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 宴は夕闇が消え、漆黒に包まれた頃に開始した。俺様は昨日のヨイチ説得をしてから、念のために武器全てをアリーナに任せて、ヨイチを勝手に旅立たせないように仕組んだ。

 ま、その心配はなかったんだけど。

 多くの騎士や、王国関係者がドレスを着込み、ドレスアップした俺様やヨイチを歓迎する。

 用意された白い簡易テーブルの上には料理がたんまりと乗せられていた。


「クマ太郎さん!」

「ん、シンラか」


 どうやらシンラもドレスに着替えたらしく、白いフリルのついた可愛い姿を俺に見せる。

 がっしりと俺の腕を掴み、シンラは嬉しそうに微笑んだ。


「おいおい、俺様はくっつかれるのは趣味じゃねーぞ」

「これくらい、いいじゃん! ずっとあたし、お仕事してたんだよっ! 偉いでしょ?」

「偉い偉い」


 俺は棒読みしながらシンラの頭をなでた。

 すると、シンラは嬉しそうに微笑む。


「えへへっ」


 シンラに拘束されたまま歩くと、シンラは片手で料理を取っては俺の口に運ぶ。


「何やってるんだクマキチ」

「あ?」


 ヘリスは翡翠色の大胆なドレスを身に纏い、大人な色気を出していた。エルフらしい耳にピアスをつけていて、とってもオシャレだ。


「何って、別に楽しんでるだけだが」

「そうよ! おばさんは、じじぃの相手をしていればいいのよ!」

「……そういえば、決着がまだだったな」


 ヘリスは瞳を細め、静かに怒りの視線をシンラに向ける。

 対するシンラは微笑みながら、余裕の笑みを浮かべた。


「え、なにこれ、まだ決着ついてないって!?」

「クマキチは私のものだ」

「いいえ、あたしの旦那さんだよ!」


 ゴゴゴゴゴ…………っと静かに燃え上がる二人。このまま、大規模な戦争にでも発展しそうな勢い。この二人、仲が悪過ぎる。

 二人が睨み合ってる間に俺の身体がひょいと浮かぶ。


「ここにいましたか、師匠」

「お、セレスティン」

「師匠、ちょっと大事な話があるんですが……」

「いや、この二人止めてからにしてくれ……」


 ヘリスとシンラは武器を抜く。


「おばさんは引っ込んでてよ! クマ太郎さんはあたしみたいに若い方が絶対にいいに決まってる!」

「何を言うか小娘! 私の方が胸は大きいし、年も老けてない! なんならクマキチの好みは私の方じゃないか?」


 セレスティンはニコリと微笑み、俺の身体を降ろした。どうやら、俺の意見通り、喧嘩を止めてくれるのだろう。


「二人とも、ここは静粛な場だから遠慮してくれないか?」

「「あ?」」


 二人の睨みは既に魔竜種とか魔精霊種を超えた怖さがあった。

 しかし、さすが騎士団長セレスティン。生死の境を彷徨い、生き抜いただけの力はある。

 笑顔のまま二人の間に進み、セレスティンは言い放った。


「師匠はボクの旦那さんにします」

「「はぁ!?」」

「ぶーっ!」


 俺は飲んでいたジュースを吹いてしまうくらいビックリする。

 そりゃあ、セレスティンも女だし、隠れ巨乳だけどよ、俺の夢を叶える為には奥さんとかいらないし邪魔なだけなんだけど!?


「師匠、こんな血の気の多い二人よりも、やっぱりボクの方が……ぽっ」

「ぽっじゃないわよ! クマ太郎さんはあたしの!」

「ふざけるなよ? 騎士団長だか、なんだか知らないけど、私のクマキチを譲るつもりはないッ!」


 セレスティンは笑顔のまま武器をチラつかせ、二人に向かって真剣な視線を走らせる。

 ちょ、止めるんじゃなかったの!?


「そんなに言うのなら、ボクが相手しましょうか? 二人がかりでもいいですよ。ボクに勝てるならね」

「言うじゃない。あんたなんか、あたしとクマ太郎さんのラブストーリーの脇役でしかないんだからっ!」

「特性の毒を注入しようか? そしたら例え騎士団長様でも、一瞬であの世に行けるぞ?」


 既に三角対立が成立した模様。

 俺は激しく震えながら、三人を見つめる。最早、口を開くことすら拒まれるような殺伐とした雰囲気。宴が台無しである。

 そんな携帯のように震える俺の身体がまた浮かぶ。


「何を言ってるんですか? この人は私の旦那様です。いずれ、国王になられるお方ですよ」

「「「え?」」」


 俺を抱えた人物を見上げる。


「さ、サクリアっ!?」

「拒否権はありませんよ。あなた」

「ちょ、待てや!」


 シンラが叫んだ。


「そんなに、ここには死にたい人がいるんだね! なら、全員海の底に沈めてあげるっ!」

「全員諸共毒死させてやる」

「姉上様。それでもボクは戦いますよ」

「ふふ、全面戦争ですね。私の旦那様を賭けて」


 四人の身体から凄まじいほどの魔力が浮かび上がった。

 まるで、魔精霊種四人の対決、いや、それ以上の緊迫した状況が漂っている。

 これを止めるのには、四人のうち三人が死ななければ止まりそうにはない!

 悲しいけど、これ、修羅場なのよね。


「うわぁぁぁぁぁぁっ!?」


 そんな中、宴に来ていた人の叫び声が聞こえた。すぐにそちらに視線を移すと、 ボロ雑巾のようなマチルダがそこには存在していたのだ。


「ヨイチィィィ……ヨイチちゃんはどこにいるの!?」


 捕まっていたのだろうか、マチルダが脱獄し、そのままヨイチを探しにやってきたようだ。その姿は怪物以外の何者でもない。

 ゆっくりとこちらに進行する。

 すぐそこにヨイチはいた。


「ヨイチ! 危ないぞ!」

「え? クマキチ? ……そっちも危なそうだけど」


 ヨイチの隣にはアリーナがいる。

 このままだと二人諸共、殺されかねない。


「ヨイチちゃんは……あたしのものなのぉ……っ!」


 あ、完全にヨイチのこと好きなオカマだったんだ。

 と、そんな呑気にしてる場合ではない。

 俺はすぐに喧嘩を止めさせようとした。


「お前ら! 非常事態だぞ!」

「クマ太郎さんはあたしと一緒に生きて、あたしと死ぬのよっ!」

「クマキチは私との子供を産みたがってるんだ!」

「師匠はボクと一緒に最後を迎えるんです!」

「国王になられる方を、庶民と一緒にしないでください」


 四人はお互いを睨み合い、周囲の声など聞こえないようだ。

 人々は逃げているのに、四人は大好評修羅場中なので、マチルダは関係ないみたい。

 やがて、アリーナが武器を抜く。


「ヨイチ。下がっていろ。私がヨイチを守る」

「アリーナさん……」


 ヨイチの方に進んでいたマチルダ。

 だが、不意に俺とマチルダの視線があった。


「ウォォォォォォッ! いたな! 悪の化身! クマキチィィィぃィィィッ!」

「え、俺!?」


 ドスンドスンと重い足で地面を踏みしめ、俺に襲いかかろとする。

 俺はサクリアの腕の中にいるのだ。このままでは、近くの四人全員吹き飛ばされてしまうっ!?

 ガチガチになるまで抱き締められてるため、俺は抜け出せない。


「さ、サクリア! みんな! 何してるんだッ!」

「クマキチィィィぃィィィッ! ウォォォォォォッ!」

「ギャァァァァァァァァッ! キモイ!」


 近くで見ると、ゾンビそのもの。

 そんなのが突進してくれば、叫び声の一つや二つあげるだろう。

 四人が吹き飛ばされる! そう思ったとき、四人全員武器を抜いた。


「「「「死に晒せ!」」」」


 シンラは短剣を抜き出す。

 ヘリスは鞭を走らせる。

 セレスティンは長剣を抜く。

 サクリアは俺を離して、細剣を抜いた。

 その中心に到達したマチルダが、全ての攻撃を受けたのだ。


「ぐふぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

「あら、随分ブサイクな声で鳴くんだね!」

「そっちこそ、まるで豚じゃないか」

「師匠にそんな見苦しいもの見せないでください」

「ふふ、私が一番この人には相応しいのですよ」


 四人はお互いを怪物マチルダだと思ってるのだろう。まさか、今回の戦いの根源を豚呼ばわりするとは……。ま、弱ってるし武器もないからなぁ。

 マチルダは白目を剥き出し、泡を吹いて倒れた。


「あれ? 誰、これ」

「気持ち悪いな」

「もしかして、マチルダさん……?」

「あら、死んじゃいましたかね?」


 四人は呑気に打ち上がった魚を見るかのようにマチルダを見降ろす。

 どうやら、修羅場化した四人は、俺一人の力を発揮するようだ。

 乙女、怖過ぎる……。

獲得称号


・無職のぬいぐるみ:効果不明


・ドS好きのドMぬいぐるみ:効果不明


・神に嫌われたぬいぐるみ:効果不明


・神をオカズに抜く男:効果不明


・絶対不死の男:発動した者に対し、物理・魔法問わず、ダメージを与えることができない。但し、神が少し設定をいじっているので、痛みは感じる。


・竜に挑みし者:効果不明


・竜殺しのぬいぐるみ:効果不明


・老人を気遣うぬいぐるみ:効果不明


・神からの超運を恵まれし者:稀に当たったかと思われる射撃や、魔法を躱す。ギャンブルなどでも、大金を稼ぎやすいなどの、屑には与えてはいけない称号


・一撃必殺を授かりしぬいぐるみ:一撃で相手を殺せる力。但し、あまりにも大きい魔物などは、部位破壊として判定される。

追記

人間や、そのペットでは気絶させる程度に弱まる。

《派生技》

・熊無双連撃:連続で万物の耐久度を削る攻撃。

・特殊発動・絶殺一撃:全てを貫く攻撃。


・役立たずのクズ:効果不明


・怒れる玩神:一撃必殺を授かりしぬいぐるみの進化系。五十連撃もの一撃必殺を撃ち尽くせる準備完了のような称号。腕に灯る光が炎のように変わる。

《派生技》

・玩神五十連撃必殺:怒ったクマキチ考案技。一撃必殺を五十発叩きこむ、圧倒的反則技。本人曰く、名前があった方がカッコイイとのこと。


・魔精霊種を滅殺せしぬいぐるみ:効果不明


【ヨイチの称号】


・双竜刀発動の青年:獄炎の魔剣と死毒の魔剣を装備した場合にのみ、発動される。二匹の魔竜種の魔力を引き出すことができる。

《派生技》

・獄双竜:魔力を消費することによって、竜巻を起こすことができる。


・神が嫌うぬいぐるみの介護をする青年:神が嫌うぬいぐるみの世話をする青年は、色々な気苦労も絶えないだろうと考慮した上での措置。基本的には、ぬいぐるみに死なれたら困るので、介護・監視をする役目を与える。問題児を監視してくれている為、この青年は基本的にはダメージは受けるが、死にはしない


・魔豚種を討伐せし老青年:効果不明


上級魔物討伐達成


>魔竜・ヘルフレイムドラゴン【討伐報酬】獄炎の魔剣


>魔竜・ポイズンドラゴン【討伐報酬】死毒の魔剣


>森大将【討伐報酬】


>魔豚種・アリストン・ベルチェ【討伐報酬】極上霜降り肉五㌧


>魔精霊種・セイント・ゴーレムの討伐【討伐報酬】魔精霊石の剣・魔精霊石の盾

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