18
セレスティンは目を覚ました。
手錠が掛けられ、足にも錠がされている。
周囲を見渡すと、大勢の人間が牢屋に入れられていた。
石壁の回廊にはランプを持った男。
ここまでの途中、セレスティンは魔精霊種の討伐を実行しようとしていた。だが、仲間の男達は全員無惨に散り、セレスティンはある理由で連れ去られていたのだ。
仲間を助けられなかったことを悔い、セレスティンは己を責めた。
そこに、黒い毛皮を羽織った男が片手をポケットに突っ込み、セレスティンを見下ろすと汚い笑みを浮かべる。
「どうだ? 騎士団長様、いや、今は別の名前で呼べばいいのかぁ?」
「貴様ッ! 僕を愚弄する気かッ!」
「おっと、威勢だけでビビッちまったぜ。なんせ騎士団長様だからなぁ。ははははっ」
男はセレスティンの牢屋に入ってきた。
やがてしゃがみ込んで、セレスティンの胸を掴んだ。
「がはっ!?」
「まさか、テメェが女だとはな。しかも、実はコロンブスのサクリアの妹だとは知らなかったぜ? 道理で顔が良いし、胸もデカイ筈だ」
「汚い手で触るなッ! 僕は男だッ!」
「そうかぁ? なら、ここを触ればわかるよな?」
男の手はセレスティンの股間に迫る。
一瞬にして顔を青ざめさせた。
「やめろッ!」
「いいねぇ。俺はオメェみてーな威勢の良い女が好きなんだ。なんなら俺の女になっちまうか?」
「ふざけるなッ! 僕は、父上と母上が亡くなった日から、男として生きて姉上様を守ると決めたんだッ! お前なんかに屈しないッ!」
「そうか」
男の手はセレスティンの胸を強く揉んだ。
「あんっ……」
「クククッ、やはり身体は逆らえないか」
セレスティンの顔色は紅潮し、涙目になる。
コロンブス王国で生まれたセレスティンは、元国王である父と母が亡くなった日から、人柄も才能もある姉を守ると誓い、男になったのだ。だが、やはり身体は女のままだった。
悔しさに涙を流し、セレスティンは漏れだそうとする息を殺す。
ゆっくりと男の手がセレスティンの局部に迫る。
「女の質が決まるのはここだ。締め付けが良いか悪いかで決まる」
「や、やめ……っ!」
「見せてみろッ! お前の女としての質をッ! あーはっはっはっ!」
男の手がセレスティンの股に走った。
◆
「おい、誰に断って俺様の部下を泣かしてんだよ」
「あ?」
男、ゲスボスはゆっくりと振り返り、俺の姿を目にする。その瞬間に青ざめ、ゲスボスは俺に向けて拳を走らせた。
その拳を俺は片手で受け止める。
「こんなところで逢えるとは運が良いッ! 俺様の盗賊団を解散させやがってッ! ここで仕留めてやるッ!」
「バカ言ってんじゃねぇよ。シンラを泣かせたから、俺はお前をぶっ飛ばしただけだ」
ゲスボスは俺を睨みつけた。盗賊団を崩壊させられ、コイツは俺に恨みを持っていたのだろう。まさか、コイツが主犯者だとは思わなかった。
「なら、今回は用はねぇだろうが! 俺は……」
「用ならあるぜ。セレスティンを泣かしたな」
「あん? コイツは男だろうが」
「俺には聞こえたぜ」
俺は拳を固める。称号は発動しない。
「セレスティンが女だって喚いていただろうが! クソ野郎ッ!」
「ゴフッ!?」
ゲスボスの腹部に拳が減り込む。
両膝を着いてゲスボスは胃液を吐き出す。
「て、テメェ……」
「俺のセリフだ。お前は過ちを二度も犯した。女の子を泣かしてんじゃねーよッ!」
俺様のハイキックがゲスボスの頭部にクリーンヒットした。
頭を床にバウンドさせたゲスボスは意識を絶つ。
セレスティンの泣き顔が見える。
俺様はしゃがんでセレスティンの頭を撫でた。
「良かったぜ。無事で」
「う、うう…………師匠っ」
「おっと、感動の再会は待ちな」
俺はセレスティンをよーくこの目で眺める。
まさか、この俺様が見分けられないとはな。コロンブス国王一家は、かなりの隠れ巨乳大国だ。セレスティンのおっぱい、やばいくらい柔らかそうでデカイ。
こ、こいつはぁ。最高だぜ!
「クマくん。浮気はダメですよ」
「ぐっ……何言ってるんだか。シンラは別に関係ないし」
「それは置いておいて。セレスティン、いえサキリス。もう騎士団なんてやめなさい」
俺の背後から現れたサクリア。優しく微笑む彼女の姿は女神にも見えるだろう。
セレスティンもサクリアの姿を見上げると、さらに涙が浮かぶ。
「お、お姉様ぁぁぁっ」
「ほら、あなたは女の子なんだから。男の子になんかなれないでしょ?」
「は、はい……」
泣きながら抱きつくセレスティンを抱きしめる姉、サクリア。これが姉妹というものなのか。俺様には兄弟とかいないからよく分からない。けど、仲が良いのは見ていて気持ちのいいものだ。
たゆんったゆんっと揺れるダブルおっぱい。終わったら報酬としてあれを揉ませて貰おうかな。ぐへっぐへへへへっ!
っと。冗談は置いておいて。
「じゃあ、セレスティンも他の生き残った騎士達も見つかったことだし、サクリア達は先に戻っていてくれ」
「え、でもクマくんは……」
「俺はちと野暮用だ」
俺はサクリア達の目の前から姿を消して、さらに地下深くにまである回廊を歩いた。
ゲスボスが奴隷売りをしていたのは間違いない。だが、それ以前に奴隷を集める役目をしていたのは、人間ではなく魔豚種と魔精霊種の人知を超えた魔物。
つまり、それを裏で操っていた人間がいる。
やがて、奥の広場へと辿り着き、扉を開く。
広さは東京ドームほどの地下広場。壁に掛けられた蝋燭が炎を灯し、空間を照らす。
魔法陣の描かれた床。その中心には椅子に座る者の姿。
くるりと椅子が回転し、俺の目の前に偉そうに座る者が姿を晒す。
「……なるほどな。なんとなく変な匂いがしてたから、嫌な予感がしてはいたんだがな」
「変な匂いとは失礼ね。クマキチちゃん」
「異臭だよ。俺もクマだからか、鼻には自信があんだよ」
座っていたのは、ヨイチのお店に来ていたマッチョなオカマ。コイツからは最初会ったときから異臭がした。なんというか、多くの人と交わったような匂い。
俺もここに来るまではわからなかった。だが、ゲスボスと対峙したときに、ようやく誰が待ち構えているのか判明したのだ。
ゲスボスからも漂っていた、オカマの匂い。まさか奴のお得意様がオカマだとは思わなかった。
「あーら。それならもっと早く気付いても良かったんじゃなーい?」
「うるせーな。俺様だってお前がこんなところで暇潰ししてるとは思わなかったんだよ」
「そうよねぇ。まぁいいわ! 見つかったからには戦わないとねッ!」
オカマは剣と盾を取り出す。
途轍もなく豪華な剣と盾。それこそ、ゲームなんかで見たら、最強の武器なんじゃないかと思ってしまうほど。
「クマキチちゃんは、あたしの大事なヨイチちゃんの宝物だから、あたしも全力で戦うわね! ヨイチちゃんの最高傑作の、悠久の星剣と魔雷光の盾でね!」
「よ、ヨイチの最高傑作だって!?」
そのとき、俺の視界にノイズがかかった。
そこにいたのは、今のヨイチ。つまり若いヨイチだ。そんなヨイチが、あの工房で石を片手に持ち喜んでいた。
『クマキチっ! 見てよ見てよっ! 流星石だよっ! これって生きてるうちに見れないかもしれないほどの超高級素材なんだよ! あ、あとこっちの魔雷光石もね!』
嬉しそうに話すヨイチ。
俺も声を出そうとしたが、ヨイチには届かない。
『ま、クマキチは動かないから、何もできないけどさ、これが多分、俺の最高傑作になるから、見守っててね!』
そこでノイズが消え、現実に戻った。
なんだったんだ、今の景色は……。
今目の前にいるのは、金髪ドレッドヘアーのガン黒肌のおネェ系のオカマ。
「そういえば名乗ってなかったわね。あたしはマチルダ。クマキチちゃんにバレたくはなかったけど、冥土の土産にしてねっ」
迫る大男ことマチルダは剣を構えた。
俺も慌てて構えて、マチルダを睨みつける。
「冥土の土産? 笑わせんなよ、テメェの名前なんか土産にゃぁ持ってけねーよッ!」
俺は拳を走らせた。だが、その攻撃を防御するマチルダ。
「なるほどね。クマキチちゃんのパンチ。中々硬くて大きいわね」
「テメェに俺のが大きいとか硬いとか言われても、嬉しかぁねーんだよッ!」
「これでも乙女よっ!」
振るう流星の如く煌めいた剣。刃が空を斬る光景はまるで冬の星空のよう。あまりに綺麗で魅入ってしまう恐ろしさがある。
俺は後方に避け、攻撃を躱した。
「ふふ、美しいわよね。いつもそうよ。ヨイチちゃんの作った武器は独自性溢れ、見る者をヨイチちゃんの作った世界へと誘う、いわば芸術のようなものばかり」
「そ、それがなんだよッ!」
「クマキチちゃんも、ヨイチちゃんの作った武器の世界に引き込まれるといいわッ!」
恐ろしいほどの笑顔でマチルダは言い放つ。
確かに、ただの一振りが流星にも見えた。多分、マチルダは剣の達人ではない。だが、それでも美しい一振りを演出できるというのは、きっと、それだけ芸術性が高いということ。
だからといって魅入ってばかりではいられない。
「芸術だか、なんだか知らねーけどよ。俺ぁ生憎そういうのはわかんねーからよ」
「そう。なら見せてあげるっ」
マチルダは剣で円を描く。そこには理科の教科書で見たかのような流星が写しだれている。不思議と俺の身体が足を止めた。
今目の前にいるのはマチルダであって、洞窟の最深部。頭ではわかっていても、身体が動かない。
いや、わかっている。ヨイチの造り出した剣が本物の夜空に描く星のように綺麗なのだ。それゆえに俺の意志は、マチルダを倒そうとしても、圧倒的な芸術を前に俺の身体が動かないのである。
「消え去りなさいッ!」
瞬時に俺の目前にまで迫るマチルダ。刃は真っ直ぐに俺の心臓へとめがけて走る。
それすらも美しく映る。
俺の身体を剣が突き抜けた。
「ぐッ!?」
「バカね。頭ではわかっているつもりでしょうけど、ヨイチちゃんの造る剣は動く芸術。見る者の身体を魅了してしまうのよ」
血は出ていない。だが、俺の身体は痛みが走る。血は通ってないけど、やっぱり感覚はあるみたいだ。
激しい痛みに俺は両膝を着いた。
マチルダは俺の頭を蹴飛ばす。
「ガハァッ!」
「あなたは、やっぱりクマキチちゃんなのね。あなたの親、いや相棒でもあるヨイチちゃんの造り出した物には逆らえない。面白いわ」
「て、テメェ……」
マチルダの言っていることは正論だった。
ヨイチが頑張って造り出したモノだと思うと、どうしても力が入らない。それに、そのヨイチが造りあげた剣と盾は恐ろしいほど美しい。
剣としての性能はないものの、美しさが織り成す剣術は、俺の一撃必殺では壊せないし、壊したくないのだ。
「クマキチちゃん。どうせだから、土産に教えといてあげるわ。ヨイチちゃんは自分のことをただの老人だと思ってるでしょうけどね、彼は偉大なる鍛冶職人よ。それも世界に名を連ねるね」
「だろうな……」
「あなたもそうだろうけど、ヨイチちゃんの剣を見て、何も感じない人間はいない。彼の武器は人間、いえ、あなた達が倒した魔竜種、魔豚種、魔精霊種をも魅了する力があるのよ」
なるほど、それであのドデカイ魔物達を操っていたわけか。どうりで可笑しいって思ってたんだ。奴らは操られているにしては、可笑しかったし、何か裏で取引でもされていないと協力なんてしなさそうな奴だったからな。
「魔物をも魅了するヨイチちゃんの剣。さて、そのヨイチちゃんの最高傑作を前に、クマキチちゃんは私と戦えることができるかしら?」
くるりと剣を回す。
身体が固まり、剣に視線が持っていかれる。
「見れば見るほど、ヨイチちゃんの世界へと誘われる。もう、あなたの心も支配したも同然ね」
ヨイチの剣に俺は魅入り、気がつけばマチルダが剣を上段に構えて迫っていた。
やがて、俺の身体が真っ二つに斬り裂かれる。
「あなたはヨイチちゃんの造り出したモノに、負けたのよ。クマキチちゃん」
「……そ、う……だな……」
獲得称号
・無職のぬいぐるみ:効果不明
・ドS好きのドMぬいぐるみ:効果不明
・神に嫌われたぬいぐるみ:効果不明
・神をオカズに抜く男:効果不明
・絶対不死の男:発動した者に対し、物理・魔法問わず、ダメージを与えることができない。但し、神が少し設定をいじっているので、痛みは感じる。
・竜に挑みし者:効果不明
・竜殺しのぬいぐるみ:効果不明
・老人を気遣うぬいぐるみ:効果不明
・神からの超運を恵まれし者:稀に当たったかと思われる射撃や、魔法を躱す。ギャンブルなどでも、大金を稼ぎやすいなどの、屑には与えてはいけない称号
・一撃必殺を授かりしぬいぐるみ:一撃で相手を殺せる力。但し、あまりにも大きい魔物などは、部位破壊として判定される。
追記
人間や、そのペットでは気絶させる程度に弱まる。
・役立たずのクズ:効果不明
・怒れる玩神:一撃必殺を授かりしぬいぐるみの進化系。五十連撃もの一撃必殺を撃ち尽くせる準備完了のような称号。腕に灯る光が炎のように変わる。
《派生技》
・玩神五十連撃必殺:怒ったクマキチ考案技。一撃必殺を五十発叩きこむ、圧倒的反則技。本人曰く、名前があった方がカッコイイとのこと。
【ヨイチの称号】
・双竜刀発動の青年:獄炎の魔剣と死毒の魔剣を装備した場合にのみ、発動される。二匹の魔竜種の魔力を引き出すことができる。
《派生技》
・獄双竜:魔力を消費することによって、竜巻を起こすことができる。
・神が嫌うぬいぐるみの介護をする青年:神が嫌うぬいぐるみの世話をする青年は、色々な気苦労も絶えないだろうと考慮した上での措置。基本的には、ぬいぐるみに死なれたら困るので、介護・監視をする役目を与える。問題児を監視してくれている為、この青年は基本的にはダメージは受けるが、死にはしない
上級魔物討伐達成
>魔竜・ヘルフレイムドラゴン【討伐報酬】獄炎の魔剣
>魔竜・ポイズンドラゴン【討伐報酬】死毒の魔剣
>森大将【討伐報酬】




