とヨイチは笑いながら、ハーレム王となるための夢と、天下一流の鍛冶屋になるための旅を始めた。

獲得称号


・無職のぬいぐるみ:効果不明


・ドS好きのドMぬいぐるみ:効果不明


・神に嫌われたぬいぐるみ:効果不明


・神をオカズに抜く男:効果不明


・絶対不死の男:発動した者に対し、物理・魔法問わず、ダメージを与えることができない。但し、神が少し設定をいじっているので、痛みは感じる。


・竜に挑みし者:効果不明


・神からの超運を恵まれし者:稀に当たったかと思われる射撃や、魔法を躱す。ギャンブルなどでも、大金を稼ぎやすいなどの、屑には与えてはいけない称号


・一撃必殺を授かりしぬいぐるみ:一撃で相手を殺せる力。但し、あまりにも大きい魔物などは、部位破壊として判定される。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ